ゴールド上昇、中国銀購入ゼロもETFに資金流入 原油は底堅い
2024/07/12 16:29
<金は上昇基調継続>
今週(7/8─)の米ドル建て金先物は上昇基調が継続しました。2カ月連続で中国人民銀行の金購入がゼロとなりましたが、金ETF(上場投資信託)には資金流入が継続。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言や6月米消費者物価指数(CPI)で、市場の9月米利下げ観測もより強固になってきており、金利の付かない金にとっては追い風となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,350─2,500ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,800─12,900円
*中国人民銀行の購入ゼロ・ETFに資金流入、2カ月連続
中国人民銀行が7日に発表した外貨準備のデータによると、同銀行が保有する金地金は6月末時点で7,280万トロイオンス(2,264トン)と前月比横ばい。2カ月連続で購入がありませんでした。
人民銀が購入を止めている理由は定かではありませんが、金価格が史上最高値圏で推移していることや、人民銀行の外貨準備高全体でみて金の比率が過去最高の4.9%を占めるまでに拡大したこともあり、いったん様子見になっているとの指摘が出ています。
ただ、市場では依然として「購入停止は一時的」との見方も少なくありません。有事に備えて(ドル資産を凍結されてもいいように)米国債などドルから金などに資産をシフトさせる動きは継続するとみられているためです。
一方、金ETFには2カ月連続で資金が流入しました。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、6月の金ETFは約14億ドル(17.5トン)の資金流入。5月に1年ぶりの資金流入となり、6月も北米を除くすべての地域で資金流入がみられています。
今年1─6月の上半期では、世界の金ETFは約67億ドル(120トン)の資金流出となり、2013年以来最悪となりました。しかし、直近2カ月の資金流入と金価格の上昇によって、運用資産総額は年初来8.8%増加しています。
金ETFは昨年まで3年連続で資金流出となっていました。その大きな要因は金利上昇でしたが、インフレ鈍化に伴い、カナダや欧州(ECB)が利下げに踏み切ったほか、FRBも9月利下げ開始の観測が市場で強まっており、足元の金ETFへの資金流入の背景になっているとみられています。
*円建て金先物の日足(期間:2023/10/30~2024/7/11)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は底堅い展開、夏場の需給改善に期待>
今週のWTI原油先物価格は底堅い展開となりました。米テキサス州に上陸したハリケーン「ベリル」による石油生産への影響は限定的となり、原油供給懸念が後退したことで一時80ドル台まで下落。しかしその後は、米在庫減少による需給改善期待や米利下げ観測の強まりで一時83ドル台まで値を戻しています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル80─85ドル
*米原油在庫は2週連続減少
米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した5日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比344.3万バレルの減少。前週の1215.7万バレルに続き2週連続の減少となりました。留出油は4週ぶりに増加しましたが、ガソリンは2週連続で減少しました。
石油輸出国機構(OPEC)は10日発表の月報で、世界石油需要を2024年は前年比で日量225万バレル、25年は日量185万バレル、それぞれ増えるとする従来見通しを据え置きました。24年の世界経済成長率見通しを従来の2.8%から2.9%に引き上げたほか、夏場の原油需要増加の見通しを示しています。
世界需要見通しは発表主体でかなりの違いがあり、そのうち強気な見方で知られるOPECが「夏のドライブや休暇シーズンに米国で予想される車や飛行機などによる活発な移動により、輸送用燃料の需要の押し上げが見込まれる」と指摘しています。
一方、パウエルFRB議長の2日間にわたる議会証言では、米景気の過熱感が和らぎ、労働市場がバランスを取り戻しつつあるとして、インフレ鎮静化に自信を見せました。さらなるデータの蓄積が必要との姿勢も崩しませんでしたが、利下げ開始に一歩近づいた印象です。
原油にとって、米利下げ観測の背景である景気減速は懸念要因ですが、利下げ観測自体はプラス要因です。どちらが優先されるかは、そのときの相場次第ですが、今のところ足元は利下げ観測の方を好感するマーケットのムードとなっているようです。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/27~2024/7/11)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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今週(7/8─)の米ドル建て金先物は上昇基調が継続しました。2カ月連続で中国人民銀行の金購入がゼロとなりましたが、金ETF(上場投資信託)には資金流入が継続。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言や6月米消費者物価指数(CPI)で、市場の9月米利下げ観測もより強固になってきており、金利の付かない金にとっては追い風となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,350─2,500ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,800─12,900円
*中国人民銀行の購入ゼロ・ETFに資金流入、2カ月連続
中国人民銀行が7日に発表した外貨準備のデータによると、同銀行が保有する金地金は6月末時点で7,280万トロイオンス(2,264トン)と前月比横ばい。2カ月連続で購入がありませんでした。
人民銀が購入を止めている理由は定かではありませんが、金価格が史上最高値圏で推移していることや、人民銀行の外貨準備高全体でみて金の比率が過去最高の4.9%を占めるまでに拡大したこともあり、いったん様子見になっているとの指摘が出ています。
ただ、市場では依然として「購入停止は一時的」との見方も少なくありません。有事に備えて(ドル資産を凍結されてもいいように)米国債などドルから金などに資産をシフトさせる動きは継続するとみられているためです。
一方、金ETFには2カ月連続で資金が流入しました。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、6月の金ETFは約14億ドル(17.5トン)の資金流入。5月に1年ぶりの資金流入となり、6月も北米を除くすべての地域で資金流入がみられています。
今年1─6月の上半期では、世界の金ETFは約67億ドル(120トン)の資金流出となり、2013年以来最悪となりました。しかし、直近2カ月の資金流入と金価格の上昇によって、運用資産総額は年初来8.8%増加しています。
金ETFは昨年まで3年連続で資金流出となっていました。その大きな要因は金利上昇でしたが、インフレ鈍化に伴い、カナダや欧州(ECB)が利下げに踏み切ったほか、FRBも9月利下げ開始の観測が市場で強まっており、足元の金ETFへの資金流入の背景になっているとみられています。
*円建て金先物の日足(期間:2023/10/30~2024/7/11)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は底堅い展開、夏場の需給改善に期待>
今週のWTI原油先物価格は底堅い展開となりました。米テキサス州に上陸したハリケーン「ベリル」による石油生産への影響は限定的となり、原油供給懸念が後退したことで一時80ドル台まで下落。しかしその後は、米在庫減少による需給改善期待や米利下げ観測の強まりで一時83ドル台まで値を戻しています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル80─85ドル
*米原油在庫は2週連続減少
米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した5日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比344.3万バレルの減少。前週の1215.7万バレルに続き2週連続の減少となりました。留出油は4週ぶりに増加しましたが、ガソリンは2週連続で減少しました。
石油輸出国機構(OPEC)は10日発表の月報で、世界石油需要を2024年は前年比で日量225万バレル、25年は日量185万バレル、それぞれ増えるとする従来見通しを据え置きました。24年の世界経済成長率見通しを従来の2.8%から2.9%に引き上げたほか、夏場の原油需要増加の見通しを示しています。
世界需要見通しは発表主体でかなりの違いがあり、そのうち強気な見方で知られるOPECが「夏のドライブや休暇シーズンに米国で予想される車や飛行機などによる活発な移動により、輸送用燃料の需要の押し上げが見込まれる」と指摘しています。
一方、パウエルFRB議長の2日間にわたる議会証言では、米景気の過熱感が和らぎ、労働市場がバランスを取り戻しつつあるとして、インフレ鎮静化に自信を見せました。さらなるデータの蓄積が必要との姿勢も崩しませんでしたが、利下げ開始に一歩近づいた印象です。
原油にとって、米利下げ観測の背景である景気減速は懸念要因ですが、利下げ観測自体はプラス要因です。どちらが優先されるかは、そのときの相場次第ですが、今のところ足元は利下げ観測の方を好感するマーケットのムードとなっているようです。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/27~2024/7/11)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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