ゴールドは高値更新後に一服、米大統領選も材料に 原油は上値重い
2024/10/25 10:23
<金は堅調、「押し目」は再び小幅か>
今週(10/21─)の米ドル建て金先物は堅調な展開となりました。米大統領選でトランプ候補が優勢との見方が強まる中、米金利が上昇していますが、インフレ再燃や財政悪化に対する懸念が金の買い材料となり、23日まで連日で過去最高値を更新。その後は利益確定売りに押される展開となっているものの、「押し目」が小さいのが最近の金相場の特徴であり、再上昇への期待も依然強い状況です。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,650─2,800ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,500─14,000円
*米大統領選と金(ゴールド)
米金利が上昇しているにもかかわらず、金が最高値を更新する展開となりました。教科書的に金利高は、利息の付かない金にはマイナス材料です。地政学リスクや米ドルの代替需要という大きな買い材料は続いているとしても、それなりに金利動向に反応してきたこれまでとは違う展開をどうみればいいのでしょうか。
考えられる1つの要因は、やはり米大統領選の影響です。トランプ候補の勝利だけでなく、上下両院とも共和党が過半数を占める可能性が出てきたとの見方が市場では強まっています。株価が上昇しにくくなっているのが、前回の「トランプトレード」とは違う点ですが、米金利や米ドルの上昇が目立ちます。
トランプ候補は、政策として歳出拡大や関税引き上げを掲げていますので、「トリプルレッド(大統領と両院が共和党)」となれば、インフレ再燃や財政悪化の可能性が高まるとの見方から、米金利が上昇しているとみられています。しかしインフレ懸念、つまりお金の価値が減価するという意味では、実物資産である金の価値は相対的に高まりますし、米国の財政悪化はドルの信認低下を通じて、代替資産としての金需要を高めます。
米大統領選は金にとって「功罪」両方の材料と言えるでしょう。米ドルが上昇すれば、米ドル建ての金価格は割高感が出るので、通常であればマイナス材料です。しかし、足元の強気が支配する金市場では、ネガティブ面の悪影響は強まらず、ポジティブな面がフォーカスされているようです。
米ドル高・円安が進むと、円建ての金価格は円安分、上乗せされます。ただ、円安が進めば、輸入物価上昇を通じた国内のインフレ圧力が高まることで、日銀の追加利上げや、財務省の為替介入に対する警戒感も強まるため、一方的な円安にはならない可能性に注意が必要でしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/26~2024/10/24)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は上値重い展開>
今週のWTI原油先物価格は上値が重い展開となりました。9月10日に付けた65ドルを底値に下値を徐々に切り上げており、相場に底堅さも見え始めてきましたが、足元は70ドル台前半で伸び悩んでいます。中東情勢の緊張感は依然高いものの、米原油在庫の増加や中国需要の減少懸念などが重石となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル68─73ドル
*中東、中国、米在庫
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は22日、エルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相と会談しました。イスラム組織ハマスの最高指導者シンワル氏が死亡した直後の訪問であり、パレスチナ自治区ガザ地区での停戦を促したとみられています。
しかし、原油価格の反応は特段見られず、マーケットでの停戦期待は高まっていないことを示しています。またイスラエルとレバノンの親イラン武装組織ヒズボラの間で激しい交戦が続いており、中東情勢を巡る緊張感は依然高いままです。
中国の需要減警戒も依然として原油価格の圧迫材料です。同国の7─9月期実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比で4.6%。市場予想の4.5%をやや上回りましたが、4─6月期の4.7%からは減速しており、2023年1─3月期の4.5%以来の低さとなりました。
中国は、財政支出や金融緩和など経済対策を矢継ぎ早に打ち出していますが、こちらもマーケットの反応を見る限りでは、期待感は今のところ限定的。石油輸出国機構(OPEC)など主要機関が原油需要見通しを引き下げているのは中国需要の減退予想が主因です。
米エネルギー情報局(EIA)が23日に発表した10月18日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比547.4万バレル増加しました。留出油は114万バレルの減少となりましたが、ガソリン在庫は87.8万バレルの増加。需給が緩む可能性を意識させました。
*WTI原油先物の日足(期間:2024/1/2~2024/10/24)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
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今週(10/21─)の米ドル建て金先物は堅調な展開となりました。米大統領選でトランプ候補が優勢との見方が強まる中、米金利が上昇していますが、インフレ再燃や財政悪化に対する懸念が金の買い材料となり、23日まで連日で過去最高値を更新。その後は利益確定売りに押される展開となっているものの、「押し目」が小さいのが最近の金相場の特徴であり、再上昇への期待も依然強い状況です。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,650─2,800ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:12,500─14,000円
*米大統領選と金(ゴールド)
米金利が上昇しているにもかかわらず、金が最高値を更新する展開となりました。教科書的に金利高は、利息の付かない金にはマイナス材料です。地政学リスクや米ドルの代替需要という大きな買い材料は続いているとしても、それなりに金利動向に反応してきたこれまでとは違う展開をどうみればいいのでしょうか。
考えられる1つの要因は、やはり米大統領選の影響です。トランプ候補の勝利だけでなく、上下両院とも共和党が過半数を占める可能性が出てきたとの見方が市場では強まっています。株価が上昇しにくくなっているのが、前回の「トランプトレード」とは違う点ですが、米金利や米ドルの上昇が目立ちます。
トランプ候補は、政策として歳出拡大や関税引き上げを掲げていますので、「トリプルレッド(大統領と両院が共和党)」となれば、インフレ再燃や財政悪化の可能性が高まるとの見方から、米金利が上昇しているとみられています。しかしインフレ懸念、つまりお金の価値が減価するという意味では、実物資産である金の価値は相対的に高まりますし、米国の財政悪化はドルの信認低下を通じて、代替資産としての金需要を高めます。
米大統領選は金にとって「功罪」両方の材料と言えるでしょう。米ドルが上昇すれば、米ドル建ての金価格は割高感が出るので、通常であればマイナス材料です。しかし、足元の強気が支配する金市場では、ネガティブ面の悪影響は強まらず、ポジティブな面がフォーカスされているようです。
米ドル高・円安が進むと、円建ての金価格は円安分、上乗せされます。ただ、円安が進めば、輸入物価上昇を通じた国内のインフレ圧力が高まることで、日銀の追加利上げや、財務省の為替介入に対する警戒感も強まるため、一方的な円安にはならない可能性に注意が必要でしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/26~2024/10/24)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は上値重い展開>
今週のWTI原油先物価格は上値が重い展開となりました。9月10日に付けた65ドルを底値に下値を徐々に切り上げており、相場に底堅さも見え始めてきましたが、足元は70ドル台前半で伸び悩んでいます。中東情勢の緊張感は依然高いものの、米原油在庫の増加や中国需要の減少懸念などが重石となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル68─73ドル
*中東、中国、米在庫
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は22日、エルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相と会談しました。イスラム組織ハマスの最高指導者シンワル氏が死亡した直後の訪問であり、パレスチナ自治区ガザ地区での停戦を促したとみられています。
しかし、原油価格の反応は特段見られず、マーケットでの停戦期待は高まっていないことを示しています。またイスラエルとレバノンの親イラン武装組織ヒズボラの間で激しい交戦が続いており、中東情勢を巡る緊張感は依然高いままです。
中国の需要減警戒も依然として原油価格の圧迫材料です。同国の7─9月期実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比で4.6%。市場予想の4.5%をやや上回りましたが、4─6月期の4.7%からは減速しており、2023年1─3月期の4.5%以来の低さとなりました。
中国は、財政支出や金融緩和など経済対策を矢継ぎ早に打ち出していますが、こちらもマーケットの反応を見る限りでは、期待感は今のところ限定的。石油輸出国機構(OPEC)など主要機関が原油需要見通しを引き下げているのは中国需要の減退予想が主因です。
米エネルギー情報局(EIA)が23日に発表した10月18日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比547.4万バレル増加しました。留出油は114万バレルの減少となりましたが、ガソリン在庫は87.8万バレルの増加。需給が緩む可能性を意識させました。
*WTI原油先物の日足(期間:2024/1/2~2024/10/24)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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