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トランプ・トレードと金融政策

2024/07/16 07:41

【ポイント】
・トランプ勝利予想で、株価・金利・米ドルが上昇
・パウエルFRB議長は2%の物価目標達成に自信を深めた
・「トランプ政権」の政策を考慮すれば、利下げに慎重になる可能性も

15日の米国市場では、主要株価指数、長期金利(10年物国債利回り)、米ドル(実効レート)が上昇しました。13日の暗殺未遂事件を受けて、トランプ氏が大統領選で勝利するとの見方が強まったこと(※)が一つの背景です。

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※15日に始まった共和党大会で、トランプ氏が正式に大統領候補に指名されました。トランプ氏は18日に指名受諾演説を行う予定です。トランプ氏は副大統領候補にオハイオ州選出のJ.D.バンス上院議員を選びました。バンス上院議員は39歳、「ヒルビリー・エレジー」の著者で、ポピュリスト政策の支持者。

株式市場では、いわゆるトランプ・トレードが盛り上がりました。トランプ・メディア&テクノロジー・グループが一時50%高と急騰(終値で31%高)。その他にも、「トランプ政権」下で恩恵を受けるとみられる刑務所運営会社、暗号資産採掘会社、保守系メディア、銃器メーカー、テスラ(マスク氏がトランプ氏の支持を表明)などが上昇しました。

トランプ株

他方、パウエルFRB議長は講演でのインタビューで、過去3カ月の経済データでインフレが目標の2%に向かっていると自信を深めたと述べました。OIS(翌日物金利スワップ)によれば、9月の利下げが100%、年内3回目の利下げが5割強で市場に織り込まれました。利下げ観測の高まりも株価の上昇要因になったとみられます。

米利下げ見通し

もっとも、やや長い目でみれば、トランプ・トレードと利下げ観測は相容れない点もあります。トランプ氏の政策は、減税や財政支出の増大を通じて景気を刺激する可能性があります。また、移民の抑制は労働市場のタイト化を、制裁関税や輸入制限などはインフレ圧力につながるかもしれません。

大統領選の投票日が接近し、「トランプ政権」誕生の可能性が高まるならば、FRBは自らの予測に上述した政策の影響をある程度盛り込む必要が出てくるかもしれません。その場合、FRBは利下げに慎重になるとも考えられます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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