マネースクエア マーケット情報

ゴールド急反落、原油は横ばい 米大統領選後の初期反応

2024/11/08 11:09

<金は急落、米金利上昇を嫌気>
今週(11/4─)の米ドル建て金先物は米大統領選挙の直後に急落しました。インフレ的な政策を掲げるトランプ氏が勝利したことで米金利が上昇。利息が付かない金には逆風となりました。金価格は過去最高値圏にあったことから利益確定売りも出やすかったとみられます。ただ7日の海外市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利下げを受けて反発、2,700ドルの大台を回復しています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,650─2,750ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,700─13,700円

*米大統領選後に何故、金は売られたか
5日に投開票された米大統領選後のマーケットでは各資産が大きく動きましたが、下落した資産で目立ったのが金でした。事前には、トランプ氏が勝利すれば景気刺激策による需要増期待で金価格は上昇するとの見方があったものの初期反応は逆方向。6日の市場では2%超の下落となりました。

金下落の直接的な要因の1つはインフレ懸念により米金利が上昇したこと。金利上昇は利息が付かない金にとってはネガティブ要因です。金価格は金利高の中で上昇してきましたが、過去最高値を連日更新するなど短期的な過熱感もあったことで、利益確定売りが出やすかったとみられています。

トランプ氏が減税や関税引き上げなどインフレ的な政策を打ち出していることに加え、米議会選挙で「トリプルレッド(大統領と両院が共和党)」の可能性が高まったことで、政策が通りやすくなったと受け止められたようです

株高も金の売り材料です。6日の米ダウは1,500ドルを超える大幅高。金には株安に備えたヘッジとしての需要がありますが、「トランプトレード」による株高が進みそうだとして、ヘッジ需要を減退させた可能性も考えられます。

ただ、トランプ氏の政策には両面の効果があります。景気刺激策は金利上昇要因ですが、経済活動も活発化させ産業用や宝飾用など金需要を高めます。インフレもしくは米金利上昇(米債価格の下落)は米ドルの信認低下と表裏一体ですので、代替資産としての金の存在価値を高めることになります。

大統領選挙が終わったことで、選挙自体に対する不透明感はなくなりましたが、前任時には外交でタカ派姿勢を示したトランプ氏です。地政学リスクの高まりやドル資産の凍結リスクなどに備える動きが、初期反応が一巡した後で強まるかもしれません。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/29~2024/11/7)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は横ばい、次の材料待ち>
今週のWTI原油先物価格はほぼ横ばいの動きとなりました。前週からの下値切り上げ傾向が続いているものの、70ドルの大台を回復した後は一進一退。米大統領選の結果が出た直後はやや荒い動きになったものの、足元は次の材料待ちという様相です。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル68─74ドル

*米大統領選の影響は
原油価格に関してトランプ氏の政策は、その影響が予想しにくい状況です。

同氏は、化石燃料(業界)に肩入れする姿勢を示しており、石油生産を拡大すると発言しています。一方で、石油需要の拡大を図ろうともしています。需要と供給、両方を増やすと言っているので、そのどちらが大きくなるかわかるまで価格の方向は読めません。

一方、トランプ氏は、インフレ抑制のためにエネルギー価格の上昇を抑制するとも述べています。石油価格は国際価格であり、米国の政策だけでは決まりませんが、現在最大の石油生産国は米国。米国の原油価格が上昇しなければ、他の産油国が減産を強化しても世界的な価格はそれほど上昇しない可能性があります。

原油はドル建てなので、米金利上昇でドル高が進めば、割高感が出て売られやすくなります。しかしその半面で、米金利上昇の要因が景気拡大であれば、原油需要が増加するとの期待が高まり、こちらは価格上昇要因になります。

前回のトランプ氏の大統領在任期間(2017年1月20日─21年1月20日)をみると、WTI原油先物価格は53.20ドルから52.94ドルとほぼ横ばい。大統領選で勝利した16年11月8日の選挙当日から「トランプトレード」は始まりましたが、その当日からみても18.1%の上昇にとどまっています。

今回は、中東やロシア・ウクライナの情勢が緊迫化している中でのトランプ大統領就任です。イスラエル寄りの姿勢を示す一方、ウクライナからはやや距離を取っています。地政学リスクがどのように変化するかは予断を許しません。足元の原油価格が横ばいで方向感に乏しいのは、こうした不透明感を反映している可能性がありそうです。

米エネルギー情報局(EIA)が6日に発表した1日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比214.9万バレル増加しました。ガソリン在庫は41.2万バレルの増加、留出油も294.7万バレルの増加となりました。前週の在庫減少から一転して、やや大幅な増加となり、需給が緩む可能性を意識させました。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/27~2024/11/7)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。


伊賀大記

執筆者プロフィール

伊賀大記(イガダイキ)

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ