ラガルド総裁の野心 基軸通貨米ドルの地位は揺らぐか
2025/05/28 08:20
【ポイント】
・ラガルド総裁はユーロが国際的役割を高める好機だと発言
・トランプ政権は米ドルの地位低下には無関心か
・わずかずつでも底流の変化には留意すべき
ラガルドECB総裁は26日、ユーロの国際的な役割を高めるうえで今が良い機会だと指摘しました。「影響力の獲得:国際通貨の歴史から学ぶ」と題するベルリンでの講演でのこと。
ラガルド総裁は、「米国が主導してきた国際秩序にヒビが入り始めている」として、「多国間の協力はゼロサムの思考と二国間での実力行使に取って代わられ、開放主義は保護主義に道を譲った。そして、システムの礎である米ドルの支配的立場にも不確実性が生じている」と述べました。
ユーロの国際的な地位の向上は米ドルの地位低下と表裏一体でしょう。トランプ政権は、基軸通貨のメリットを軽視しているからなのか、それとも無意識なのか、基軸通貨としてのドルの地位が揺らぐ方向にまい進しているようにみえます。
もっとも、ユーロが直ちに米ドルに取って代わるはずもありません。ユーロが基軸通貨の一部を担える資質を得る必要があるでしょう。ラガルド総裁も。「単に特権が与えられるはずもなく、我々自身の手で獲得する必要がある」と述べています。
したがって、突如金兌換を停止した71年8月の「ニクソン・ショック」のように急激な変化が起きるわけではないでしょう。ただ、わずかずつでも底流でそうした変化が起きている可能性には留意したほうが良さそうです。
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基軸通貨になるための条件とそのメリットを概観しておきましょう。
基軸通貨の条件
国際通貨研究所によると、(1)その通貨を擁する国の経済規模や金融市場が大きいこと、(2)規律ある安定した金融市場であり(中央銀行の独立性も重要)、為替相場や金利などの価格形成が透明であること、(3)体制を守れる強い軍事力があること。
基軸通貨のメリット
上記のラガルド総裁の講演から引用すれば、国際的な役割が高まることで次のようなメリットが享受できます。(1)政府や企業が低コストで資金を借りられること、(2)自国通貨建て貿易が増えることで為替レート変動の影響を受けにくいこと、(3)他国との間の資金フローの変動が抑制されること、(4)経済制裁や強制的な措置から守られること、など。
・ラガルド総裁はユーロが国際的役割を高める好機だと発言
・トランプ政権は米ドルの地位低下には無関心か
・わずかずつでも底流の変化には留意すべき
ラガルドECB総裁は26日、ユーロの国際的な役割を高めるうえで今が良い機会だと指摘しました。「影響力の獲得:国際通貨の歴史から学ぶ」と題するベルリンでの講演でのこと。
ラガルド総裁は、「米国が主導してきた国際秩序にヒビが入り始めている」として、「多国間の協力はゼロサムの思考と二国間での実力行使に取って代わられ、開放主義は保護主義に道を譲った。そして、システムの礎である米ドルの支配的立場にも不確実性が生じている」と述べました。
ユーロの国際的な地位の向上は米ドルの地位低下と表裏一体でしょう。トランプ政権は、基軸通貨のメリットを軽視しているからなのか、それとも無意識なのか、基軸通貨としてのドルの地位が揺らぐ方向にまい進しているようにみえます。
もっとも、ユーロが直ちに米ドルに取って代わるはずもありません。ユーロが基軸通貨の一部を担える資質を得る必要があるでしょう。ラガルド総裁も。「単に特権が与えられるはずもなく、我々自身の手で獲得する必要がある」と述べています。
したがって、突如金兌換を停止した71年8月の「ニクソン・ショック」のように急激な変化が起きるわけではないでしょう。ただ、わずかずつでも底流でそうした変化が起きている可能性には留意したほうが良さそうです。
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基軸通貨になるための条件とそのメリットを概観しておきましょう。
基軸通貨の条件
国際通貨研究所によると、(1)その通貨を擁する国の経済規模や金融市場が大きいこと、(2)規律ある安定した金融市場であり(中央銀行の独立性も重要)、為替相場や金利などの価格形成が透明であること、(3)体制を守れる強い軍事力があること。
基軸通貨のメリット
上記のラガルド総裁の講演から引用すれば、国際的な役割が高まることで次のようなメリットが享受できます。(1)政府や企業が低コストで資金を借りられること、(2)自国通貨建て貿易が増えることで為替レート変動の影響を受けにくいこと、(3)他国との間の資金フローの変動が抑制されること、(4)経済制裁や強制的な措置から守られること、など。
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