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【株価指数】米景気および物価の現状をチェック!?

2025/08/11 07:49

【ポイント】
・先週の主要株価指数は比較的堅調。関税懸念の後退や米利下げ観測が背景
・今週は米経済指標によって景気や物価の現状をチェック
・米露首脳会談や米中貿易交渉も相場材料となりそう?

(先週のレビュー)

主要株価指数は比較的堅調でした。前週末の弱い米雇用統計を受けていったん大きく下げましたが、そこから戻り基調でした。日経平均は8日に、7月24日に一時つけた4万2,000円台にワンタッチ。NYダウは7月23日の高値に届かないものの、4万4,000ドル台を示現。S&P500は7月28日の高値に接近。ナスダック100は8日に高値を更新しました。FTSE100は週前半に反発したものの、その後軟化しました。

日経平均は、雇用統計後の米株安の流れを引き継いで週初に一時4万円割れとなりました。しかし、その後は、米株の反発、米雇用統計直後の円高が一服したこと、日米関税合意の内容が確認されたことで関税に対する過度な懸念が後退したことなどから、日経平均は上昇。とりわけ、8日は761円の大幅高となりました。

米株は、米雇用統計を受けて大幅安となった前週末から反発。FRBの早期利下げ観測が再浮上し、堅調な企業業績も株価の押し上げ要因となりました。アップルは米国内生産向けに1,000億ドルの追加投資を発表。「マグニフィセント7」などハイテク株が堅調に推移し、ナスダック100は7月31日につけた最高値を更新して週を終えました。

FTSE100は、週後半に下落。BOE(英中銀)は7日に0.25%の利下げを決定したものの、票決が僅差だったことから追加利下げ観測が後退して、FTSE100の重石になりました。ウクライナとロシアの停戦への期待が浮上したものの、(他の欧州株とは異なり)あまりFTSEのプラス材料にはならなかったようです。


(今週の相場材料)

15日に、トランプ大統領プーチン大統領アラスカで会談する予定です。トランプ大統領はロシア・ウクライナ停戦の仲介を行う意向。仮に停戦に向けた進展があれば、市場におけるリスクオフが後退して、株価にとってもプラスになる可能性はあります。ただし、ウクライナのゼレンスキー大統領は自国を含まない交渉に否定的で、ウクライナの領土割譲には断固拒否の姿勢を堅持しています。米露首脳会談でポジティブな材料が出るのはかなり難しいかもしれません。

12日に期限が到来する米中貿易交渉については、両国が90日間の延長で合意したと報道されています。少なくともトランプ大統領が承認しなければ、正式決定とならないようですが、期限延長の可能性は高そうです。

7月の米雇用統計が弱かったことで、米FRBの利下げ観測が高まっています。今週の経済指標は、雇用統計の悪化がやや特殊事例なのか、それとも米労働市場、ひいては米経済が急速に悪化しているのかを判断する材料となりそうです。

前者(雇用統計が特殊)であれば、利下げ観測は株価にとってプラスとなり、株式市場の比較的良好な地合いもあって、米株は上値を追う展開となりそうです。しかし、後者(米景気が急速に悪化)であれば、利下げ観測があるとしても、米株は下押しするかもしれません。

米労働市場や景気の強弱をみるうえで、14日の新規失業保険申請件数や15日の小売売上高NY連銀製造業景気指数などが参考になりそうです。

もっとも、FRBは関税による物価押し上げも警戒しています。12日のCPI(消費者物価指数)が強めに出るようだと、利下げ観測そのものが後退するかもしれません。

米アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、7日時点で7-9月期GDPは前期比年率2.5%と予測されています。前期(3.0%)からやや減速するとの予想ですが、前期は輸入の減少(純輸出の改善)の寄与が大きかったことを考えると、悪くないでしょう。もちろん、GDPNowの予測値は今後のデータ次第で大きく変わる可能性があります。

なお、OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、8日時点で9月16-17日のFOMCでの0.25%利下げを市場は9割近く織り込んでいます。また、25年末までに0.25%×2回の利下げが完全に織り込まれており、26年6月までに0.25%×計4回の利下げがほぼ織り込まれています。今後の経済データを受けて予測がどう変化するでしょうか。

日本では長期金利(10年物国債利回り)に注目です。先週のTOPIX初の3,000超など日本株堅調は、トランプ関税に対する過度な懸念の後退が大きかったようですが、米株の堅調の他にも長期金利低下の影響もあったようです。

8日に公表された日銀会合の「主な意見」は適時の利上げを重要とするなど、「タカ派的」と判断できます。お盆休みで市場参加者が減少するなか、日銀の利上げ観測や政局絡みで長期金利が上昇すれば、日経平均の重石となる可能性があります。

英国では労働統計GDPが景気の弱さを示唆する可能性があるようです。先週のBOE(英中銀)の会合結果を受けて後退した利下げ観測が高まれば、先週後半に軟調だったFTSE100にとってプラスになるかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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