ゴールドは上値追い、連日の過去最高値更新 原油は増産観測で反落
2024/09/27 11:00
<金は上値追いの展開>
今週(9/23─)の米ドル建て金先物は上値追いの展開となりました。過去最高値を連日更新し、26日には取引時間中に2,700ドルの大台に到達しています。米国の追加利下げ期待や中国の景気刺激策が買い材料です。ただ、止まらない上昇に心理的な過熱感も強まっており、利益確定売りによる短期的な調整への警戒も出ています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,550─2,750ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,600─13,000円
* 割高・割安が判断しにくい金価格
金は割高・割安が判断しにくい商品です。企業のように利益を生むわけではないので、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーション指標が存在しません。為替のように購買力平価といったモノサシもありません。
チャートでみると、米ドル建て金先物の移動平均線からの上方乖離率は、25日線からは約4%ですが、200日線からは約17%となっており、この点からは過熱感が強まっていると言えそうです。ただ、これも相場が上昇基調を強めているときは、乖離がどんどん開くため、テクニカル的にも買い時・売り時を判断するのは非常に難しいと言えます。
金利は利息が付かないため金利動向に反応します。ただ、あくまで短期的もしくは中期的な金利変動(見通し)への反応であって、大きなトレンドや金利の水準からは説明しにくい動きを示します。米連邦準備理事会(FRB)は今月、約4年半ぶりに利下げを決めましたが、長い目で見ると、米金利が上昇する中でも、金価格は上昇していました。
足元の金価格上昇の一因は、さらなる米金融緩和期待です。しかし、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、米長期金利はむしろ上昇しています。本来なら金価格には逆風であるはずですが、おかまいなしに先行きの米金利低下期待を材料に最高値を更新し続けています。
また、地政学リスクや中国の景気刺激策なども現在は買い材料となっていますが、中東情勢が不透明なのは以前からですし、不動産バブル崩壊などで深刻な状況にある中国経済が同対策で持ち直すかには疑問の声もあります。
東西分断によるドルの代替需要や安全資産需要など、大きな流れが金価格上昇の背景にあると考えるしかないのですが、割高・割安を測る「尺度」が乏しいため、投資家にとっては不安が高まりやすい商品と言えるかもしれません。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/20~2024/9/26)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は60ドル台後半に反落>
今週のWTI原油先物価格は反落しました。24日に3週間ぶり高値となる72ドル台を一時付けた後、60ドル台後半まで軟化しています。サウジアラビアが12月から増産する方針と一部で報道されたほか、リビアからの原油供給をめぐる懸念が後退。ハリケーン「へリーン」の予想進路がずれたことで、メキシコ湾岸の石油・ガス関連の施設への影響が回避されるとの見方も強まりました。ただ、イスラエルとレバノンなど緊張感が高まる中東地域もあり予断は許しません。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル65─72ドル
*サウジ増産やリビア生産再開の可能性
フィナンシャル・タイムズ(FT)は26日、サウジアラビアが12月から増産する用意があると報じました。1バレル100ドルの目標を放棄し、増産で市場シェアを回復するねらいがあるとしています。
一方、国連は25日、リビア中央銀行の危機に関して国連リビア支援ミッション(UNSMIL)が促進した新たな協議の後、下院と国家高等評議会の代表が、同銀行の新しい指導者の任命について妥協点に達したと発表しました。
同国の中銀はリビアの石油収入を管理する唯一の法的組織であり、石油収入の支配権を巡る対立が収まれば、石油生産が再開する可能性があります。
ただ、中東地域の緊張感が消えたわけではありません。イスラエルは、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ拠点への攻撃を強めており、地上侵攻に発展する可能性もあります。地上侵攻に至れば、数万人の戦闘員を擁するとされるヒズボラと全面的な衝突になりかねません。
米エネルギー情報局(EIA)が25日に発表した20日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比447.1万バレルの大幅減少。2週連続の減少となりました。ガソリン在庫は153.8万バレル、留出油も222.7万バレルと、いずれも大幅な減少になり、需給タイト化を意識させる動きとなっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2024/1/2~2024/9/26)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
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今週(9/23─)の米ドル建て金先物は上値追いの展開となりました。過去最高値を連日更新し、26日には取引時間中に2,700ドルの大台に到達しています。米国の追加利下げ期待や中国の景気刺激策が買い材料です。ただ、止まらない上昇に心理的な過熱感も強まっており、利益確定売りによる短期的な調整への警戒も出ています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,550─2,750ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,600─13,000円
* 割高・割安が判断しにくい金価格
金は割高・割安が判断しにくい商品です。企業のように利益を生むわけではないので、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーション指標が存在しません。為替のように購買力平価といったモノサシもありません。
チャートでみると、米ドル建て金先物の移動平均線からの上方乖離率は、25日線からは約4%ですが、200日線からは約17%となっており、この点からは過熱感が強まっていると言えそうです。ただ、これも相場が上昇基調を強めているときは、乖離がどんどん開くため、テクニカル的にも買い時・売り時を判断するのは非常に難しいと言えます。
金利は利息が付かないため金利動向に反応します。ただ、あくまで短期的もしくは中期的な金利変動(見通し)への反応であって、大きなトレンドや金利の水準からは説明しにくい動きを示します。米連邦準備理事会(FRB)は今月、約4年半ぶりに利下げを決めましたが、長い目で見ると、米金利が上昇する中でも、金価格は上昇していました。
足元の金価格上昇の一因は、さらなる米金融緩和期待です。しかし、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、米長期金利はむしろ上昇しています。本来なら金価格には逆風であるはずですが、おかまいなしに先行きの米金利低下期待を材料に最高値を更新し続けています。
また、地政学リスクや中国の景気刺激策なども現在は買い材料となっていますが、中東情勢が不透明なのは以前からですし、不動産バブル崩壊などで深刻な状況にある中国経済が同対策で持ち直すかには疑問の声もあります。
東西分断によるドルの代替需要や安全資産需要など、大きな流れが金価格上昇の背景にあると考えるしかないのですが、割高・割安を測る「尺度」が乏しいため、投資家にとっては不安が高まりやすい商品と言えるかもしれません。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/20~2024/9/26)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は60ドル台後半に反落>
今週のWTI原油先物価格は反落しました。24日に3週間ぶり高値となる72ドル台を一時付けた後、60ドル台後半まで軟化しています。サウジアラビアが12月から増産する方針と一部で報道されたほか、リビアからの原油供給をめぐる懸念が後退。ハリケーン「へリーン」の予想進路がずれたことで、メキシコ湾岸の石油・ガス関連の施設への影響が回避されるとの見方も強まりました。ただ、イスラエルとレバノンなど緊張感が高まる中東地域もあり予断は許しません。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル65─72ドル
*サウジ増産やリビア生産再開の可能性
フィナンシャル・タイムズ(FT)は26日、サウジアラビアが12月から増産する用意があると報じました。1バレル100ドルの目標を放棄し、増産で市場シェアを回復するねらいがあるとしています。
一方、国連は25日、リビア中央銀行の危機に関して国連リビア支援ミッション(UNSMIL)が促進した新たな協議の後、下院と国家高等評議会の代表が、同銀行の新しい指導者の任命について妥協点に達したと発表しました。
同国の中銀はリビアの石油収入を管理する唯一の法的組織であり、石油収入の支配権を巡る対立が収まれば、石油生産が再開する可能性があります。
ただ、中東地域の緊張感が消えたわけではありません。イスラエルは、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ拠点への攻撃を強めており、地上侵攻に発展する可能性もあります。地上侵攻に至れば、数万人の戦闘員を擁するとされるヒズボラと全面的な衝突になりかねません。
米エネルギー情報局(EIA)が25日に発表した20日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比447.1万バレルの大幅減少。2週連続の減少となりました。ガソリン在庫は153.8万バレル、留出油も222.7万バレルと、いずれも大幅な減少になり、需給タイト化を意識させる動きとなっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2024/1/2~2024/9/26)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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