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10月米雇用統計はわずか1.2万人増、それでも長期金利は上昇、米ドル/円は153円台へ

2024/11/02 07:00

【ポイント】
・10月NFPは1.2万人増、8-9月分は計11.2万人の下方修正
・ハリケーンの影響がどの程度かは不透明
・長期金利はポジション調整で反発、米ドルも上昇
・米大統領選、FOMCなどを経て相場地合いがどう変わるか??

米国の10月雇用統計はかなり弱い結果でした(後述)。米長期金利(10年物国債利回り)はいったん低下したもののすぐに反発、前日を約0.1%上回る4.38%まで上昇しました。米大統領選、FOMC、国債入札を控えてポジション調整が入ったとの指摘があります。米ドル/円は一時152円を割り込みましたが、153円近辺まで反発しました。

米長期金利

1日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は7日のFOMCでの利下げを8割超織り込んでいますが、12月の追加利下げに関しては五分五分とみているようです(ただし、政策金利先物は12月の利下げも8割程度織り込んでいます)。7日のFOMCでどのようなメッセージが出されるか要注目でしょう。

OIS

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10月雇用統計では、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)は前月比1.2万人増と、市場予想(10.0万人増)を大きく下回りました。これはひと月だけ大幅なマイナスとなった20年12月(24.3万人減)以来の弱さ。また、8-9月分は計11.2万人の下方修正。過去3カ月の平均は10.4万人増/月で、これは失業率を低下させない(=労働市場への新規参入者を吸収できる)ギリギリのペースとみられます。

NFP

もっとも、10月雇用統計はハリケーン「へリーン」と「ミルトン」ボーイングのストライキなど一時的な影響もあった模様です(※)。雇用の増加ペースはゆっくりと鈍化しているようですが、その基調を推し量るためには、11月雇用統計など今後のデータをチェックする必要がありそうです。

※NFPでは「自動車以外の輸送機器製造で前月比3.8万人減となっており、ほとんどがボーイングの影響だと考えられます。一方、ハリケーンについては労働省統計局も影響があったと認めているものの、それがどの程度だったかについては「定量化できない」としています(詳細は10月31日付け「雇用統計プレビュー+良好だった米GDP」の末尾「【補足】10月雇用統計の技術的プレビュー」をご覧ください)。

時間当たり賃金は前年比4.0%増で前月(4.0%⇒3.9%に改定)からやや加速、引き続きインフレ率(9月PCEコアは前年比2.7%)を上回りました(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比5.3%増で、昨年中盤から伸びがジリジリと高まっています。

時間当たり賃金

総賃金

家計調査に基づく失業率は4.1%と前月と同じ。ただ、少数点以下2ケタまでみると、9月の4.05%から10月の4.14%へとほぼ0.1%の上昇。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は62.6%と、4カ月ぶりに低下。労働参加率は昨年後半以降ほぼ横ばいで推移しており、ピークは62.8%です。コロナ・ショック後の回復(上昇)段階は終了したのかもしれません。

失業率

労働参加率
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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