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米ドル/円と米長期金利の行方

2025/01/07 08:35

【ポイント】
・米ドル/円は米長期金利との強い相関関係を維持
・足もとの長期金利は5%を目指す?
・米景気・物価動向、金融政策、トランプ政権の政策が相場材料に

米ドル/円と日米長期金利(10年物国債利回り)の差との強い相関について、たびたび指摘してきました。昨年11月1日-12月31日の期間についても同様であり、両者の相関係数は0.89でした。もっとも、この期間において、日米長期金利差以上に米ドル/円と強い相関にあったのが米長期金利そのものでした(相関係数0.95 ※)。

※同期間における米ドル/円と日本の長期金利との相関係数は0.34です。正の相関であり、米ドル/円と日本の長期金利は同方向に動く傾向がありました。理論的に矛盾しているようにみえますが、これは米長期金利上昇(低下)が米ドル/円の上昇(下落)だけでなく、日本の長期金利の上昇(低下)ももたらしたと解釈できます。

米ドル円と長期金利

以上を踏まえて、米長期金利の行方を考察します。

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米長期金利は昨年12月上旬から速いペースで上昇しました。12月終盤にはやや揉み合いましたが、25年に入って再び上を目指しそうな勢いです。昨年5月の高値を上抜けしており、次は4月につけた4.74%が視野に入っています(それより上は23年10月にワンタッチした5.00%)。

米長期金利

長期金利がボトムをつけた昨年12月6日から今年1月6日までにイールドカーブ(利回り曲線)はベアスティープ化(※)しました。12月19日にFRBが利下げしたこともあり、1年以内の利回りは低下しましたが、2年以上の利回りは上昇。それも短期(2年)よりも長期(10年)の上昇幅が大きくなりました。

(※)短期金利よりも長期金利が大幅に上昇することで、右上がりの傾斜が急になること。短期金利が長期金利よりも大幅に低下することで、右上がりの傾斜が急になることはブルスティープ化と呼びます。これらに対して、右上がりの傾斜が緩やかになることはフラット化

米イールドカーブ

これは先行きの利下げ期待の後退(主に2年金利の上昇要因)、インフレや財政赤字に関する懸念の増大(主に10年金利上昇要因)を示唆しています。1月20日に誕生するトランプ政権の経済政策次第では、イールドカーブが一段とベアスティープ化する可能性がありそうです。

今後の長期金利の行方に関して、想定される上昇要因と低下要因を挙げておきます。

上昇要因:
・景気の堅調(雇用増・失業率低下、個人消費堅調・・)
・インフレ加速、インフレ圧力の高まり(賃金上昇、エネルギー価格高騰、関税引き上げ、移民規制強化・・)
・利下げ観測の後退
・財政赤字拡大、あるいはその懸念の増大(トランプ減税・予算交渉)※

※短期的には米ドルの上昇要因ですが、市場が「悪い金利上昇」と判断すれば、米ドルはさほど上昇しないか、あるいは下落する可能性もあります。

低下要因:
・上記要因が裏目に出るケース
・株価の急激・大幅な下落
・米政府のデフォルト懸念(デットシーリング問題:2011年の経験)
・FRBがビハインド・ザ・カーブ※になるケース

※ここでは、景気が悪化しているのに、FRBが利下げを躊躇して手遅れになると市場が判断すること
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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