英仏選挙と米雇用統計、独立記念日
2024/07/01 12:30
【今週のポイント】
・仏RNが過半数の議席を確保するか、英国では労働党が政権奪取へ
・流動性の低下しそうな市場は米雇用統計など経済指標にどう反応するか
・RBAの利上げ観測が一段と強まるか
6月30日に実施されたフランス議会選挙第1回投票では、ルペン氏の極右・RN(国民連合)が最多得票となったようです。2位が左派連合、3位がマクロン大統領の与党連合とのこと。週明けのアジア市場ではユーロが反発。RNが一部で懸念されたほど支持が伸びずに、議席の過半数獲得は困難になったとの見方が背景です。7月7日の決選投票では、マクロン大統領の与党連合と左派連合が極右RNの躍進を阻止すべく協力できるかが重要なカギを握りそうです。
7月4日の英国議会選挙では、野党労働党の圧勝が予想されており、14年ぶりに政権を奪取するのがほぼ確実のようです。
今週は、米ISM製造業景況指数、同非製造業(サービス)指数、雇用統計などの重要な経済指標が発表されます。また、FRBが注視する労働市場関連では、JOLTS(労働動態調査)やADP統計、金融政策に関しては、FOMC議事録もあります。4日は独立記念日で株・債券は休場。週後半は市場参加者が減少して流動性が低下する可能性があります。相場変動が増幅される可能性には要注意でしょう。
1-3日にはシントラ(ポルトガル)でECB中央銀行フォーラムが開催されます。ラガルド総裁だけでなく、パウエルFRB議長、ウィリアムズNY連銀総裁、クガニャゴSARB(南アフリカ中銀)総裁の発言機会もあり、金融政策に関連して何らかのメッセージが発信されるかもしれません。<西田>
******
豪ドルが堅調に推移しています。6月28日に、豪ドル/円は07年12月以来16年半ぶりの高値を記録し、豪ドル/NZドルは1カ月半ぶりの高値をつけました。RBA(豪中銀)の利上げ観測が強まったことが、豪ドルが堅調な要因です。今週はRBA議事録や豪州の小売売上高が発表されます。それらがRBAの利上げ観測を一段と強める内容になれば、豪ドル/円や豪ドル/NZドルはさらに上値を試す可能性があります。
カナダドルは5日に発表されるカナダの6月雇用統計が材料になりそうです。カナダの雇用統計の結果を受けてBOC(カナダ中銀)の利下げ観測が強まる場合、カナダドルが軟調に推移すると考えられます。
南アフリカでは、ラマポーザ大統領の2期目の就任式が行われた6月19日以降も、組閣に向けてANC(南アフリカ民族会議)とDA(民主同盟)などとの間で協議が行われてきました。ANCとDAは閣僚人事で合意し、ラマポーザ大統領は6月30日に閣僚を発表しました。外交政策や経済政策をめぐってANCとDAには隔たりがあるものの、連立政権の閣僚が決まったことは、南アフリカランドにとってプラスになりそうです。
メキシコペソ/円は6月12日に一時8.185円へと下落しました。与党連合が憲法改正(司法制度改革など)を推進するとの懸念が、メキシコペソ安の主因となりました。メキシコペソ/円はその後持ち直したものの、憲法改正をめぐるロペスオブラドール大統領やシェインバウム次期大統領の発言には注意が必要です。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~163.500円>
先週後半に米PCE(個人消費支出)など弱めの指標を受けて低下した長期金利(10年物国債利回り)は、大幅に上昇して週を終えました。PCEの後に消費者信頼感など強めの指標が出たことがきっかけでしたが、期末(月末・四半期末・前期末)のポジション調整が大きく影響したようです。そうであれば、長期金利はいったん低下しそうです。ただ、ISM指数や雇用統計など重要指標が発表される一方で、独立記念日前後には流動性の低下も予想されるため、大きな相場変動には要注意かもしれません。
4-6月期の日銀短観は、大企業製造業の現況・先行きがともに改善しました。日銀の7月金融政策決定会合では国債買入れ減額計画が決定される見通しですが、利上げ観測(OIS=翌日物金利スワップに基づけば、先週末時点で5割強)は高まるでしょうか。
仮にFRBの利下げ観測が後退する一方で、日銀の利上げ観測が強まらなければ、米ドル/円には一段の上昇圧力が加わりそうです。その場合に、本邦当局(財務省・日銀)からけん制の動きや実際の介入実施はあるでしょうか。とりわけ、流動性の低下しそうな週後半は要注意かもしれません。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.84000ポンド~0.85500ポンド>
7日のフランス議会選挙決選投票に向けての各政党の動きが大きな相場材料になるかもしれません。極右・RNが第1回投票から支持を上積みして、あるいは他政党と協力して議席の過半数を確保すれば、RNのバルデラ党首が首相に就任する可能性が高く、その場合は22年ぶりのコアビタシオン(同居※)となります。
※大統領と首相(議会)の所属政党が異なる状況。外交や安全保障は大統領の専管事項である一方、国内政策については議会に優先権があります。ただ、対外関連でも(ウクライナ支援など)議会が支出を承認する必要があるため、大統領は議会にも配慮する必要があります。
RNが公約を実現しようとすれば、財政赤字の拡大懸念や、EUやユーロ圏と対立するとの懸念が強まり、ユーロに強い下押し圧力が加わるかもしれません。逆に、決選投票でRNが伸び悩めば、安心感からユーロは買われそうです。
7月4日の英国議会選挙では14年ぶりの労働党政権が誕生しそうです。もっとも、労働党はスターマー党首のもとで中道寄りにシフトしており、選挙結果によほどのサプライズがない限り、市場の反応は限定的かもしれません。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08500NZドル~1.10300NZドル>
豪ドル/NZドルは6月28日に一時1.09585NZドルへと上昇し、1カ月半ぶりの高値をつけました。26日に発表された豪州の5月CPI(消費者物価指数)の強い結果を受け、RBA(豪中銀)の利上げ観測が強まったことが、豪ドル/NZドルを押し上げました。5月CPIは前年比4.0%と、市場予想の3.8%を上回り、23年11月以来6カ月ぶりの高い伸びとなりました。
今週は、2日にRBA議事録(6/17-18政策会合分)、3日に豪州の5月小売売上高が発表されます。6月のRBA会合時の声明では、「インフレの上振れリスクに引き続き警戒する必要がある」、「インフレ率を合理的な時間枠内で目標に戻す最も確実な(政策)金利の道筋は依然として不透明であり、(RBA)理事会は何も決定しておらず、何も排除していない」などとされました。また、ブロック総裁は会合後の会見で、「インフレの上振れリスクを警戒している」と強調し、会合では利上げも議論されたことを明らかにしました。
RBA議事録や小売売上高が市場のRBAの利上げ観測を一段と強める内容になれば、豪ドル/NZドルは堅調に推移しそうです。豪ドル/NZドルの上値メドとして、1.10246NZドル(5/7高値)が挙げられます。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35500カナダドル~1.38500カナダドル>
今週は米国の経済指標が多く発表され(雇用統計、ISMの製造業と非製造業の景況指数など)、またカナダの雇用統計が発表されます。それらの経済指標を受けて、市場の米FRBやBOC(カナダ中銀)の金融政策見通しがどのように変化するかが、米ドル/カナダドルの動向に影響を与えそうです。
BOCの次回政策会合は7月24日です。次回会合について市場の見方は“据え置き”と“利下げ”で割れています。カナダの雇用統計が市場予想と比べて弱い結果になれば、BOCの利下げ観測が強まりそうです。その一方で、米経済指標を受けてFRBの利下げ観測が後退する場合、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わると考えられます。<八代>
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。