カナダドルとメキシコペソが急落、関税をめぐるニュースに引き続き要注意
2025/01/31 09:27
【ポイント】
・米大統領はメキシコとカナダに関税を課すと改めて表明
・対メキシコ関税と対カナダ関税の将来的な引き上げの可能性にも言及
・米PCEデフレーターで市場のFRB金融政策見通しが変化するか
(欧米市場レビュー)
30日、欧米時間の外為市場では、トランプ米大統領の関税をめぐる発言を受けてカナダドルとメキシコペソが急落。一時、米ドル/カナダドルは1.45894カナダドルへと上昇し、カナダドル/円は105.636円、メキシコペソ/円は7.412円へと下落。米ドル/カナダドルは20年3月以来の高値をつけました。トランプ大統領は「2月1日から、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課す」と表明しました。
米ドルは対円を除いて堅調。一時、ユーロ/米ドルは1.03861ドル、英ポンド/米ドルは1.24074ドル、豪ドル/米ドルは0.61972米ドルへと下落しました。対カナダドルや対メキシコペソでの米ドル買いが他通貨にも波及したと考えられます。
ECB(欧州中銀)は0.25%の利下げを行うことを決定。3つの政策金利のうちECBが最も重視している下限の中銀預金金利を3.00%から2.75%へ引き下げました(残りの2つ、主要リファイナンス金利は3.15%から2.90%へ、限界貸出金利は3.40%から3.15%へ引き下げ)。
※ECB理事会については、本日31日の『ファンダメ・ポイント』[ECB利下げ、25年中にあと3回利下げ!?]にて詳しく解説していますので、ご覧ください。
SARB(南アフリカ中銀)は0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を7.75%から7.50%へと引き下げました。利下げは3会合連続で、0.25%の利下げは4対2で決定され、決定に反対した2人は政策金利の据え置きを支持しました。
SARBは声明で利下げする背景として、「インフレ率は25年前半を通じてSARBの目標レンジ(3~6%)の下半分にとどまる可能性が高い」ことや、「インフレ期待も目標レンジの中間値にほぼ一致している」ことなどを挙げました。
(本日の相場見通し)
上述の通り、トランプ米大統領は30日(日本時間31日午前)に「2月1日から、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課す」と改めて表明しました。また、「(関税の)税率は時間の経過とともに、上がるかもしれないし、上がらないかもしれない」とも述べ、対メキシコ関税や対カナダ関税は将来的にさらに引き上げられる可能性に言及しました。
関税をめぐるトランプ大統領の発言や報道が新たに出てくれば、市場が反応しそうです。対メキシコ関税や対カナダ関税への懸念が市場でさらに強まる場合、メキシコペソやカナダドルは一段安になる可能性があります。
※米ドル/カナダドルのテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[トランプ発言でドルカナダが一時急騰!20年3月コロナショック時高値超えとなるか]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。
週末に関税についての追加報道などが出てきた場合、月曜日(2月3日)に窓開け(週明けの始値が前週末の終値と大きくかい離すること)する可能性もあるため要注意です。
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本日は、米国の24年12月PCE(個人消費支出)デフレーターが発表されます(日本時間22:30)。この結果が材料になる可能性があります。
PCEデフレーターの市場予想は以下の通り。( )は前回の実績です。
<総合>
・前月比:0.3%(0.1%)
・前年比:2.6%(2.4%)
<コア>
・前月比:0.2%(0.1%)
・前年比:2.8%(2.8%)
市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)は5月か6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利下げを行うとの観測があります。CMEのFedWatchツールによると、市場が織り込む利下げの確率は、次回3月18-19日のFOMCで2割弱、次々回5月6-7日のFOMCまでで4割弱、6月17-18日のFOMCまでで7割程度です。
PCEデフレーターが市場予想を上回る結果になれば、利下げ観測が後退すると考えられます。その場合には米ドルが堅調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルは上値を試し、一方でユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは下値を試す展開になりそうです。
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