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関税合意、ユーロ安の理由は?

2025/07/29 07:20

【ポイント】
・ユーロや欧州株は米国とEUの関税合意を嫌気⁉
・フランスなどは合意に対して拒絶反応も
・トランプ関税の全容は固まっておらず、注視する必要あり

米国とEU(欧州連合)が27日に関税合意に達しました。ユーロ/米ドルは週明けアジア時間に上昇して始まったものの、すぐに反落して、下げ足を早めました。ユーロは全面安の展開でした。欧州株(ユーロ・ストックス50指数)も高く始まったものの、ジリジリと値をさげて前週末比マイナスで引けました。

ユーロや欧州株の反応は明らかに関税合意を嫌気したものでしょう。23日の日米関税合意を受けた米ドル/円(円高)や日経平均の大幅高とは異なる反応です。もっとも、日経平均も24日の後場から下げに転じているし、米ドル/円もほぼ同じタイミングで円安方向に振れています。当初は「最悪は避けられた」、「不透明感が晴れた」との安心感があったものの、徐々に相互関税15%や品目別関税の重みが実感され始めたのかもしれません。

EUの対応
ドイツのメルツ首相やイタリアのメローニ首相が関税合意に対して一定の評価を下す一方で、産業界などからは不公平との不満が出ています。EUは15%の相互関税(米国からの輸入に対してゼロ%)、6,000億ドルの対米投資、7,500億ドルの米エネルギー製品の購入、相当額の米軍事機器購入などが含まれている模様です。また、EUがこだわった医薬品や半導体、金属の関税などについては不透明な部分もあり、両者の解釈が異なっている可能性もあるようです。

とりわけ、フランスは合意に対して拒絶反応が強くACI(反威圧手段)を発動して輸入制限や規制強化すべきとの意見もあるようです。オランダの貿易相もEU委員会が米国と交渉を継続すべきと主張しています。

今後の展開
米国と交渉を継続中の国もあるとみられ、合意がなければ、8月1日には相互関税の上乗せ分が発動される予定です(延期の可能性もありますが)。中国は8月12日の期限を90日延長すべく交渉中とされます。合意があった場合でも詳細を詰める過程で変更が加えられる可能性もあります。

その他にも、米国は、医薬品、半導体、木材、航空機などの品目別関税を検討中であり、それらは順次発表されそうです。「トランプ関税」の全容が固まったというには時期尚早でしょう。

そして、「トランプ関税」の影響はまだまだこれから本格的に表れる可能性があります。それらは各国の経済政策や金融政策にも影響を与えるものとみられ、注視する必要があります。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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