FOMC議事録:大幅利下げ論への共感はナシ⁉
2025/10/09 08:58
【ポイント】
・利下げ決定に関して、数人は金利据え置きでも賛同できると考えた
・ミラン理事が大幅利下げを主張したが、共感は表明されなかった模様
・ほとんどが年内の追加利下げが適切だと考えたが、慎重な意見もあった
・雇用の軟化には労働力供給の制約もあり、他の指標ではさほど悪化していない
9月16-17日開催の米FOMCでは、今年初めて0.25%利下げが決定されました。直前に指名承認されたミラン理事が0.50%利下げを主張して反対票を投じて注目を集めました。「ドット・プロット(中央値)」は、25年中に0.25%×あと2回、26年と27年にさらに0.25%×1回の利下げを予想していました。
■9/18付け「米FOMCは今年初の利下げ、積極的な利下げには慎重!?」
8日に公表された当該FOMCの議事録では、雇用をはじめ景気が減速していること、雇用の下振れリスクと物価の上振れリスクがどちらも高まっていること、追加利下げの有無やペースは今後の状況次第であること、ミラン理事の大幅利下げの主張に共感する参加者はいなかったとみられることなどが示されました。
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議事録の注目点は以下の通り(議事録に沿わずに筆者が重要と考える順番に変更しました)。
0.25%利下げの決定について
・利下げの決定は、雇用の下方リスクが増大したと判断したから。
・ただし、数人の参加者は、今回は政策金利を据え置くことにメリットがある、据え置きが決定されればそれに賛同すると述べた。
・1人の参加者は政策金利を中立水準に接近させることには賛同したものの、今回の会合で0.50%利下げすべきと考えた(ミラン理事のこと。他の参加者がそれに対してどう考えたかの記述はなし)。
金融政策の先行きについて
・今回利下げをしたことで、今後の展開に対してタイムリーに反応する良いポジションにあるとほぼ全ての参加者が考えた(ミラン理事が例外?)。
・現在の金融政策の景気抑制度合いや今後の金利の軌道について様々な見解が出されたが、ほとんどの参加者は年内に追加利下げを行うことが適切になりそうだと判断した。
・金融市場の状況は金融政策がさほど抑制的ではないと示唆しているので、将来の政策変更について慎重にアプローチする必要があるとの意見もあった。
リスク管理に関する考察
・参加者は総じて、物価の上振れリスクは高いままであり、雇用の下振れリスクが高まっていると判断した。
物価について
・2人の参加者が関税の影響を除けばインフレ率は目標に近いと指摘。しかし、他の数人は2%の物価目標に向けた前進は止まっていると強調した。また、過半数の参加者は物価見通しに上振れのリスクがあると強調した。
・ほとんどの参加者は、関税の影響は依然として不透明ながら26年末までに顕在化すると考えた。
雇用・景気について
・雇用増加ペースの鈍化は、一部には労働力の需要と供給の鈍化が影響していると考えた。供給の鈍化については、移民の制限や労働参加率の低下が背景だとした。
・そのため、雇用者数の変化だけでなく、失業率、求人倍率、賃金上昇率、離職率、解雇率などの指標による評価に助けになると考えた。
・そのうえで、それらの労働指標に基づけば労働市場の状況は急激に悪化してはいないと判断された。
・ただし、NFP(非農業部門雇用者数)の年次改定は従来のデータが示した以上に労働市場の軟化が長期化しているとの指摘はあった。
・労働市場の先行きについて、高齢者の引退や移民の減少によって、失業率を安定的に維持するために必要な月々の雇用増加ペースは低下していると指摘した。
・一方で、採用率と解雇率の低下、雇用増加が一部のセクターに集中していること、景気の変化に影響を受けやすい黒人や若年層の失業率が上昇していることなどの懸念材料が指摘された。
・景気については、高所得層と低所得層の格差が広がっているとの指摘があった。一方で、(株高・市場金利低下などの)金融情勢は経済活動をサポートしているとの指摘もあった。
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