米ドル/円の見通し~グローバルViewへのご質問
2025/07/15 08:40
【ポイント】
・構造的円安が続く一方で、循環的には円高方向か
・円高のピークは29年春で、それでも米ドル/円は135円程度
・ワイルドカードはトランプ政権の減税や関税の影響
11日のM2TV(YouTube)グローバルView「為替相場は視界不良⁉ 米ドル/円と金利差」に以下のコメントをいただきました。
米ドル/円の見通しを聞きたかったのですが、解説がないということは分析が難しいということでしょうか。
「その通りです」と言ってしまえば身も蓋もありませんね。為替相場の予測が難しいのはいつものことですが、以下に考察してみました。
*******
まず、円は構造的な下落トレンドが続いているとの判断です。BIS(国際決済銀行)が算出する円の実質実効レートは95年4月をピークに下落基調にあり、平均すれば年率2.4%で減価しています。実際の円の実質実効レートはトレンドラインから上下15%程度を中心に循環変動しています。BISの最新データが利用可能な今年5月時点で円の実質実効レートはトレンドラインを2.1%下回っています。


仮に円の実質実効レートを完全に米ドル/円に置き換えることができるとすれば・・・
今年5月の米ドル/円は平均144.80円(出所Bloomberg、以下同じ)。これが理論値(トレンドライン)を2.1%下回っているので、理論値は141.82円。理論値は年率2.4%で減価するので、25年12月の理論値は143.80円。
循環的には24年6月に最も円安となっており、今後は徐々に円高方向に向かう局面となるはずです。時間はかかっているものの、いずれ米FRBが利下げし、日銀は利上げするとの見方と整合的です。したがって、25年末までに理論値を上回る円高となり、米ドル/円の140円割れも十分にあり得るでしょう。
1970年から25年まで55年間で6回の循環が観測されるので、1循環平均9年とすれば、円高のピークは前回20年5月から9年後の29年5月と考えることができます。29年5月の理論値は155.93円。15%円高に振れるならば135.60円という結果が得られます。トランプ大統領の在任中(29年1月19日まで)はなかなか大幅な円安にはならないということかもしれません。
もちろん、構造的円安が続くとしても一直線の円安ではないでしょうし、循環にもそれぞれの特徴はあるでしょうから、ここでの分析は大きな流れとして捉えていただければ幸いです。
グローバルViewでも述べたように、現在の為替相場は通常以上に視界不良です。ワイルドカード(不確定要素)はやはりトランプ政権の政策でしょう。主に、大規模減税であり、最終形がまだ見えない関税(相互関税+品目別関税)です。減税法案の成立に対して債券市場はあまり反応しませんでしたが、すでに織り込み済みなのか、それとも何かのきっかけで米ドルに対する信認が一段と低下するのか。また、高率の関税は対象国の経済に重石となる一方、米国にはスタグフレーション的圧力を加えるはずですが、それが本格的に現れるまでまだ時間がかかるのかもしれません。
・構造的円安が続く一方で、循環的には円高方向か
・円高のピークは29年春で、それでも米ドル/円は135円程度
・ワイルドカードはトランプ政権の減税や関税の影響
11日のM2TV(YouTube)グローバルView「為替相場は視界不良⁉ 米ドル/円と金利差」に以下のコメントをいただきました。
米ドル/円の見通しを聞きたかったのですが、解説がないということは分析が難しいということでしょうか。
「その通りです」と言ってしまえば身も蓋もありませんね。為替相場の予測が難しいのはいつものことですが、以下に考察してみました。
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まず、円は構造的な下落トレンドが続いているとの判断です。BIS(国際決済銀行)が算出する円の実質実効レートは95年4月をピークに下落基調にあり、平均すれば年率2.4%で減価しています。実際の円の実質実効レートはトレンドラインから上下15%程度を中心に循環変動しています。BISの最新データが利用可能な今年5月時点で円の実質実効レートはトレンドラインを2.1%下回っています。


仮に円の実質実効レートを完全に米ドル/円に置き換えることができるとすれば・・・
今年5月の米ドル/円は平均144.80円(出所Bloomberg、以下同じ)。これが理論値(トレンドライン)を2.1%下回っているので、理論値は141.82円。理論値は年率2.4%で減価するので、25年12月の理論値は143.80円。
循環的には24年6月に最も円安となっており、今後は徐々に円高方向に向かう局面となるはずです。時間はかかっているものの、いずれ米FRBが利下げし、日銀は利上げするとの見方と整合的です。したがって、25年末までに理論値を上回る円高となり、米ドル/円の140円割れも十分にあり得るでしょう。
1970年から25年まで55年間で6回の循環が観測されるので、1循環平均9年とすれば、円高のピークは前回20年5月から9年後の29年5月と考えることができます。29年5月の理論値は155.93円。15%円高に振れるならば135.60円という結果が得られます。トランプ大統領の在任中(29年1月19日まで)はなかなか大幅な円安にはならないということかもしれません。
もちろん、構造的円安が続くとしても一直線の円安ではないでしょうし、循環にもそれぞれの特徴はあるでしょうから、ここでの分析は大きな流れとして捉えていただければ幸いです。
グローバルViewでも述べたように、現在の為替相場は通常以上に視界不良です。ワイルドカード(不確定要素)はやはりトランプ政権の政策でしょう。主に、大規模減税であり、最終形がまだ見えない関税(相互関税+品目別関税)です。減税法案の成立に対して債券市場はあまり反応しませんでしたが、すでに織り込み済みなのか、それとも何かのきっかけで米ドルに対する信認が一段と低下するのか。また、高率の関税は対象国の経済に重石となる一方、米国にはスタグフレーション的圧力を加えるはずですが、それが本格的に現れるまでまだ時間がかかるのかもしれません。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
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