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米経済指標に注目、トランプ関税をめぐるニュースに注意

2025/06/12 09:29

【ポイント】
・米PPIや新規失業保険申請件数を受けてFRBの利下げ観測が高まるか
・原油価格は一段と上昇するか

(欧米市場レビュー)

11日、欧米時間の外為市場では米ドルが軟調に推移。一時米ドル/円は144.293円、米ドル/カナダドルは1.36459カナダドルへと下落し、ユーロ/米ドルは1.14946ドル、英ポンド/米ドルは1.35619ドルへと上昇しました。米国の5月CPI(消費者物価指数)が市場予想を下回ったことが、米ドルに対する下押し圧力となりました。

米CPIの結果は以下のとおり。( )は市場予想です。
<総合>
・前月比:0.1%(0.2%)
・前年比:2.4%(2.4%)
<コア>
・前月比:0.1%(0.3%)
・前年比:2.8%(2.9%)

本日の『ファンダメ・ポイント』は[米CPIは落ち着き、10年物国債入札は順調]です。

米国と中国は9日と10日に閣僚級通商協議を行い、5月のジュネーブ合意を実行するための枠組みについて合意しました。それについてトランプ米大統領は11日、自身のSNSに「中国は必要なレアアース(希土類)を供給する。われわれは合意したものを中国に対して提供し、それには中国人学生を米国の大学に受け入れることが含まれる」、「関税は(米国が)合計55%(※)、中国は10%。関係は良好だ!」と投稿しました。

(※)ホワイトハウス当局者によると、「相互関税の基本税率10%」、「フェンタニル(合成麻薬)の流入に関連する20%」、「トランプ大統領の一期目に導入された25%」の合計。

(本日の相場見通し)

米国のベッセント財務長官は11日に議会下院で証言し、90日間(7/9まで)停止している相互関税の上乗せ部分について、「誠意ある交渉を行っている国・地域については停止期間を延長する可能性がある」と述べました。

一方、トランプ大統領は11日(日本時間12日朝)、「通商交渉の期限を延長する用意はあるが、必要とは考えていない」と発言。それを受けて米ドルが弱含む場面がありました。トランプ大統領はまた、「現在は日本や韓国と交渉中」、「今後1.5~2週間で交渉に関する書簡を送る」とも語りました。

トランプ政権による関税について新たなニュースが出てくれば、材料になる可能性があります。引き続き注意が必要です。最近は、関税をめぐる懸念が高まる場合には米ドルが弱含む傾向がみられます。

***

米国の5月PPI(生産者物価指数)先週分の新規失業保険申請件数が本日発表されます。

市場予想は以下のとおり。( )は前回の実績です。
・PPI総合(前月比):0.2%
・PPI総合(前年比):2.6%
・PPIコア(前月比):0.3%
・PPIコア(前年比)3.1%
・新規失業保険申請件数:24.2万件

市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利下げを行うとの見方が優勢です。

CMEのFedWatchツールによると、米国時間11日時点で市場が織り込む利下げ確率は、次回6月17-18日のFOMCでほぼゼロ%、7月29-30日のFOMCまでで約2割、9月17-18日のFOMCまでで約7割。10日時点の利下げ確率はそれぞれ約3%、約15%、約4割でした。昨日11日の米CPIの結果を受け、9月までの追加利下げ観測が高まりました。

PPIや新規失業保険申請件数が市場予想と比べて弱い結果になれば、FRBの追加利下げ観測が一段と高まりそうです。その場合には米ドルが軟調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルには下落圧力が、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルには上昇圧力が加わると考えられます。

***

原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物は11日に急伸し、中心限月の7月物は前日比3.17ドル高(4.9%)の1バレル=68.15ドルで取引を終了。一時は68.37ドルへと上昇し、中心限月としては4月上旬以来の高値をつけました。

「米国は中東地域の安全保障上のリスクが高まっているとして、在イラク大使館職員を退避させる準備をしている。中東各地から軍人の家族が退去することも許可した」と報じられました。中東情勢の緊迫化への懸念が高まり、原油価格を押し上げました。

原油価格が一段と上昇する場合、ノルウェークローネが堅調に推移する可能性があります。ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ200日移動平均線(12日時点で0.96018スウェーデンクローナ)が目先の上値メドです。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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