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英国でトリプル安⁉ 債券自警団か

2025/09/03 08:04

【ポイント】
・財政規律を巡って、2日に英国の株・債券・通貨がトリプル安
・予算に絡んで内閣崩壊の可能性があるフランスの長期金利も大幅上昇
・米国や日本でも債券自警団が出動する(=金利上昇)可能性あり

英国債が2日の取引開始から売り込まれ(金利が上昇)、超長期金利(30年物国債利回り)は一時98年以来となる5.72%をつけました。国債の取引開始に合わせて英ポンドが急落、FTSE100株価指数も下落しました。

英国債・株式・通貨がミニトリプル安となった背景は、英国の財政政策に対する不信感の高まりでした。英国では、スターマー政権が来年度の予算を準備しています。財政ルール順守のために緊縮的な予算が必要ですが、野党から強い反発が出ているためです。

さながら、22年のトラス・ショック(※)を想起させる展開となりました。財政悪化に対して債券市場が警鐘を鳴らすという「債券自警団」が出動したとみることもできます。

22年9月にジョンソン英首相の後を継いだトラス首相が財源が不透明な大規模減税を打ち出したことで、急激なトリプル安を招いた事例。トラス首相は在任わずか44日で辞任に追い込まれました(英史上最短の政権)。

この1カ月間の主要国長期金利(10年物国債利回り)の上昇幅は・・・

<英国:27bp 米国:5bp 日本:6bp ドイツ:11bp フランス:24bp 豪州4bp>
                  ※bp(ベーシスポイント)=1/100%

長期金利の上昇幅は英国が最大ですが、予算に絡んで9月8日に内閣信任投票が実施されるフランスの上昇幅も大きいです。また、政治の不安定から財政赤字拡大が懸念される日本の長期金利は年初来の上昇幅が最大です(利上げ観測も大きいですが・・)。

主要国長期金利

米国でも、10月の26年度開始に向けて議会で予算交渉が本格化します。25年度の予算調整法案で実現したトランプ減税に見合った歳出削減など財政緊縮ができるのか。また、トランプ関税が違法とされた場合に代替財源はあるのかなど、状況によっては債券自警団が出動する(長期金利が一段と上昇する)可能性はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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