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米長期金利は一段と上昇するか

2024/11/13 08:22

【ポイント】
・米長期金利は12日に大幅上昇、米ドル/円の推計値は155円台
・景気・物価情勢や「トランプ公約」の実現性に要注目か
【補足】利下げでも長期金利はなぜ上昇?

米長期金利(10年物国債利回り)はトランプ氏の勝利を受けて急騰した後、先週後半には落ち着きをみせていました。しかし、11日のベテランズデー(退役軍人の日、債券市場は休場)を挟んで、12日に再び大幅に上昇しました。

米ドル/円と日米長期金利差の最新の推計式に基づけば、12日時点の米ドル/円の推計値は155.49円です。
■12日付け「米ドル/円と日米長期金利の新たな関係」をご覧ください。

米ドル円と日米長期金利差

インフレ高進や財政赤字拡大の懸念
米長期金利上昇の背景は、やはりトランプ次期大統領の公約がインフレの高進や財政赤字の拡大につながるとの懸念でしょう。関税引き上げや移民規制の強化、さらにはFRBへの干渉(金融緩和圧力)などがインフレを押し上げる可能性があります。また、25年末に失効する18年トランプ減税(TJCA)の恒久化や法人税率の更なる引き下げが税収を減らす一方で、関税収入の増加では賄えないとの分析もあります。

12月FOMCの利下げは五分五分!?
12日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、12月17-18日のFOMCで0.25%の利下げが決定される確率を市場は5割弱織り込んでいます。これは、市場のメインシナリオが少し前までの「利下げ」から「据え置き」に変わったことを意味します(まだまだ微妙ですが・・)。

「景気の軟調が続いてインフレが2%の目標を達成、FRBが積極的に利下げを進める・・そうしたなかで長期金利は低下する」との市場の観測は修正を迫られているようです。

長期金利はさらに上昇するか
今後、経済・物価情勢の現状認識や見通し、「トランプ大統領」の公約の実現性などが精査され、状況によっては長期金利に一段と上昇圧力が加わるかもしれません。

超目先的には本日の10月米CPI(日本時間22:30発表)が注目されるほか、引き続きトランプ陣営から発せられる公式・非公式のメッセージが相場材料になるかもしれません。



【補足】利下げを受けて長期金利が上昇するのはなぜ??
11月1日のM2TV(YouTube)グローバルView「FRBの金融政策見通し 米ドル/円の行方」に以下のご質問をいただきました。

米FRBは前回利下げをしたのに(※)、10年債利回りはなぜ上昇したのでしょうか、解説をお願いします(文言は一部変更しています、ご容赦ください)。
※9月17-18日のFOMCでの0.50%利下げのこと

長期金利(10年債利回り)が上昇したことについて、ハッキリ言えるのは「売りたい力」の方が「買いたい力」よりも大きかったということだけです。国債の潜在的な供給が潜在的な需要を上回ったという言い方もできるでしょう(需要と供給は事後的には一致します)。

様々な理由が考えられます。

(1)材料出尽くしによるポジション調整
利下げ期待から国債を買っていたが、材料が出尽くした、あるいは次のFOMCまで時間があるので買いポジションをいったん手仕舞った。

(2)利下げは不適切と市場が判断
インフレ目標の達成が必ずしも見通せないなかでの利下げ、それも大幅な利下げがインフレの再燃につながる、景気を過熱させるとの懸念を生じさせた。

(3)足もとの金融政策とは直接関係のないファンダメ要因
トランプ氏勝利の見通しや実際の勝利によって財政赤字拡大が懸念されたことは、先行きの利下げ観測の後退にはつながるものの、足もとの金融政策には強く影響しなかった。

(4)ファンダメンタルズとは関係のない要因
他にも様々な要因がありえます。例えば、テクニカル指標が「売り」のサインを出した、国債を大量保有する機関投資家(銀行や生保、ファンドなど)が何らかの理由で資金の確保を迫られて、市場での売却が容易な国債を売却した、など。

9月中旬に米長期金利が上昇に転じたのは、上記(1)かもしれないし、10月に入って長期金利の顕著に上昇したのは(3)かもしれません。結局のところ、我々は後講釈でした要因(の影響力の大きさ)は分からないということかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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