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重要なカギを握る米CPI

2024/05/13 11:27

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【今週のポイント】
・米CPIなどを受けて、FRBの金融政策見通しはどう変化するか
・英米株価が上昇すれば、米ドル/円や英ポンド/円に上昇圧力か
・豪経済指標でRBAの利上げ観測は後退するか

米ドル/円は3日発表の4月米雇用統計がやや弱めだったことで一時151円台まで下落しましたが、先週(5/6- )はジリジリと上昇し、155円台後半で週を終えました。本邦当局による為替介入に対する警戒感がある一方、日米金利差に照らせば米ドル/円は上昇するのが自然との見方が根強くありました。

一方、米ドルは円以外の通貨に対して軟調。雇用統計以降も、ISM非製造業指数やミシガン大学消費者信頼感指数、さらに新規失業保険申請件数などの米経済指標が総じて弱めとなり、FRBの利下げ観測が強まったためです。ただ、英ポンドはBOE(英中銀)の政策会合の結果がハト派的だった(※)との判断で対米ドルでも下落しました。

※金融政策の据え置きが決定されましたが、9人の委員のうち2人が利下げを支持。また、ベイリー総裁は記者会見で6月利下げに向けて前向きの発言をしました。

今週の主要経済指標・イベント

今週(5/13- )はCPI(消費者物価指数)をはじめ、米経済指標が多く発表されます。それらを受けて市場の米金融政策見通しがどう変化するか、大いに注目でしょう。FRBの利下げ観測が後退して、米ドル/円が上値を追う展開となれば、本邦当局による為替介入にも注意する必要が出てきそうです。

先週はNYダウが上昇して3月に実現しなかった史上初の4万ドルをうかがう展開となっています。米株が上昇すれば、米ドル/円にも上昇圧力が加わるかもしれません。一方で、株価が上昇すれば、市場心理がリスクオンに傾いている証左であり、資源・新興国通貨にとってプラスに作用しそうです。<西田>

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豪ドル/米ドルやNZドル/米ドル、米ドル/カナダドルは、CPIなど米国の経済指標に大きく影響を受けそうです。米経済指標の結果を受けてFRBの利下げ観測が後退する場合、豪ドル/米ドルとNZドル/米ドルには下落圧力が、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わると考えられます。

豪ドル/円やNZドル/円などのクロス円は、米ドル/円の動向にも影響を受けます。米ドル/円が上昇を続ける場合、本邦当局の対応(米ドル売り・円買いの介入の有無)に注目です。

BOM(メキシコ中銀)は9日の会合で政策金利を11.00%に据え置きました。BOMはインフレ率見通しを修正し、メキシコのCPI(消費者物価指数)上昇率が目標の3%に近づく時期の見通しを3月時点の「25年4-6月期」から「25年10-12月期」へと2四半期後ズレさせました。BOMの追加利下げの時期も後ズレする可能性があり、そのことはメキシコペソにとってプラスと考えられます。

メキシコペソ/円については、他のクロス円と同様に米ドル/円が大きく下落するような状況にならなければ、上値を試す展開が想定されます。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:152.000円~158.000円>
10日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(確率5割超)は、「FRBは9月と12月に0.25%ずつの利下げ」です。ただし、9月までの利下げ確率は8割、12月までの追加利下げの確率は6割程度です。したがって、今後の材料次第では利下げ開始の観測が11月に後ズレしたり、年内の追加利下げがメインシナリオから外れたりする可能性があります。その場合は、米ドルにプラスに作用しそうです。

重要なカギを握るのが15日に発表される米国の4月CPIでしょう。CPIは3月まで3カ月連続で市場予想を上振れしました。1日のFOMC声明文では「ここ数カ月、物価目標への進展が止まっている」との指摘がありました。4月CPIが市場予想を上回ったり、インフレの再加速を示唆する内容であったりすれば、FRBの利下げ観測が後退して米ドルを支援する可能性がありそうです。

一方、先週末に明らかになった日銀4月会合の「主な意見」はタカ派的でした。日本の企業物価やGDP、鉱工業生産などの指標などを受けて、利上げ観測や長期国債買入れの減額予想が強まるならば、円の上昇要因となるかもしれません。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<英ポンド/円 予想レンジ:192.000円~198.000円>
欧州株が好調です。とりわけ、英国のFTSE100は23年2月につけた史上最高値を今年4月下旬に更新してから上げ足を速めています。日本や米国の株価がIT株にけん引されて今年の早い段階で最高値を更新していたのと比べて英国株の出遅れ感がありました。しかし、IT株の勢いが鈍るなかで、エネルギー・金融・医薬品などを多く含むFTSE100がキャッチアップしてきました。足もとの株価の上昇ピッチがやや速すぎる印象がありますが、株価の堅調が続くならば、英ポンド/円にも上昇圧力が加わりそうです。

注意すべきは、本邦当局による「円買い」介入でしょう。仮に、米ドル/円が上昇して160円に迫るような状況になれば、どこかで為替介入が入るかもしれません。その場合は、英ポンド/円のみならず、クロス円の通貨ペアは軒並み下落するとみられます。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08500NZドル~1.10500NZドル>
7日のRBA(豪中銀)会合の結果を受けて豪ドル/NZドルは軟化しました。RBAの声明やブロック総裁の会見によってRBAの利上げ観測が後退したためです(豪ドルにとってマイナス)。

声明では、金融政策の先行きについて「何も決定しておらず、何も排除していない」と改めて表明されました。豪州の1-3月期のCPI(消費者物価指数)が市場予想を上回る結果だったことで市場ではRBAは利上げバイアスを復活させるとの観測がありましたが、前回3月の会合の時と同じでした。ブロック総裁は会合後の会見で、「インフレ率を目標に戻すうえで、(現在の政策)金利は適切な水準だ」と指摘。「必ずしも再び引き締め(追加利上げ)が必要になるとは考えていない」と述べました。

今週は、豪州の賃金コスト指数(1-3月期分。15日)や雇用統計(4月分。16日)が発表されます。それらが弱い結果になれば、RBAの利上げ観測は一段と後退する可能性があります。その場合、豪ドル/NZドルは一段と上値が重くなりそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.38500カナダドル>
今週はカナダの3月卸売売上高や4月住宅着工件数などが発表されますが、材料としては力不足の感があります。米ドル/カナダドルは、米国の4月CPIなどの米ドルサイドの材料に反応しやすい地合いになりそうです。CPIなどの結果を受けてFRBの利下げ観測が後退する場合、米ドルが堅調に推移して、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすくなると考えられます。

原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は8日、一時1バレル=76.89ドルへと下落。中心限月のザラ場ベースとしては、3月11日以来およそ2カ月ぶりの安値をつけました。原油価格が下落を続ける場合、材料になるかもしれません。原油安はカナダドルにとってマイナス(米ドル/カナダドルの上昇要因)になると考えられます。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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