ゴールドが上昇再開、原油は下げ止まりか 「遺灰の金」
2024/06/07 06:58
<金は調整一巡、FOMC待ちで様子見も>
今週(6/3─)の米ドル建て金先物は上昇再開となりました。前週までの調整が一巡し、2,300ドル台後半まで値を戻しています。弱めの経済指標が続いたことによる米利下げ期待の再燃のほか、カナダや欧州の利下げが上昇要因ですが、11─12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、週後半は様子見ムードも出てきました。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,300─12,500円
*再び強まる米利下げ期待
景気減速や労働需給の緩和を示すデータが増えてきました。5月の米ISM製造業景気指数が2カ月連続で50割れ、4月の米雇用動態調査(JOLTS)でも求人件数が約3年ぶりの少なさとなるなど、これまでの利上げ効果がようやく表れてきた印象です。
市場では、これらのデータを受けて米連邦準備理事会(FRB)による利下げを再び織り込み始めました。9月の利下げ確率が上昇したほか、12月の追加利下げ確率も高まり、年内2回予想が再び増えています。5月末に4.6%台だった10年物米金利は足元で4.2%台まで低下してきました。
ただ、以前は「Bad news is good news」だったのですが、最近は「Bad news is bad news」となる相場展開もみられるようになってきました。弱めの経済指標で金利が低下しても、株などのリスク資産市場がそれに反応せず、景気減速の方を懸念して、売りが優勢になる場面が増えてきたのです。
金の長期上昇トレンドは変わらないとみて、価格下落局面を押し目買いのチャンスとみることもできますが、マーケット全体がリスクオフ状態になるような場合は、短期的には金も売られやすいので、注意が必要です。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/17~2024/6/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は切り返し、利下げ期待で>
今週のWTI原油先物価格は大幅下落後に反発しました。原油増産による需給悪化懸念や、景気減速懸念が売り要因となり、一時は今年2月以来となる72ドル台まで下落。しかし、景気減速懸念は米利下げ観測も強めたほか、カナダや欧州の利下げもあり、週後半は75ドル台まで戻して下げ渋りの展開となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル73─79ドル
*需給懸念
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は2日の閣僚級会合で、協調減産を2025年末まで延長することで合意しました。しかし、加盟8カ国による自主的な減産は10月から段階的に解除する余地を残しました。
OPECプラスは22年終盤から減産を実施しており、現在の削減規模は世界需要の約5.7%に相当する日量586万バレル。このうち協調減産は日量366万バレル、自主減産は同220万バレルとなっており、自主減産が解除されれば、供給増による原油価格下押し圧力がかかるのではないかとみられています。
ただ、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が6日、市場が弱含めば「OPECプラスは段階的縮小の一時停止または撤回もできる」との考えを示したと伝わっており、まだ予断を許しません。
米在庫も需給が緩む状況となっています。米エネルギー情報局(EIA)が5日に発表した31日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比123.3万バレルの増加。前週の415.6万バレル減からの反動があったかもしれませんが、ガソリンは2週連続、留出油は3週連続で在庫が増加。景気減速を示す経済指標が相次いでいることもあり、レジャーシーズン到来による需要増期待はやや後退しているようです。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/9/29~2024/6/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<今週のトピック、遺灰に含まれる金>
これも金価格高騰の影響なのでしょうか。火葬後の遺灰に含まれる金などの貴金属を取り出して売却する自治体が増えているそうです。遺灰には、金歯や銀歯のほか、人工関節やペースメーカーにもパラジウムなど貴金属が含まれており、精錬すれば、一定の売却益が得られるためです。
岐阜県多治見市は今年4月、火葬後の遺灰に含まれる貴金属を取り出して売却する方針を決めたと発表しました。市民アンケートの結果(賛成70%、どちらかと言えば賛成25%)に基づき、火葬場の施設整備などの財源として活用するとしています。
遺骨を骨壺に収めた後に残る残骨灰は、もともと事業者にお金を払って処理を委託していた自治体が多かったのですが、金など貴金属の価格上昇に伴い、この残骨灰の中に含まれる有価金属を抽出して売却する事業者が出てきました。
事業者が貴金属を抽出した後の遺灰処理が不透明な場合もあり、ならばいっそのこと抽出を前提に事業者と契約し、精錬された貴金属を売却する方が明確であると考える自治体が増えてきたようです。また、遺灰は大量に出るため、墓地が不足する中、すべての遺灰を埋葬できるスペースが十分にないという事情も背景にあるとされています。
一方、残骨灰の扱いや所有権は誰に属するのかという問題も浮上してきました。火葬後の燃焼炉に溜まっていく残骨灰は誰のものかは判別できませんが、故人の家族なのか、自治体なのか、はたまた寺院なのか。遺灰という非常に微妙で、かつ金(カネ)が絡む話なだけに、センシティブな議論となりそうです。
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今週(6/3─)の米ドル建て金先物は上昇再開となりました。前週までの調整が一巡し、2,300ドル台後半まで値を戻しています。弱めの経済指標が続いたことによる米利下げ期待の再燃のほか、カナダや欧州の利下げが上昇要因ですが、11─12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、週後半は様子見ムードも出てきました。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,300─12,500円
*再び強まる米利下げ期待
景気減速や労働需給の緩和を示すデータが増えてきました。5月の米ISM製造業景気指数が2カ月連続で50割れ、4月の米雇用動態調査(JOLTS)でも求人件数が約3年ぶりの少なさとなるなど、これまでの利上げ効果がようやく表れてきた印象です。
市場では、これらのデータを受けて米連邦準備理事会(FRB)による利下げを再び織り込み始めました。9月の利下げ確率が上昇したほか、12月の追加利下げ確率も高まり、年内2回予想が再び増えています。5月末に4.6%台だった10年物米金利は足元で4.2%台まで低下してきました。
ただ、以前は「Bad news is good news」だったのですが、最近は「Bad news is bad news」となる相場展開もみられるようになってきました。弱めの経済指標で金利が低下しても、株などのリスク資産市場がそれに反応せず、景気減速の方を懸念して、売りが優勢になる場面が増えてきたのです。
金の長期上昇トレンドは変わらないとみて、価格下落局面を押し目買いのチャンスとみることもできますが、マーケット全体がリスクオフ状態になるような場合は、短期的には金も売られやすいので、注意が必要です。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/17~2024/6/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は切り返し、利下げ期待で>
今週のWTI原油先物価格は大幅下落後に反発しました。原油増産による需給悪化懸念や、景気減速懸念が売り要因となり、一時は今年2月以来となる72ドル台まで下落。しかし、景気減速懸念は米利下げ観測も強めたほか、カナダや欧州の利下げもあり、週後半は75ドル台まで戻して下げ渋りの展開となっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル73─79ドル
*需給懸念
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は2日の閣僚級会合で、協調減産を2025年末まで延長することで合意しました。しかし、加盟8カ国による自主的な減産は10月から段階的に解除する余地を残しました。
OPECプラスは22年終盤から減産を実施しており、現在の削減規模は世界需要の約5.7%に相当する日量586万バレル。このうち協調減産は日量366万バレル、自主減産は同220万バレルとなっており、自主減産が解除されれば、供給増による原油価格下押し圧力がかかるのではないかとみられています。
ただ、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が6日、市場が弱含めば「OPECプラスは段階的縮小の一時停止または撤回もできる」との考えを示したと伝わっており、まだ予断を許しません。
米在庫も需給が緩む状況となっています。米エネルギー情報局(EIA)が5日に発表した31日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比123.3万バレルの増加。前週の415.6万バレル減からの反動があったかもしれませんが、ガソリンは2週連続、留出油は3週連続で在庫が増加。景気減速を示す経済指標が相次いでいることもあり、レジャーシーズン到来による需要増期待はやや後退しているようです。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/9/29~2024/6/6)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<今週のトピック、遺灰に含まれる金>
これも金価格高騰の影響なのでしょうか。火葬後の遺灰に含まれる金などの貴金属を取り出して売却する自治体が増えているそうです。遺灰には、金歯や銀歯のほか、人工関節やペースメーカーにもパラジウムなど貴金属が含まれており、精錬すれば、一定の売却益が得られるためです。
岐阜県多治見市は今年4月、火葬後の遺灰に含まれる貴金属を取り出して売却する方針を決めたと発表しました。市民アンケートの結果(賛成70%、どちらかと言えば賛成25%)に基づき、火葬場の施設整備などの財源として活用するとしています。
遺骨を骨壺に収めた後に残る残骨灰は、もともと事業者にお金を払って処理を委託していた自治体が多かったのですが、金など貴金属の価格上昇に伴い、この残骨灰の中に含まれる有価金属を抽出して売却する事業者が出てきました。
事業者が貴金属を抽出した後の遺灰処理が不透明な場合もあり、ならばいっそのこと抽出を前提に事業者と契約し、精錬された貴金属を売却する方が明確であると考える自治体が増えてきたようです。また、遺灰は大量に出るため、墓地が不足する中、すべての遺灰を埋葬できるスペースが十分にないという事情も背景にあるとされています。
一方、残骨灰の扱いや所有権は誰に属するのかという問題も浮上してきました。火葬後の燃焼炉に溜まっていく残骨灰は誰のものかは判別できませんが、故人の家族なのか、自治体なのか、はたまた寺院なのか。遺灰という非常に微妙で、かつ金(カネ)が絡む話なだけに、センシティブな議論となりそうです。
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