欧州債務危機の火種??
2024/06/18 08:42
【ポイント】
・ドイツとフランスの長期金利差が拡大
・フランスの政治不安・財政赤字拡大懸念が背景
・新しいフランス議会でどのような経済政策が提案されるか
欧州議会選の直後からドイツとフランスの長期金利(10年物国債利回り)の格差が拡大しています(ドイツ<フランス)。マクロン大統領が下院を解散し、選挙でルペン氏の極右・RN(国民連合)が第1党になる可能性が高いからです。

22年大統領選挙におけるルペン氏の公約に照らせば、RNが財政赤字の拡大につながる経済政策を提案すると懸念されています。それらは、年金改革(退職年齢の引き下げなど)、一部VAT(付加価値税)引き下げ、公共放送の受信料廃止、高速道路の料金引き下げなどでしょう。一方で、財源は、移民受け入れ抑制による支出削減、不正受給の摘発強化などにとどまりそうです。
ドイツとフランスの国債はいずれもユーロ建て。中央銀行はECBであり、インフレ率は直近(今年4月の前年比)で両国とも2.4%とユーロ圏と同じです。そのため、利回り差は両国政府に対する市場の信任の差を強く反映していると考えられます。上述したように、フランスで財政赤字が拡大する、規律が緩むとの懸念が強まっているためです。
ドイツとフランスの長期金利差は10-12年の欧州債務危機(※)当時と比較すれば、まだ小幅です。ただし、フランスの財政赤字が拡大し、ユーロ圏の厳しい財政ルールに対してフランスが強く反発するような事態となれば(起こるとしてもまだまだ先でしょうが)、新たな債務危機が懸念されるかもしれません。市場の反応に驚いたRN関係者からは野心的な政策は先送りする(27年大統領選挙を見据えて?)との発言も聞こえてきますが、果たしてどうなるでしょうか。
(※)08年のリーマンショック後の経済危機において欧州各国の財政状況が著しく悪化。09年にはギリシャの粉飾財政が明らかになりました。厳しい緊縮財政を求められたギリシャがユーロ圏を離脱する(グレグジット)との懸念が浮上。財政状況の悪いスペインやイタリアの国債も売り込まれました。債務危機が終息したのは、ドラギECBが「ユーロを守るために何でもする(≒危機に陥った国の国債を買う)」と宣言し、また救済基金が設立されたからでした。
・ドイツとフランスの長期金利差が拡大
・フランスの政治不安・財政赤字拡大懸念が背景
・新しいフランス議会でどのような経済政策が提案されるか
欧州議会選の直後からドイツとフランスの長期金利(10年物国債利回り)の格差が拡大しています(ドイツ<フランス)。マクロン大統領が下院を解散し、選挙でルペン氏の極右・RN(国民連合)が第1党になる可能性が高いからです。

22年大統領選挙におけるルペン氏の公約に照らせば、RNが財政赤字の拡大につながる経済政策を提案すると懸念されています。それらは、年金改革(退職年齢の引き下げなど)、一部VAT(付加価値税)引き下げ、公共放送の受信料廃止、高速道路の料金引き下げなどでしょう。一方で、財源は、移民受け入れ抑制による支出削減、不正受給の摘発強化などにとどまりそうです。
ドイツとフランスの国債はいずれもユーロ建て。中央銀行はECBであり、インフレ率は直近(今年4月の前年比)で両国とも2.4%とユーロ圏と同じです。そのため、利回り差は両国政府に対する市場の信任の差を強く反映していると考えられます。上述したように、フランスで財政赤字が拡大する、規律が緩むとの懸念が強まっているためです。
ドイツとフランスの長期金利差は10-12年の欧州債務危機(※)当時と比較すれば、まだ小幅です。ただし、フランスの財政赤字が拡大し、ユーロ圏の厳しい財政ルールに対してフランスが強く反発するような事態となれば(起こるとしてもまだまだ先でしょうが)、新たな債務危機が懸念されるかもしれません。市場の反応に驚いたRN関係者からは野心的な政策は先送りする(27年大統領選挙を見据えて?)との発言も聞こえてきますが、果たしてどうなるでしょうか。
(※)08年のリーマンショック後の経済危機において欧州各国の財政状況が著しく悪化。09年にはギリシャの粉飾財政が明らかになりました。厳しい緊縮財政を求められたギリシャがユーロ圏を離脱する(グレグジット)との懸念が浮上。財政状況の悪いスペインやイタリアの国債も売り込まれました。債務危機が終息したのは、ドラギECBが「ユーロを守るために何でもする(≒危機に陥った国の国債を買う)」と宣言し、また救済基金が設立されたからでした。
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