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パウエルFRB議長の交代に関する考察

2025/07/18 07:38

【ポイント】
・パウエル議長の後任選びが正式にスタート
・トランプ大統領の意に沿う議長はトリプル安要因⁉
・パウエル議長が任期を全うするとしても、後任候補の言動には影響力
・FRBは組織として独立性を守れるか

パウエルFRB議長の任期は26年5月15日までです。理事としての任期は28年1月31日まで(議長辞任に際して理事も辞任するのが通例)。

FRB本部の改修費用膨張に関してパウエル議長は共和党議員から非難されています。それが解任の「正当な理由」になる可能性はゼロではないかもしれませんが、トランプ大統領はパウエル議長を解任する計画は(今のところ?)ないと述べました。

後任選びが本格スタート
もっとも、ベッセント財務長官によれば、議長後任選びのプロセスは正式に始まっているとのこと。後任候補として、ハセットNEC(国家経済会議)委員長ウォーシュ元FRB理事ウォラー理事ベッセント財務長官らの名前がメディアで取り沙汰されており、近く発表されるかもしれません。

新議長はトリプル安要因⁉
問題は、誰が後任になってもトランプ大統領の意向を汲んで大幅な利下げを実現しようとするだろうということ。大幅な利下げは景気にプラスという点で株高要因となりえます。また、インフレ懸念であっても市場金利、とりわけ長期金利が上昇するなら、通常の関係なら米ドルにプラスになりそうです。しかし、それ以上に、強引な利下げでは、中央銀行の独立性が損なわれるとして、米ドルおよび米ドル建て資産の下落、すなわちトリプル安をもたらす可能性が高いのではないでしょうか。また、市場金利が上昇するなら、利下げにより国債費(利払い費)の圧縮を望むトランプ大統領の目論見にも水をさすことになりかねません。

後任候補の言動には影響力も
パウエル議長が解任されて新議長が誕生した段階で、市場は大きく動揺するでしょう。また、パウエル議長が任期を全うするとしても、選ばれた後任候補の発言次第ではFOMCの議論に影響を与えたり、市場を揺さぶったりする可能性はあります。

17日時点のOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場は26年6月(=新議長就任直後⁉)の政策金利を3.44%と予想しています。これは現在の4.25-4.50%より1%程度低い水準です。

一方、トランプ大統領の利下げ要求はエスカレートしています。6月上旬には1%の利下げでしたが、最近では現在政策金利ゼロ%のSNB(スイス中銀)を引き合いに出して1%以下に下げろ(=3%超の利下げ)と要求しています。

FRBは組織として独立性を守れるか
1つ注意すべきは、必ずしも議長の意向がFOMCの結果に反映されるとは限らないということです。FOMCには議長・副議長を含む本部理事7人と12人の地区連銀総裁(+スタッフ)が参加します。政策決定は、本部理事7人とNY連銀総裁、輪番での4地区連銀総裁の計12人の投票によります。

議長はFOMCの議論を主導して政策提案を行います。もっとも、可決される見込みのない提案は行わないでしょうから、多くの賛同を得られるように修正するはずです。過去の経験に基づけば、反対者が出るとしても1人~2人、多くても3人~4人です。

したがって、新議長がどこまでトランプ大統領の意向に従うかという点だけではなく、FRB(FOMC)が組織としてどれだけ独立性を維持できるかも重要になりそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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