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【株価指数】米雇用統計はゲームチェンジャーか

2025/08/04 07:30

【ポイント】
・米雇用統計で株価や金融政策を取り巻く状況は一変!?
・トランプ大統領の利下げ要求にFRBは抵抗し続けるか
・米相互関税の影響、英中銀の金融政策、日本の企業決算や政局にも注目

(先週のレビュー)

前週まで堅調だった主要株価指数は総じて下落しました。もともと週中の日米金融政策会合、週末の米雇用統計や相互関税発動などを控えて様子見ムードが強かったようです。そして、1日の米雇用統計が労働市場の急激な悪化を示唆したため、米株は大きく下落。S&P500ナスダック100も、31日に一時最高値を更新したものの、雇用統計後に大幅に下落しました。

30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)は政策金利の据え置きを決定。パウエル議長は記者会見でインフレ警戒に重きを置いた発言をしました。また、トランプ大統領の利下げ要求に抵抗する姿勢をみせたこともあって、利下げ観測は後退しました。しかし、米雇用統計で状況は一変。次回9月のFOMCでは利下げがほぼ確実視されています。

31日の日銀金融政策決定会合も据え置き。展望レポートでは、物価見通しが上方修正され、米関税率の決定による不確実性の低下も指摘されました。それでも植田総裁の記者会見が市場の予想ほどタカ派的(利上げに積極的)でなかったことで、直後から円安が進行しました(米雇用統計を受けて米ドル安円高に)。

1日に予定されていた米相互関税の発動は、多くが7日へと延期されました。ただ、一部は予定通り1日に発動、一部は90日間延期などマチマチ。関税交渉が継続している国もあり、不透明感は拭えませんでした。


(今週の相場材料)

トランプ大統領はFRB(連邦準備制度理事会)に対する利下げ要求を一段と強めるでしょう。クグラー理事が辞任したことで、後任の指名権を持つトランプ大統領はFRBに対する影響力を強めそうです。トランプ大統領はまた、(根拠なしに)雇用統計を政治利用しているとして労働統計局長の解任に動きました。中央銀行や政府統計の公平性・中立性が投資家に疑問視されるならば、米ドルや米ドル建て資産(株式含む)にいずれネガティブな影響が出そうです。

今週末までには多くの相互関税が実際に発動されることになりそうです。継続中の交渉もあるようで、貿易相手国の報復措置の有無も含めて不確実性は残ります。今後、どのような展開があり、関税が米国やその他の国の経済にどう影響するかを見極める必要がありそうです。

7日にBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)が開催されます。BOEは昨年8月から3カ月(2会合)に1回のペースで0.25%の利下げを行っており、今回は利下げのタイミングです。市場は利下げをほぼ確実視しています。注目は、今後の金融政策について現在の利下げペースを続けるとの示唆があるかどうか。

8日に自民党の両院議員総会が開催されます。参院選での与党惨敗に関して、石破首相の責任を問う声が強まるのか。石破首相の続投の意思に変化は生まれるか。不透明な政治情勢は株価にとってプラスにはならないでしょう。

日本企業の決算発表にも注目です。東証によれば、今週1,000社以上の決算発表があり、ピークの8日には500社を超えるとのこと。米国の関税率が決定した後だけにどのような業績予想が出されるでしょうか。

※8月4日~8日は、ファンダメ・ポイントの配信を不定期とさせていただきます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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