債券自警団、米財政赤字に警鐘を鳴らすか
2025/05/20 08:24
【ポイント】
・米長期金利は国債格下げをうけて上昇後に反落
・財政赤字拡大に対する債券市場の警告はもう終わり?
・トランプ減税実現に向けた議会の動向と債券市場の反応に要注目
大手格付け会社Moody’s(ムーディーズ)による格下げ(※)を受けて、16日のNY市場終盤に米長期金利(10年物国債利回り)は上昇(=国債価格は下落)。週明け19日のアジア~欧州時間に長期金利はさらに上昇して一時4.56%をつけました。しかし、NY市場に入ると長期金利は4.45%近辺に低下し、ほぼ格下げ発表前の水準に戻りました。
※最上級Aaaから1段階下のAa1に引き下げ。3大格付け会社の残り、S&Pは11年8月に、フィッチは23年8月に最上級から1段階引き下げています。いずれもデットシーリング(債務上限)絡みの判断でした。
ベッセント財務長官は18日の報道番組で、格付けは遅行指標であり、格下げは重要でない旨の発言をしました。また、SNB(スイス中銀)のシュレーゲル総裁が会見で「米国債に代わる安全な資産はない」と発言したことも、米長期金利の低下に寄与したようです。

放漫な財政政策に対して、金利が上昇し(国債価格が下落し)警鐘を鳴らす役割を「債券自警団(Bond Vigilante)」と呼びます。財政赤字の拡大と長期金利の上昇が顕著だった80年代に米国の著名エコノミストが作った言葉です。
果たして、債券自警団の登場は一瞬だったのでしょうか。現在、下院ではトランプ減税の実現に向けて予算調整法案(※)の審議が進められています。歳入委員会が承認した法案は財政委員会でいったん否決されたものの、その後に可決されました。財政赤字削減策が不十分だとして当初反対票を投じた共和党内の財政保守派が、2回目投票では棄権したからです。
※トランプ大統領が「一つの大きな美しい法案(One Big Beautiful Bill)」と呼んだことから、下院ではそれが正式名称になっているようです。
予算調整法案はこの後、ルール委員会などを経て下院本会議で審議される予定です。そこでは一段の歳出削減を求める財政保守派と、福祉関連の支出削減に難色を示す穏健派とのバトルが繰り広げられそうです。
共和党は僅差ながら下院の過半数の議席を握っているため、民主党議員が全員反対しても、共和党内の造反者が1~2人なら法案を可決できます。共和党は5月26日のメモリアルデーまでの下院での可決を目指しています。
なお、下院通過後は上院で同様の審議が行われます。上院で法案の修正があれば再び下院での採決が必要になり、両院が同一の法案を可決すれば、大統領の署名を得て成立します。共和党はデットシーリング(債務上限)の限界が到来する8月までの成立を目指しています。
今後、トランプ減税関連の報道が増えると思われますが、市場、とりわけ長期金利がどう反応するか興味深いところでしょう。
・米長期金利は国債格下げをうけて上昇後に反落
・財政赤字拡大に対する債券市場の警告はもう終わり?
・トランプ減税実現に向けた議会の動向と債券市場の反応に要注目
大手格付け会社Moody’s(ムーディーズ)による格下げ(※)を受けて、16日のNY市場終盤に米長期金利(10年物国債利回り)は上昇(=国債価格は下落)。週明け19日のアジア~欧州時間に長期金利はさらに上昇して一時4.56%をつけました。しかし、NY市場に入ると長期金利は4.45%近辺に低下し、ほぼ格下げ発表前の水準に戻りました。
※最上級Aaaから1段階下のAa1に引き下げ。3大格付け会社の残り、S&Pは11年8月に、フィッチは23年8月に最上級から1段階引き下げています。いずれもデットシーリング(債務上限)絡みの判断でした。
ベッセント財務長官は18日の報道番組で、格付けは遅行指標であり、格下げは重要でない旨の発言をしました。また、SNB(スイス中銀)のシュレーゲル総裁が会見で「米国債に代わる安全な資産はない」と発言したことも、米長期金利の低下に寄与したようです。

放漫な財政政策に対して、金利が上昇し(国債価格が下落し)警鐘を鳴らす役割を「債券自警団(Bond Vigilante)」と呼びます。財政赤字の拡大と長期金利の上昇が顕著だった80年代に米国の著名エコノミストが作った言葉です。
果たして、債券自警団の登場は一瞬だったのでしょうか。現在、下院ではトランプ減税の実現に向けて予算調整法案(※)の審議が進められています。歳入委員会が承認した法案は財政委員会でいったん否決されたものの、その後に可決されました。財政赤字削減策が不十分だとして当初反対票を投じた共和党内の財政保守派が、2回目投票では棄権したからです。
※トランプ大統領が「一つの大きな美しい法案(One Big Beautiful Bill)」と呼んだことから、下院ではそれが正式名称になっているようです。
予算調整法案はこの後、ルール委員会などを経て下院本会議で審議される予定です。そこでは一段の歳出削減を求める財政保守派と、福祉関連の支出削減に難色を示す穏健派とのバトルが繰り広げられそうです。
共和党は僅差ながら下院の過半数の議席を握っているため、民主党議員が全員反対しても、共和党内の造反者が1~2人なら法案を可決できます。共和党は5月26日のメモリアルデーまでの下院での可決を目指しています。
なお、下院通過後は上院で同様の審議が行われます。上院で法案の修正があれば再び下院での採決が必要になり、両院が同一の法案を可決すれば、大統領の署名を得て成立します。共和党はデットシーリング(債務上限)の限界が到来する8月までの成立を目指しています。
今後、トランプ減税関連の報道が増えると思われますが、市場、とりわけ長期金利がどう反応するか興味深いところでしょう。
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