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ゴールドは上値重い、原油70ドル割れ 「金とダイヤモンド」

2024/09/06 10:09

<金は最高値圏から水準下げて推移>
今週(9/2─)の米ドル建て金先物は上値の重い展開となりました。過去最高値圏から水準をやや下げ2,500ドル前半で推移しています。8月米ISM製造業景況指数など米景気指標が弱かったことから景気減速による需要減への懸念が強まりました。米金利が低下したことは本来なら金に追い風ですが、株安によるリスク回避の方が今は影響が大きいようです。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,450─2,600ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,300円

*第2四半期、OTC投資と中銀需要が支え
今年の第2四半期(4─6月)の金市場では、OTC(店頭取引)投資と中央銀行による積極的な購入が継続しました。金価格の高騰で宝飾品需要が減退したものの、下半期も引き続き両主体の需要が金価格を支えるとみられています。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金の総需要に、供給と総需要の差額分から推計されるOTC投資を加えると、第2四半期は前年同期比4%増の1,258トンとなり、2000年以降で最高となりました。

その内訳をみると、宝飾品需要は前年同期比17%減の410トンでしたが、産業用のテクノロジー向けが同11%増の81トンになりました。

地金投資やETF(上場投資信託)などの金投資需要は前年同期比1%増の254トンでした。ETFは4月に大きな資金流出になったものの、5月と6月は資金流入となっています。

一方、OTC投資は同53%増の329トンとなり、第2四半期として過去最高となりました。世界的な富裕層による購入がその要因とみられています。

世界の中央銀行による金購入は、急増した第1四半期との比較では39%減でしたが、前年同期比では6%増の183トンとなりました。今年の1─6月上半期では前年同期比5%増の483トンと過去最大。年間で1000トンを超えた22年と23年を上回るペースです。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/21~2024/9/5)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物・日足チャート
(出所:TradingView)



<原油は軟調、約9カ月ぶり安値>
今週のWTI原油先物価格は軟調な展開となりました。景気減速に対する懸念が強まったほか、リビアの石油生産再開への思惑が加わり、4日の市場では一時68ドル後半まで下落。2023年12月13日以来となる70ドル台割れとなりました。中東情勢は依然として予断を許さないほか、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が供給拡大を2カ月延期することで合意しましたが、石油価格反転のきっかけにはなりませんでした。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル66─73ドル

*リビアの石油生産再開か
リビアの東西両勢力は3日、中央銀行の新総裁を共同で任命することに合意したと伝えられました。同国の中銀はリビアの石油収入を管理する唯一の法的組織であり、石油収入の支配権を巡る対立が収まれば、石油生産が再開する可能性があります。

一方、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区では、1日から3日まで子供たちへのポリオワクチン接種のための戦闘休止期間に入っていましたが、停戦への見込みはまだ立っていません。
イスラエルでは大規模デモやゼネストが開かれるなど停戦を求める声が強まっていたものの、ネタニヤフ首相はガザから撤退しないとの姿勢をみせています。

米エネルギー情報局(EIA)が5日に発表した8月30日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比687.3万バレルの減少。3週連続の減少で市場予想を上回る減少となりましたが、米景気減速への懸念が強く、石油価格を反転上昇させる材料にはなっていません。ガソリン在庫は4週ぶり増加、留出油は2週ぶりに小幅減少でした。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/20~2024/9/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物・日足チャート

(出所:TradingView)


<今週のトピック:金とダイヤモンド>
アフリカのボツワナで史上2番目に大きいダイヤモンドが発掘されました。8月21日に発表したカナダの鉱山会社ルカラ・ダイヤモンドによると大きさは2,492カラット。ソフトボール並みのサイズで、小説「蒼穹の昴」(浅田次郎著)に出てくる龍玉(ロンユイ)のようです。

ダイヤモンドの和名は金剛石。金と同じように希少性があり、ともに投資対象商品でもありますが、金とダイヤモンドでは違いもあります。

金相場には取引所別など複数あるものの、基本は純金相場という1つの値段です。一方、ダイヤモンドの相場は複雑で「4C(Cut、Color、Clarity、Carat)」の4つで品質が決まるため、「標準価格」というのが見出しにくいのです。

両方とも、とても丈夫な物質ですが、金は叩いてもよほどの高温でない限り燃やしてもなくなりません。溶けても冷えれば固まります。ダイヤモンドは最も堅い鉱物ですが衝撃には弱いため叩くと砕けますし、火事だと燃えて焼失するおそれもあります。

ただ、ダイヤモンドは軽く、広い保存場所も必要ありません。1億円の価値は、金であれば8,547g(1g=11,700円で計算)ですが、ダイヤモンドは1カラット0.2gなので10カラットでも2gにしかすぎません。上記のようにダイヤの価格は複雑で1億円の価値の換算は難しいですが、10カラットの高品質ダイヤなら3つほどあれば1億円にはなるでしょう。ただ、盗難のリスクも大きくなります。

ダイヤモンドは金よりも産出国が限られ、大手企業の寡占度も高い市場ですが、それゆえ需給が安定しやすいと言われています。一方、金相場は最近、上昇基調を続けているものの、過去には大きな下落局面もありました。

ただ、人工ダイヤモンドの品質が近年向上し、天然ダイヤモンド価格の下落要因になっています。ダイヤモンドの需要先は約8割が工業用とされており、天然でなくても品質がほぼ同じであれば問題がないためです。一方、人工的に金を作るには非常にコストがかかるため商業化のレベルには達していません。

その輝きで古(いにしえ)から人々を魅了してきた金とダイヤモンドですが、投資商品としてはかなり違いがありますね。

ダイヤモンド画像
(画像出典:ルカラ・ダイヤモンド)


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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