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米雇用統計:ヘッドラインは堅調で、利下げ観測はやや後退⁉

2025/07/04 07:38

【ポイント】
・NFPは前月比14.7万人増、失業率は4.1%に低下
・NFP民間は前月比7.4万人増とやや弱め。政府部門が7.3万人増
・市場が織り込む7月利下げの確率は5%と前日の24%から低下
・それでもトランプ政権からの利下げ要求は続きそう

米国の6月雇用統計ではNFP(非農業部門雇用者数)が市場予想を上回る伸びをみせました。前日に発表されたADP民間雇用が2年ぶりに前月から減少して労働市場の弱さを示唆したこともあって、雇用統計を受けて長期金利(10年物国債利回り)は大きく上昇、NYダウは340ドル超上昇し、米ドル/円は雇用統計発表前の143円台から一時145円台を示現しました。

米長期金利

OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む7月利下げの確率は5%と、前日の24%から大きく低下しました。雇用統計発表後のメインシナリオ(確率5割超)は「9月、12月、26年3月、6月に0.25%ずつ利下げ」というもの。

もっとも、6月NFPは後述するようにやや特殊な要因によって水増しされた可能性があります。今後、労働市場の軟化が目立ってくれば、トランプ大統領の利下げ要求は一段と強まると予想され、FRBは難しい判断を迫られるでしょう。引き続き米景気、とりわけ労働市場の状況には要注意でしょう。

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6月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)は前月比14.7万人増と、市場予想(10.6万人増)を上回りました。3カ月移動平均は15.0万人増と、昨年1年間の平均(14.3万人増)をやや上回るペース。

NFP

ただし、6月は政府部門が7.3万人増と大きくNFPを押し上げました。州と地方の教職員が6.4万人増加したため。ただ、これは学期末~夏休みにおける教職員の増減を上手く季節調整できなかった可能性が高く、継続的な増加は見込み薄。NFP民間は7.4万人増と、前日のADP雇用(2年ぶりに前月比マイナス)と比べれば上出来ですが、やや弱めと言えるでしょう。

■3日付け「ADPが示唆する雇用統計NFPは?」をご覧ください。

NFP民間と政府

時間当たり賃金は前年比3.7%増と、やや伸びが鈍化。<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比4.5%増と、こちらもジリジリと伸びが鈍化していますが、インフレ率は上回っています。

賃金

総賃金


家計調査に基づく失業率は4.1%と、5カ月ぶりに前月から低下。(家計調査上では)労働力人口(=雇用者数+失業者数)13.0万人減、雇用者数9.3万人増、失業者数22.2万人減の結果でした。このところ労働力人口の伸びが止まっており、移民規制の強化の影響かもしれません。

失業率

労働参加率<労働力人口÷生産年齢人口>は62.3%と前月から0.1ポイント低下し、22年12月以来の低水準。労働参加率は23年末ごろの62.8%をピークに低下基調にあり、労働市場軟調の兆候と言えるかもしれません。

労働参加率
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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