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【株価指数】日米の金融政策とトランプ関税

2025/06/02 07:05

【ポイント】
・主要株価指数は底堅いながらも相場材料は強弱錯そう
・今週は日米の金融政策見通しに影響する材料が多い
・「トランプ関税」や「トランプ減税」に関する報道・発信にも要注意

(先週のレビュー)

26日はメモリアルデーで米国が休場、バンクホリデーで英国が休場でした。主要株価指数は総じて底堅かったものの、株価の上昇が続くほどの推進力を欠いたとの印象でした。

週初、フォンデアライエン欧州委員長との電話会談後に、トランプ大統領が前週末に表明した対EU50%関税7月9日まで延期すると発表。それが、株価が大きく上昇する要因となりました。トランプ大統領が日本製鉄によるUSスチール買収に前向きな発言をしたことも日経平均のプラス材料でした(のちにトランプ大統領は「米国がコントロール」と発言)。

その後、世界的な長期金利の低下や、米消費者信頼感の上昇、エヌビディアの好決算などからリスクオンの株高になる場面もありました。もっとも、週後半は株価のプラス材料とマイナス材料が錯そうするなかで、NYダウS&P500ナスダック100は揉み合いの展開となりました。

28日、米国際貿易裁判所はトランプ政権の相互関税などを違法判断しましたが、翌29日、トランプ政権による控訴を受けて連邦高裁は関税差し止めを一時停止しました。30日には、トランプ政権が中国IT業界への制裁拡大を計画との報道や、トランプ大統領の「中国が合意に違反した」、「習主席と会談する見通し」、「鉄鋼(・アルミ)関税を2倍の50%にする」といった発信など、関税に絡んだ相場材料がありました。

FTSE100は4月の落ち込みからの回復が比較的早く、3月3日につけた最高値(終値8871.31)に近い水準で揉み合っています。元々、相互関税一律10%への上乗せ分がなかったこと、さらには他国に先駆けて5月8日に米英間で関税合意が成立したことなどが引き続き好材料視されているのかもしれません。 


(今週の相場材料)

米国では景気が底堅く推移していると見られており、25年中のFRBによる利下げは9月と12月というのが市場のメインシナリオ(0.25%幅、OISの確率5割超)。今週は重要な米経済指標が多く、それらを受けて景況感や金融政策見通しに変化が生じるかどうか。

5月ISM製造業景況指数(2日)、同非製造業(4日)、雇用統計(6日)など。4日にはベージュブック地区連銀経済報告)。また、2日にはFRBの国際金融部門75周年コンファレンスでパウエル議長が講演します。

5月30日時点のアトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)では、4-6月期GDPは前期比年率3.8%と力強い成長が予測されています。27日時点の2.2%から上方修正されたのは、輸入が前期から大幅に減少するとの予測に修正されたためです。ただし、FRBが重視するPDFP(国内民間最終需要)はGDPを2.7%押し上げる(寄与度)と予測されており、景気堅調が示唆されています。

日本では、3日に植田日銀総裁が内外情勢調査会で講演します。5日には4月の毎月勤労統計の発表。実質賃金が3月まで3カ月連続で前年比大幅マイナスとなっており、改善がみられるかどうか。同日昼過ぎに30年物国債入札の結果が判明します。同利回りは5月21日に入札開始の99年9月以来の最高値をつけており、入札が不調で金利上昇圧力が加わるようなら、株価にとってはマイナスとなりそうです。20年債と40年債の入札は不調でした。

5月30日時点のOISに基づけば、市場が織り込む日銀の0.25%利上げの確率は10月までで6割。ただ、25年中でみても7割に満たず、年内の利上げが確実視されているわけではなさそうです。

トランプ政権の関税に関する報道にも要注意でしょう。ウォール街で流行りの「TACO(トランプ氏はいつも尻込みする)」に反発するように、トランプ大統領が過激な発信をする可能性もありそうです。

また、米議会では上院がメモリアルデーの休暇から戻ってきます。下院で可決された、トランプ減税を実現するための予算調整法案の審議が本格化しそうです。審議状況によっては債券市場(長期金利)が反応するかもしれません。

その他、ECBの理事会では0.25%利下げの可能性が高そうです。欧州経済の現状や見通し、トランプ関税の影響などについて、ラガルド総裁は会見で何を語るでしょうか。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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