マネースクエア マーケット情報

米ベージュブックとシャットダウン 米景気・雇用は弱め!?

2025/10/16 08:40

【ポイント】
・ベージュブックによれば、景気や労働市場は軟調
・物価は、関税など投入コストの上昇を反映か
・10月28-29日FOMCでの利下げを妨げるものではなさそう

米ベージュブック(地区連銀経済報告は、総じて景気や雇用の軟調を報告。関税の影響などによるインフレ圧力の高まりも報告されたものの、10月28-29日のFOMCでの利下げを思いとどまらせるような内容ではなかったようです。15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)は同FOMCでの0.25%利下げを100%織り込んでいます。

パウエルFRB議長は14日の講演で、シャットダウン(政府機能の一部停止)の影響で政府の経済指標発表がなくても、民間データに加えて地区連銀が全米に張り巡らせたネットワークから貴重な情報が入手できるとして、ベージュブックに言及していました。

*******
ベージュブックによれば、景気・雇用は弱め、物価にはコスト上昇圧力!?

ベージュブック
出所:FRB資料より抜粋

経済活動:
経済活動は、「12地区のうち8地区で7月報告からほとんど、あるいは全く変化なく、4地区でわずかに拡大」とした前回報告(9月3日)からほとんど変化なしとのことで、「3地区がわずかに拡大、5地区が変化なし、4地区がわずかに軟化」でした。

個人消費、とりわけ小売売上高はやや弱まりました。ただ、自動車販売はEVの税制優遇が9月末で期限切れとなる前の駆け込みで堅調でした。高所得層の消費や旅行が堅調な一方で、中低所得層は価格上昇や経済の不透明性の制約を受けたようでした。また、外国からの旅行者による需要は一段と低迷しました。

製造業活動は地区によってマチマチ。関税引き上げや需要減退への懸念が多く報告されました(NY連銀製造業景況指数については後述)。

経済の見通しについては地区ごとに格差がありました。今後半年~1年で需要の増加が見込まれるとして数地区では見通しが改善。ただ、多くの地区では依然として強い不透明感が景気を下押しすると予想されました。1地区では、シャットダウンが長期化すれば景気が下振れすると指摘されました。

労働市場:
雇用の水準は概ね安定しており、地区や業種の差はなく労働力の需要はほとんどありませんした。ほとんどの地区で、解雇や自発的離職を通じて従業員を減らす企業が増えました。需要の弱さ、不透明感の強まり、AIの活用などが理由でした。数地区では、移民規制によって、接客・農業・建設などの労働力の供給が抑制されました。賃金は総じて緩やかに上昇。健康保険料の上昇によって労働コストが上昇していました。

物価:
物価はさらに上昇。輸入価格や保険料の上昇により投入コストの上昇率が高まりました。多くの地区で関税関連の投入コスト増が報告されましたが、最終価格への転嫁の度合いはマチマチでした。シェア維持のために値上げを控える企業はあったものの、輸入コストの増加分を100%顧客に転嫁している企業もありました。需要の弱さにより鉄鋼や木材の価格が下落しているとの報告もありました。

*******
10月のNY連銀製造業景況指数は10.7と前月のマイナス8.7から改善しました(※)。同指数は今年春ごろから改善基調にあるようにみえます。ただ、変動の大きい指標であることに注意が必要でしょう。なお、ベージュブックによれば、NY地区の製造業活動は「夏場に上向いたあと、ほとんど変化なし」と報告されました。

※0~100の値をとるISMなどと異なり、NY連銀指数(フィラ連銀指数も)はマイナス100~プラス100の値をとり、ゼロが製造業活動の拡大/縮小の境目となります。

NY連銀製造業景況指数
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ