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ベージュブックとブラックフライデー

2025/11/28 07:25

【ポイント】
・景気はほぼ変化なし、雇用は鈍化、投入コストは上昇
・個人消費の二極化がクリスマス商戦でもみられるか

26日に公表された米ベージュブック(地区連銀経済報告)では、個人消費に関して、堅調を維持する富裕層と、低価格志向を強めて支出に慎重になっている中低所得層の二極化が報告されました。本日28日のブラックフライデーから本格化するクリスマス商戦においてもそうした傾向が明確にみられるのか、総合的にみて個人消費はどうなるか。それらは、経済指標の発表が少ないなか、12月9-10日開催のFOMCでの判断材料になりそうです。

26日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は当該FOMCでの0.25%利下げを9割程度の確率で織り込んでいます。

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ベージュブックによれば、景気はほとんど変化なし。個人消費は二極化

ベージュブック
出所:FRB資料より抜粋

経済活動:ほぼ変化なし
経済活動は、「(全12地区のうち)ほとんどの地区で前回報告からあまり変化はなかった。ただ、2地区はわずかに低下、1地区はわずかに成長を報告した」とのこと。前回報告(10月15日)では「3地区がわずかに拡大、5地区が変化なし、4地区がわずかに軟化」でした。

個人消費さらに弱くなりました。ただし、高級品の売上げは底堅さを維持。シャットダウン(政府機能の一部停止)の悪影響を指摘する小売業者もおり、また税額控除が終了したEV(電気自動車)の売上げが減少しました。旅行・観光に大きな変化はない一方で、裁量的支出には慎重になっているとの報告もありました。

製造業の活動はほとんどの地区でいくぶん拡大。ただし、関税やそれに伴う不透明感が引き続き向かい風となったようです。金融以外のサービスの売上高は横ばい~減少、融資に対する需要はマチマチでした。

住宅建設は、数地区で減少したものの、残りの地区では横ばい。住宅販売もマチマチ。数地区ではオフィス不動産の需要が回復基調でした。

先行きの見通しおおむね変化なし。今後数カ月に経済活動が減速するリスクが高まったとの指摘がある一方で、製造業ではいくぶん楽観的な見方がありました。

労働市場:雇用は鈍化傾向
雇用わずかに減少しており、6地区が労働力に対する需要が弱いと指摘しました。レイオフの発表がやや増えたものの、多くの地区では採用凍結や自発的な離職を通じて従業員数を抑制していました。従業員数ではなく労働時間で調整する企業もありました。AIの利用によって、新規採用が抑えられているとの指摘もありました。

ほとんどの地区で採用は容易になりましたが、熟練度が必要なポジションや移民の減少に関連して困難な面は残りました。

賃金の伸びは総じて緩やか。ただ、製造業、建設業、ヘルスケアでは労働力の供給がタイトで賃金上昇率はやや高め。健康保険料の上昇が、引き続き労働コストの上昇につながりました。

物価:投入コストの上昇続く
物価緩やかに上昇。主に関税の影響で製造業や小売業で、投入コストの上昇圧力が幅広くみられました。いくつかの地区では、保険、公共料金、IT関連、ヘルスケアのコスト上昇が指摘されました。

投入コストの消費者への価格転嫁は、競争圧力や消費者の価格意識、需要動向などによってマチマチ。関税による利ザヤの圧縮や財務悪化の報告もありました。

企業は総じてコスト上昇圧力が続くと予想していましたが、近々値上げする計画があるかどうかはマチマチでした。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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