ジャクソンホール会議、ECB・BOE・BOJ編
2025/08/26 08:10
【ポイント】
・ベイリー総裁、ラガルド総裁は利下げに慎重な姿勢⁉
・ベイリー総裁は、労働生産性と労働参加率の上昇が必要と発言
・ラガルド総裁は欧州経済に楽観的、米関税の影響は限定的と指摘
・植田総裁は、女性と外国人の労働参加が少子高齢化への対策と指摘
21-23日に開催されたジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀の年次経済シンポジウム)で、パウエルFRB議長は9月FOMCでの利下げを示唆しました。
■8/23付け「パウエル議長のジャクソンホール講演、9月利下げを示唆」をご覧ください。
ジャクソンホール会議には世界中の中央銀行関係者が参加。23日には、ベイリーBOE(英中銀)総裁、ラガルドECB(欧州中銀)総裁、植田BOJ(日銀)総裁がパネル討論を行いました。テーマは「移行期の労働市場が(金融)政策に及ぼす影響」。
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以下にそれぞれの発言をまとめました。目先の金融政策への示唆は、BOEとECBは利下げに慎重、BOJはニュートラルというものでしょう。
ベイリー総裁:労働参加率の引き上げが経済成長に不可欠
英国経済は厳しい課題に直面している。労働市場の問題はもはや失業ではなく、労働参加率の低下である。そして、潜在成長率(※)を押し上げるためには、生産性の向上と労働参加率の上昇が不可欠だとベイリー総裁は指摘しました。
※潜在成長率とは、景気が冷え込みもせず、過熱もせずに成長できる巡航速度のこと。潜在成長率は主に、労働力人口の伸びと労働生産性によって決定されます。BOEは英国の潜在成長率を1%ちょっとと推計しているようです。
潜在成長率が低いと、比較的弱い経済成長でも労働やその他の需給のひっ迫によってインフレになりやすくなります。それだけ中央銀行が利下げに慎重になるという意味合いもあります。
ラガルド総裁:欧州経済は堅牢で回復途上、米関税の影響は軽微
ラガルド総裁は、欧州の労働市場は数十年に一度のインフレ・ショックとアグレッシブな利上げに対して、世界経済にも助けられて驚くほど耐えてみせたと発言。また、インフレは急速に鈍化し、しかも雇用を犠牲にすることもほとんどなかったと指摘しました。
労働市場が堅調だった背景として、世界のサプライチェーン障害が解消されつつあったこと、エネルギー価格の下落、景気刺激的な財政政策、企業が雇用削減ではなく労働時間短縮で対応したこと、労働力の供給が拡大したことなどがあげられました。
ラガルド総裁はメディア・インタビューに答えて、「経済成長は緩やかながら底堅く、潜在成長率に回帰しつつある」とし、米国の関税は(交渉で引き下げられたこともあり)ユーロ圏のGDPに小さな影響しか与えないだろうと述べました。
ラガルド総裁はまた、政治が金融政策に関与すれば、経済が機能不全に陥るリスクがあると警告し、中央銀行の独立性が非常に重要であると強調しました。
これとは別に、ジャクソンホール会議に参加したECBメンバーのレーン・フィンランド中銀総裁やナーゲル・ドイツ連銀総裁は、追加利下げに慎重な姿勢を示しました。レーン総裁は、インフレが落ち着き、経済が堅調に推移しているため、「保険的な利下げは不要」と指摘。ナーゲル総裁は、既に大幅な利下げを行ったため、追加利下げへの「ハードルは高い」と述べました。レーン総裁は中立、ナーゲル総裁はタカ派と目されています。
植田日銀総裁:女性や外国人の労働参加が少子高齢化への対策
植田総裁は、労働力の不足がインフレ圧力の主要な要因だと指摘。女性のフルタイム雇用の増加や外国人労働者の活用が少子高齢化による労働市場の縮小への対策だと述べました。
植田総裁は、男性労働者のうちのフルタイムが8割であるのに対して、女性労働者が5割に過ぎないこと、さらに外国人は、労働者全体の3%に過ぎないのに、23年から24年における労働力人口の増加の5割を説明していると指摘しました。
・ベイリー総裁、ラガルド総裁は利下げに慎重な姿勢⁉
・ベイリー総裁は、労働生産性と労働参加率の上昇が必要と発言
・ラガルド総裁は欧州経済に楽観的、米関税の影響は限定的と指摘
・植田総裁は、女性と外国人の労働参加が少子高齢化への対策と指摘
21-23日に開催されたジャクソンホール会議(カンザスシティ連銀の年次経済シンポジウム)で、パウエルFRB議長は9月FOMCでの利下げを示唆しました。
■8/23付け「パウエル議長のジャクソンホール講演、9月利下げを示唆」をご覧ください。
ジャクソンホール会議には世界中の中央銀行関係者が参加。23日には、ベイリーBOE(英中銀)総裁、ラガルドECB(欧州中銀)総裁、植田BOJ(日銀)総裁がパネル討論を行いました。テーマは「移行期の労働市場が(金融)政策に及ぼす影響」。
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以下にそれぞれの発言をまとめました。目先の金融政策への示唆は、BOEとECBは利下げに慎重、BOJはニュートラルというものでしょう。
ベイリー総裁:労働参加率の引き上げが経済成長に不可欠
英国経済は厳しい課題に直面している。労働市場の問題はもはや失業ではなく、労働参加率の低下である。そして、潜在成長率(※)を押し上げるためには、生産性の向上と労働参加率の上昇が不可欠だとベイリー総裁は指摘しました。
※潜在成長率とは、景気が冷え込みもせず、過熱もせずに成長できる巡航速度のこと。潜在成長率は主に、労働力人口の伸びと労働生産性によって決定されます。BOEは英国の潜在成長率を1%ちょっとと推計しているようです。
潜在成長率が低いと、比較的弱い経済成長でも労働やその他の需給のひっ迫によってインフレになりやすくなります。それだけ中央銀行が利下げに慎重になるという意味合いもあります。
ラガルド総裁:欧州経済は堅牢で回復途上、米関税の影響は軽微
ラガルド総裁は、欧州の労働市場は数十年に一度のインフレ・ショックとアグレッシブな利上げに対して、世界経済にも助けられて驚くほど耐えてみせたと発言。また、インフレは急速に鈍化し、しかも雇用を犠牲にすることもほとんどなかったと指摘しました。
労働市場が堅調だった背景として、世界のサプライチェーン障害が解消されつつあったこと、エネルギー価格の下落、景気刺激的な財政政策、企業が雇用削減ではなく労働時間短縮で対応したこと、労働力の供給が拡大したことなどがあげられました。
ラガルド総裁はメディア・インタビューに答えて、「経済成長は緩やかながら底堅く、潜在成長率に回帰しつつある」とし、米国の関税は(交渉で引き下げられたこともあり)ユーロ圏のGDPに小さな影響しか与えないだろうと述べました。
ラガルド総裁はまた、政治が金融政策に関与すれば、経済が機能不全に陥るリスクがあると警告し、中央銀行の独立性が非常に重要であると強調しました。
これとは別に、ジャクソンホール会議に参加したECBメンバーのレーン・フィンランド中銀総裁やナーゲル・ドイツ連銀総裁は、追加利下げに慎重な姿勢を示しました。レーン総裁は、インフレが落ち着き、経済が堅調に推移しているため、「保険的な利下げは不要」と指摘。ナーゲル総裁は、既に大幅な利下げを行ったため、追加利下げへの「ハードルは高い」と述べました。レーン総裁は中立、ナーゲル総裁はタカ派と目されています。
植田日銀総裁:女性や外国人の労働参加が少子高齢化への対策
植田総裁は、労働力の不足がインフレ圧力の主要な要因だと指摘。女性のフルタイム雇用の増加や外国人労働者の活用が少子高齢化による労働市場の縮小への対策だと述べました。
植田総裁は、男性労働者のうちのフルタイムが8割であるのに対して、女性労働者が5割に過ぎないこと、さらに外国人は、労働者全体の3%に過ぎないのに、23年から24年における労働力人口の増加の5割を説明していると指摘しました。
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