トランプ減税の現在地
2025/02/11 08:14
【ポイント】
・出発的となる予算決議を今週採決へ?
・共和党内でも上院と下院の足並みがそろわず
・共和党内の財政保守派が重要なカギを握る
トランプ大統領が就任してから3週間が経過。この間に、不法移民の強制送還や恩赦、関税引き上げなど、大統領令の発令によって数多くの政策が打ち出されました。
そして、減税(17年トランプ減税の延長+新たな法人減税)はまさにこれからです。上記の政策と異なり、税制改革は議会で立法化される必要があるため、大統領の一存で事が進むわけではないからです。
予算調整法案とフィリバスター
まず、減税が実現するためには、予算調整法案に盛り込まれることが不可欠です。通常の法案は上院でフィリバスター(※)の対象となり得ますが、予算調整法案にフィリバスターは使えないからです。換言すれば、予算調整法であれば、共和党だけで立法化が可能です。
※少数政党による妨害工作のこと。上院には審議時間の制限がないため、延々と演説を続けることで採決を妨害することができます。フィリバスターを終わらせて採決に持ち込むためにはスーパーマジョリティー(上院100議席中60議席以上)による審議終了の動議が必要です。現在の共和党議席数は53なので、予算調整法案以外で民主党が協力しない法案の成立は事実上不可能です。
予算調整法案は、歳出と歳入の大枠を決める予算決議(いわば予算の設計図)に従って歳入と歳出のバランスを調整する法案です。毎年の予算を決める歳出法(裁量的支出)は歳出全体の3割弱しかカバーしていません。歳出の残り7割は社会保障(年金)や福祉などの義務的支出と国債費(利払い)です。また、歳入は所得税や法人税などすべてが税制など別の法律によって決まります。つまり、予算調整法案は、歳出の残り7割と歳入に変化を加える場合に必要になる法案で、それにトランプ減税も含まれるのです(予算と別に税制改革を行うためには上院で60議席以上の賛成が必要になるため)。

予算決議が難航!?
ところが出発的にあたる予算決議が決まっていません。下院では、共和党が1本の予算調整法案に全てを盛り込もうとしていますが、議席数の差が3しかない、つまり2人以上の造反が許されない状況下で、大幅な歳出削減を求める財政保守派が現行案に難色を示しているからです。
一方、上院では、国境警備費や国防支出の増加を含むものと、減税やデットシーリング(債務上限)引上げを含むものと2本の予算調整法案が検討されています。下院が前に進まないことに痺れを切らして独自の予算決議を採択することを検討しているようです。
いずれにせよ、トランプ減税が前に進むかどうか。目先的には議会が予算決議を採択することができるかが重要なカギを握っています。
足もとではトランプ関税に市場の関心が集中していますが、トランプ減税の進捗にも注意した方が良さそうです。
■トランプ減税の動きについては、7日付けM2TVグローバルView「”関税騒動“に隠れたトランプ減税はどうなる? 米ドル/円の行方」でも解説しています。
・出発的となる予算決議を今週採決へ?
・共和党内でも上院と下院の足並みがそろわず
・共和党内の財政保守派が重要なカギを握る
トランプ大統領が就任してから3週間が経過。この間に、不法移民の強制送還や恩赦、関税引き上げなど、大統領令の発令によって数多くの政策が打ち出されました。
そして、減税(17年トランプ減税の延長+新たな法人減税)はまさにこれからです。上記の政策と異なり、税制改革は議会で立法化される必要があるため、大統領の一存で事が進むわけではないからです。
予算調整法案とフィリバスター
まず、減税が実現するためには、予算調整法案に盛り込まれることが不可欠です。通常の法案は上院でフィリバスター(※)の対象となり得ますが、予算調整法案にフィリバスターは使えないからです。換言すれば、予算調整法であれば、共和党だけで立法化が可能です。
※少数政党による妨害工作のこと。上院には審議時間の制限がないため、延々と演説を続けることで採決を妨害することができます。フィリバスターを終わらせて採決に持ち込むためにはスーパーマジョリティー(上院100議席中60議席以上)による審議終了の動議が必要です。現在の共和党議席数は53なので、予算調整法案以外で民主党が協力しない法案の成立は事実上不可能です。
予算調整法案は、歳出と歳入の大枠を決める予算決議(いわば予算の設計図)に従って歳入と歳出のバランスを調整する法案です。毎年の予算を決める歳出法(裁量的支出)は歳出全体の3割弱しかカバーしていません。歳出の残り7割は社会保障(年金)や福祉などの義務的支出と国債費(利払い)です。また、歳入は所得税や法人税などすべてが税制など別の法律によって決まります。つまり、予算調整法案は、歳出の残り7割と歳入に変化を加える場合に必要になる法案で、それにトランプ減税も含まれるのです(予算と別に税制改革を行うためには上院で60議席以上の賛成が必要になるため)。

予算決議が難航!?
ところが出発的にあたる予算決議が決まっていません。下院では、共和党が1本の予算調整法案に全てを盛り込もうとしていますが、議席数の差が3しかない、つまり2人以上の造反が許されない状況下で、大幅な歳出削減を求める財政保守派が現行案に難色を示しているからです。
一方、上院では、国境警備費や国防支出の増加を含むものと、減税やデットシーリング(債務上限)引上げを含むものと2本の予算調整法案が検討されています。下院が前に進まないことに痺れを切らして独自の予算決議を採択することを検討しているようです。
いずれにせよ、トランプ減税が前に進むかどうか。目先的には議会が予算決議を採択することができるかが重要なカギを握っています。
足もとではトランプ関税に市場の関心が集中していますが、トランプ減税の進捗にも注意した方が良さそうです。
■トランプ減税の動きについては、7日付けM2TVグローバルView「”関税騒動“に隠れたトランプ減税はどうなる? 米ドル/円の行方」でも解説しています。
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