「トランプ減税」の現在地
2025/03/25 07:56
【ポイント】
・共和党は「トランプ減税」を予算調整法案に盛り込んで成立させる意向
・予算調整法案の前提となる予算決議は2月下旬に各院が可決
・ただし、上院と下院の予算決議は大きく異なるため、一本化が必要
・下院議長が目指す5月下旬までの「トランプ減税」実現はかなり難しそう
米議会は3月14日に25年度末(25年9月30日)までの新たな継続予算を可決しました。これにより土壇場でシャットダウン(政府機能の一部停止)の懸念は解消されました。
議会共和党が現在進めようとしているのが、25年末に失効する「17年減税」の延長/恒久化や法人税率の引き下げなど(以下では「トランプ減税」と総称)、昨年11月の大統領選でのトランプ氏の公約です。
共和党との対立姿勢を明確にしている民主党の協力なしに「トランプ減税」を成立するためには、フィリバスター(末尾※1)の対象外となっている予算調整法案(※2)に盛り込むのが唯一の手段です。そして、予算調整法案の審議を行うためには、まず予算の大枠を決める予算決議(※3)を成立させる必要があります。
予算決議の一本化作業
予算決議は2月21日に上院が、同25日に下院がそれぞれ可決しています。しかし、内容が異なるために予算決議を一本化する必要があります。これが「トランプ減税」実現に向けた現在地です。
上院の予算決議は、国防費や国境警備費など総額3,400億ドルと限定的で、迅速な成果を上げることを目的としています。「トランプ減税」を盛り込む予算調整法案につながる予算決議は後に成立させる意向です。
一方、下院の予算決議は、全てを盛り込んだ予算調整法案、トランプ大統領の言う「一本の美しい法案」を実現させるためのものです。歳出削減1.5兆ドル、減税措置4.5兆ドル、デットシーリング(債務上限)引き上げ4兆ドルなどが柱です。
今後の展開
議会共和党は下院の予算決議を叩き台として、予算決議の一本化を進めようとしています。ただし、上院共和党内には下院の予算決議に反対の声があるため、状況によっては一部の民主党議員から協力を取り付ける必要もあるようです。ジョンソン下院議長はメモリアルデー(25年は5月26日)までに「トランプ減税」を実現させることを目指していますが、一筋縄ではいきそうもありません。議会での審議状況を見守る必要がありそうです。
※1 上院だけに認められている少数政党の採決妨害策。上院には法案審議の時間制限がないので、延々と発言を続けることで採決に至らせないことが可能。ただし、スーパーマジョリティ(100議席中60以上)の賛成により審議を打ち切って、採決を行うことができます。採決ではマジョリティ(共和党の場合は副大統領がタイブレーカーを持つので100議席中50以上)の賛成で可決されます。
※2 通常、予算とは12本の歳出法のことで、歳出全体の3割未満の裁量的支出のみをカバーします。予算決議(設計図)に則って、社会保障などの義務的支出や歳入に影響する税制の改革などを盛り込んで財政収支全体を調整するのが予算調整法案。
※3 歳出や歳入の大枠を決める、いわば設計図。大統領が署名して立法化される法案とは異なり、法的拘束力はありません。あくまで議会の意思表示に過ぎません。ただし、予算調整法案の有無やその内容を規定するため、財政政策上は非常に重要な役割を持ちます。
・共和党は「トランプ減税」を予算調整法案に盛り込んで成立させる意向
・予算調整法案の前提となる予算決議は2月下旬に各院が可決
・ただし、上院と下院の予算決議は大きく異なるため、一本化が必要
・下院議長が目指す5月下旬までの「トランプ減税」実現はかなり難しそう
米議会は3月14日に25年度末(25年9月30日)までの新たな継続予算を可決しました。これにより土壇場でシャットダウン(政府機能の一部停止)の懸念は解消されました。
議会共和党が現在進めようとしているのが、25年末に失効する「17年減税」の延長/恒久化や法人税率の引き下げなど(以下では「トランプ減税」と総称)、昨年11月の大統領選でのトランプ氏の公約です。
共和党との対立姿勢を明確にしている民主党の協力なしに「トランプ減税」を成立するためには、フィリバスター(末尾※1)の対象外となっている予算調整法案(※2)に盛り込むのが唯一の手段です。そして、予算調整法案の審議を行うためには、まず予算の大枠を決める予算決議(※3)を成立させる必要があります。
予算決議の一本化作業
予算決議は2月21日に上院が、同25日に下院がそれぞれ可決しています。しかし、内容が異なるために予算決議を一本化する必要があります。これが「トランプ減税」実現に向けた現在地です。
上院の予算決議は、国防費や国境警備費など総額3,400億ドルと限定的で、迅速な成果を上げることを目的としています。「トランプ減税」を盛り込む予算調整法案につながる予算決議は後に成立させる意向です。
一方、下院の予算決議は、全てを盛り込んだ予算調整法案、トランプ大統領の言う「一本の美しい法案」を実現させるためのものです。歳出削減1.5兆ドル、減税措置4.5兆ドル、デットシーリング(債務上限)引き上げ4兆ドルなどが柱です。
今後の展開
議会共和党は下院の予算決議を叩き台として、予算決議の一本化を進めようとしています。ただし、上院共和党内には下院の予算決議に反対の声があるため、状況によっては一部の民主党議員から協力を取り付ける必要もあるようです。ジョンソン下院議長はメモリアルデー(25年は5月26日)までに「トランプ減税」を実現させることを目指していますが、一筋縄ではいきそうもありません。議会での審議状況を見守る必要がありそうです。
※1 上院だけに認められている少数政党の採決妨害策。上院には法案審議の時間制限がないので、延々と発言を続けることで採決に至らせないことが可能。ただし、スーパーマジョリティ(100議席中60以上)の賛成により審議を打ち切って、採決を行うことができます。採決ではマジョリティ(共和党の場合は副大統領がタイブレーカーを持つので100議席中50以上)の賛成で可決されます。
※2 通常、予算とは12本の歳出法のことで、歳出全体の3割未満の裁量的支出のみをカバーします。予算決議(設計図)に則って、社会保障などの義務的支出や歳入に影響する税制の改革などを盛り込んで財政収支全体を調整するのが予算調整法案。
※3 歳出や歳入の大枠を決める、いわば設計図。大統領が署名して立法化される法案とは異なり、法的拘束力はありません。あくまで議会の意思表示に過ぎません。ただし、予算調整法案の有無やその内容を規定するため、財政政策上は非常に重要な役割を持ちます。
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