ゴールド調整継続、原油は弱含み 「トランプ劇場」で乱高下も
2024/11/29 13:09
<金は上値重い、荒い値動きも>
今週(11/25─)の米ドル建て金先物は荒い値動きとなりました。25日に3%を超える大幅安となった後に、いったん反発したものの、上値は重く25日移動平均線を下回る2,600ドル台半ばで推移しています。米金利はやや低下していますが、地政学リスク後退による「安全資産」需要の減退もあり、短期筋がロングポジションを閉じている可能性があるとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,600─2,700ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,400─13,400円
*複数要因による短期筋の巻き戻しか
米金利低下の1つの要因は、トランプ次期米大統領が22日、次期米財務長官に著名投資家のスコット・ベッセント氏を指名したことだと言われています。ヘッジファンド出身で財政規律を重んじるとされ、トランプ氏のインフレ的な政策にブレーキをかけると期待されています。
米財政悪化によるドルの信認低下が金需要の背景にあったとすれば、ベッセント氏の指名は金にとってネガティブ要因かもしれません。ただ、米金利低下自体は利息が付かない金にとってポジティブ要因です。
「トランプ関税」への警戒感も金下落の一要因との指摘があります。トランプ氏は25日、中国からの輸入品に10%の追加関税をかけるほか、メキシコとカナダに対しても25%の関税を課すと表明しました。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、11月第1週の世界の金ETF(上場投資信託)は推計で8億900万ドル(重量換算で12トン)の減少。アジアからの流入が好調でしたが、北米からの流出が顕著で米中貿易戦争への懸念が再燃している可能性があると指摘されています。
いずれも決定的な要因ではないにせよ、こうした複数要因が重なって、短期筋のロングポジションを巻き戻させたのかもしれません。米国では28日の感謝祭祝日から年末モードに入りました。ホリデーシーズンを前に持ち高を軽くしておこうとしている可能性もあります。
米商品先物取引委員会(CFTC)が22日に発表した11月19日終了週の金先物の非商業(投機)部門のポジションは、23万4367枚の買い越し。今年のピークである9月24日終了週の31万5390枚から縮小傾向となっています。今年の最少は2月13日終了週の13万1168枚でしたので、もう少し縮小余地がありそうです。
長期的には金に対する強気見通しが依然として多く聞かれます。ただ、予測が付かない「トランプ劇場」ですので、短期的には報道やSNSでの発信で振らされる展開が続きそうです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/28~2024/11/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は弱含み、供給懸念和らぐ>
今週のWTI原油先物価格は弱含みとなりました。地政学リスクの後退により原油の供給懸念が和らいだほか、「トランプ関税」による影響も意識されました。前週は一時70ドル大台を回復したものの、再び60ドル台後半に水準を下げて推移しています。産油国は減産継続で対応しようとしていますが、上値が重い展開が続いています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル66─71ドル
*中東情勢と「トランプ関税」
中東情勢の緊張感が和らぐのではないかとの期待感が高まっています。イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが停戦に合意し、27日から60日間の一時停戦に入りました。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザの停戦につながるとの期待もあるようです。
トランプ次期米大統領による関税強化では、対象品目から石油は除外されないと一部で報じられています。関税が引き上げられれば価格も高くなると考えがちですが、そのままでは他国産の原油に対し米国内での価格競争力が低下するので、両国の石油生産者は値下げするか、もしくはアジアなどに輸出を余儀なくされるとみられています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は、12月1日に開く閣僚級会合を前に、来年1月に開始する予定の有志国による自主減産縮小をさらに先送りすることを議論していると報じられています。11月3日の会合で、自主減産幅縮小を12月から1カ月延期すると決めたばかりですが、供給懸念解消で原油価格が弱含んでいるため、減産継続で価格を維持しようとしているようです。
米エネルギー情報局(EIA)が27日に発表した22日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比184.4万バレル減少しました。4週ぶりの減少です。一方、ガソリン在庫は331.4万バレルの増加、留出油は41.6万バレルの増加。まちまちの結果となり、原油相場に与える影響は限定的でした。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/29~2024/11/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
「くりっく株365」(取引所CFD取引)のサービス提供を12月末で終了いたします(※)。金・原油のレポートは今回が最終回となります。長い間、ご愛読ありがとうございました。
(※)下記お知らせをご覧ください
https://www.m2j.co.jp/notice/302296/contents
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
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今週(11/25─)の米ドル建て金先物は荒い値動きとなりました。25日に3%を超える大幅安となった後に、いったん反発したものの、上値は重く25日移動平均線を下回る2,600ドル台半ばで推移しています。米金利はやや低下していますが、地政学リスク後退による「安全資産」需要の減退もあり、短期筋がロングポジションを閉じている可能性があるとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,600─2,700ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,400─13,400円
*複数要因による短期筋の巻き戻しか
米金利低下の1つの要因は、トランプ次期米大統領が22日、次期米財務長官に著名投資家のスコット・ベッセント氏を指名したことだと言われています。ヘッジファンド出身で財政規律を重んじるとされ、トランプ氏のインフレ的な政策にブレーキをかけると期待されています。
米財政悪化によるドルの信認低下が金需要の背景にあったとすれば、ベッセント氏の指名は金にとってネガティブ要因かもしれません。ただ、米金利低下自体は利息が付かない金にとってポジティブ要因です。
「トランプ関税」への警戒感も金下落の一要因との指摘があります。トランプ氏は25日、中国からの輸入品に10%の追加関税をかけるほか、メキシコとカナダに対しても25%の関税を課すと表明しました。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、11月第1週の世界の金ETF(上場投資信託)は推計で8億900万ドル(重量換算で12トン)の減少。アジアからの流入が好調でしたが、北米からの流出が顕著で米中貿易戦争への懸念が再燃している可能性があると指摘されています。
いずれも決定的な要因ではないにせよ、こうした複数要因が重なって、短期筋のロングポジションを巻き戻させたのかもしれません。米国では28日の感謝祭祝日から年末モードに入りました。ホリデーシーズンを前に持ち高を軽くしておこうとしている可能性もあります。
米商品先物取引委員会(CFTC)が22日に発表した11月19日終了週の金先物の非商業(投機)部門のポジションは、23万4367枚の買い越し。今年のピークである9月24日終了週の31万5390枚から縮小傾向となっています。今年の最少は2月13日終了週の13万1168枚でしたので、もう少し縮小余地がありそうです。
長期的には金に対する強気見通しが依然として多く聞かれます。ただ、予測が付かない「トランプ劇場」ですので、短期的には報道やSNSでの発信で振らされる展開が続きそうです。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/28~2024/11/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は弱含み、供給懸念和らぐ>
今週のWTI原油先物価格は弱含みとなりました。地政学リスクの後退により原油の供給懸念が和らいだほか、「トランプ関税」による影響も意識されました。前週は一時70ドル大台を回復したものの、再び60ドル台後半に水準を下げて推移しています。産油国は減産継続で対応しようとしていますが、上値が重い展開が続いています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル66─71ドル
*中東情勢と「トランプ関税」
中東情勢の緊張感が和らぐのではないかとの期待感が高まっています。イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが停戦に合意し、27日から60日間の一時停戦に入りました。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザの停戦につながるとの期待もあるようです。
トランプ次期米大統領による関税強化では、対象品目から石油は除外されないと一部で報じられています。関税が引き上げられれば価格も高くなると考えがちですが、そのままでは他国産の原油に対し米国内での価格競争力が低下するので、両国の石油生産者は値下げするか、もしくはアジアなどに輸出を余儀なくされるとみられています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は、12月1日に開く閣僚級会合を前に、来年1月に開始する予定の有志国による自主減産縮小をさらに先送りすることを議論していると報じられています。11月3日の会合で、自主減産幅縮小を12月から1カ月延期すると決めたばかりですが、供給懸念解消で原油価格が弱含んでいるため、減産継続で価格を維持しようとしているようです。
米エネルギー情報局(EIA)が27日に発表した22日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比184.4万バレル減少しました。4週ぶりの減少です。一方、ガソリン在庫は331.4万バレルの増加、留出油は41.6万バレルの増加。まちまちの結果となり、原油相場に与える影響は限定的でした。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/29~2024/11/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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