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ゴールドは底堅い展開、中国金購入停止は一時的か 原油はリバウンド一服

2024/06/14 12:20

<金は大幅安から戻り歩調に>
今週(6/10─)の米ドル建て金先物は底堅い展開となりました。12日発表の5月米消費者物価指数(CPI)が下振れて米金利が低下。利息が付かない金にはフォローとなり、上値はやや重いものの7日の大幅安からの戻り歩調が続いています。中国人民銀行の金購入が5月にストップしたことはいったん嫌気されたものの、購入停止は一時的との見方も多いようです。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,250─2,400ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,200円

*中国人民銀行の金購入停止は一時的か
中国人民銀行が7日に発表したデータによると、同銀行が保有する金地金は5月時点で7,280万トロイオンス(2,264トン)と前月比で横ばい。横ばいだったのは2022年10月以来で、約1年半続いていた金購入がストップしたことを示しています。

ただ、マーケットでは中国の金購入停止は価格上昇によるもので、タイミングをみて再び買い始めるとの見方が大勢です。米ドル建て金先物価格は、5月20日に2,450ドルを付け、史上最高値を更新していました。

これまで中国が金を増やしてきたのは米ドルからのシフトです。有事(ドル資産凍結)に備えて、外貨準備の中身を徐々に米ドルから金にシフトしているとみられています。中国の米国債保有額は1─3月までのデータしかありませんが、同期間では過去最大規模の売り越し(エージェンシー債※含む)でした。
※政府系機関において発行される債券。一般的に国債に次ぐ高い信用性を持つ。

外貨準備高全体でみて金は過去最高の4.9%を占めるまでに拡大したこともあり、いったん様子見しているのかもしれません。ただ、世界的な緊張感が和らいだわけではなく、むしろ緊張感が増す中、中国の米ドルから金へのシフトはまだ続くとの見方が市場では多く聞かれます。

中国人民銀行の金保有高

*金ETFには1年ぶり資金流入
一方、5月は金ETF(上場投資信託)に資金が流入しました。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、5月の金ETFは8.2トン(約5億2,900万ドル相当)の資金流入がありました。資金流入となったのは昨年5月以来、1年ぶりです。

金ETFは昨年まで3年連続で資金流出となっていましたが、その大きな要因は金利上昇でした。世界的なインフレを背景に各国中銀が利上げを継続。個人や機関投資家が、利息の付かない金から、利回りが上昇した国債や、インフレに強い株式などに資金をシフトしたとみられています。

しかし、その流れも変わるかもしれません。インフレは粘着質でしつこいですが、カナダや欧州(ECB)が利下げに踏み切るなど金利上昇の流れにも変化がみられ始めています。利下げの一因でもある景気減速懸念は金需要にもマイナスですが、安全保障や金利動向の面からみれば、金にはまだしっかりした需要が継続する可能性がありそうです。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/13~2024/6/13)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油はリバウンド一服>
今週のWTI原油先物価格はリバウンド一服となりました。前週4日に付けた72ドル台から、12日に一時79ドル台まで回復しましたが、大台手前でスピードダウン。主要機関から順調な需要予測が示されたほか、5月米消費者物価指数(CPI)が下振れて米金利が低下したこともプラス材料でしたが、足元では米石油在庫が増加するなど需要面で強弱材料が交錯しています。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル74─81ドル

*需要材料はまちまち
米エネルギー情報局(EIA)は11日、月次の短期エネルギー見通しを公表し、24 年の世界の石油消費量の予測を日量1億300万バレルに引き上げました。前回予想から日量約20万バレルの上方修正です。25年の予想も日量20万バレル上方修正し、日量1億450万バレルとなりました。

石油輸出国機構(OPEC)は11日に発表した月報で、24年の世界石油需要が前年比で日量225万バレル、25年は日量185万バレル増加する従来見通しを据え置きました。据え置きではありますが、堅調な需要増予測を変えなかったということで、市場ではポジティブに受け止められています。

一方、足元の米在庫は需給が緩む状況となっています。米エネルギー情報局(EIA)が12日に発表した7日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比373.0万バレル増加。市場の減少予想に反し、2週連続の増加となりました。ガソリンは3週連続、留出油は4週連続で在庫が増加しています。

世界銀行が今年の世界成長率の見通しを上方修正したように、堅調な夏場の輸送需要から、今年第3四半期の石油市場では供給不足状態になるとの見方も出ています。しかし、その兆しは今のところ、まだ表れていないようです。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/12~2024/6/13)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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