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日銀は「円高」をサポートするか

2024/07/24 07:39

【ポイント】
・7月上旬の為替介入(?)以降も「円高」が進行
・背景は日銀が金融政策の正常化を進めるとの観測
・日銀は国債買入れ減額計画とともに利上げを決定するか

「円高」が進行しています。7月11日と12日に本邦当局による為替介入が実施された可能性が高いですが、週明け15日以降も円が上昇。Bloombergが集計する主要32通貨の騰落率でみれば、7月15-23日の期間で円の上昇率がトップです。米ドルは5位。

主要通貨騰落率

米ドル/円の細かな動きをみても、米ドル/円が目立って下落するのは、東京時間か、欧州時間の開始前後のことが多く、やはり「円」主導であるとみることができそうです。

米ドル円 ティック

背景は、来週30-31日の金融政策決定会合で、日銀が金融政策の正常化を進めるとの見方が強まっていることでしょう。前回6月の会合で、日銀は国債買入れの減額計画を7月に決定すると予告しました。植田総裁は会見で、「減額する以上、相応の規模となる」と述べました。9-10日に日銀が開催した債券市場参加者会合では、銀行や証券、生保などから様々な意見が出たようですが、日銀はどのようなペースで国債買入れを減額するでしょうか。

そして、より注目されるのは追加利上げがあるかどうか。国債買入れ減額と利上げを同時に行うのは市場への影響が大きすぎるとの見方があります。また、日銀内部では、足もとで個人消費に勢いがなく(※)、4月以降の賃上げによって個人消費が盛り上がるか確認したいとの考えもあるようです。

※実質GDPのベースで、個人消費は今年1-3月期まで4四半期連続で前期比マイナス。しかも今年1-3月期は前期比年率‐3.0と大幅なマイナスでした。

23日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が31日の利上げ(0.10%幅)を織り込む確率は44%となっており、市場のメインシナリオは「据え置き」です。Bloombergが集計したエコノミスト48人のアンケートによれば、31日の利上げ予想は約3割(14人)にとどまりました。ただ、9割以上が「早ければ7月もありうる」と回答したとのこと。

17日には河野デジタル相が円安是正のために日銀は利上げすべきとの旨の発言をしました。また、22日には茂木自民党幹事長が段階的な利上げの検討も含めて金融政策正常化の方針を明確に打ち出すべきだと述べました。

足もとでは日銀の利上げに対する期待が高まっているようです。果たして、日銀は追加利上げに踏み切って「円高」をサポートするでしょうか。今年4月に続いて公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の経済・物価見通しも注目されます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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