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ゴールドは調整終了か、円建て金は介入警戒 原油も戻り歩調

2024/05/10 10:52

<金は再び強含み、弱めの米雇用指標で>
今週(5/6─)の米ドル建て金先物は上値が重い動きでしたが、週末にかけて再び強含みの展開となっています。新規失業保険申請者数など米雇用指標が弱めとなり、米金利が低下。利息の付かない金の相対的魅力が増しました。2,300ドル台半ばにある25日移動平均線を明確に抜けてくれば調整終了のサインになるかもしれません。一方、円建て金価格は日本の為替介入が焦点となっています。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,200円

*円建て金価格と為替介入
円建て金価格に影響を与えるのが米ドル円の水準です。円安になれば円建て価格もその分上昇しますが、円高になれば下がります。日本の現物投資家が売買するのは基本的に円建ての金価格なので、最近の米ドル円の乱高下にやきもきしている方も多いでしょう。

米ドル円を乱高下させた1つの要因が為替介入です。為替介入の有無を財務省が明らかにしていないので、あくまで市場の観測になりますが、4月29日と5月2日に円買い・ドル売り介入が実施されたとみられています。

その規模は、これも市場の推計ですが、29日に5兆円超、2日に3兆円超と合計9兆円近くになった可能性があります。しかし、米ドル円は29日に一時34年ぶりとなる1ドル160円を付けた後、2度の介入(観測)を経て3日には一時151円後半まで下落しましたが、その後再び円安基調に回帰。足元では155円台まで戻しています。

日米金利差などファンダメンタルズが円安側に傾いている中では、巨額介入であっても、相場の基調を変えるのは容易ではありません。基調を変えるには、やはり米側の材料が欠かせないと言えそうです。3日に米ドル円が急落したのも、その日発表された4月米雇用統計が弱かったという材料が加わったからでした。

こうした中、15日発表の4月米消費者物価指数(CPI)に注目が集まっています。2022年9月と10月に日本が為替介入を実施した際も、米ドル円はなかなか下がらなかったのですが、11月10日に発表された10月米CPIが市場予想を下回ったことで「CPIショック」が起き、米ドル円は146円台半ばから140円割れ寸前まで急落しました。

市場予想を上回る強さであれば「逆CPIショック」が起きる可能性もありますが、いずれにせよ、国内の金投資家にとっても注目イベントとなりそうです。

*青・右スケール:円ドル建て金先物の日足、黄・左スケール:米ドル円の日足(期間:2023/9/7~2024/5/9)
円ドル建て金先物と米ドル/円(日足)
(出所:TradingView)


<原油は戻り歩調、中東情勢が再び緊張>
今週のWTI原油先物価格は戻り歩調となりました。8日に一時1バレル76ドル台まで下落しましたが、中東情勢が再び緊迫化しているほか、原油需給の引き締まりも意識され、足元は79ドル台後半まで値を戻しています。80ドル付近にある200日移動平均線を上抜けてくれば、テクニカル的には上昇基調に弾みが付きそうです。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル77─82ドル

*米原油在庫が減少
米エネルギー情報局(EIA)が8日に発表した3日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫が前週比136.2万バレル減となりました。前週が726.5万バレル増と予想外の大幅増だった反動が出た可能性があるほか、ガソリンと留出油の在庫は小幅ながら増加していますが、レジャーシーズンに向けて需給がタイト化する可能性もあります。

*中東情勢は再び緊張
中東情勢は再び緊張してきました。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの休戦協議は、ハマスはひとまず休戦案を受け入れたものの、イスラエルは要求とかけ離れていると拒否。イスラエルはガザ最南部ラファへの軍事作戦を限定的ながら開始しています。

米国は、イスラエルへの弾薬供給を一時停止したと表明。イスラエルの国際的な孤立感が強まりつつありますが、それがイスラエルをさらに強硬路線に走らせるおそれもあるため予断を許しません。ラファで民間人の犠牲者が増えた場合、イランなど周辺国の出方にも関心が集まります。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/9/14~2024/5/9)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足
(出所:TradingView)


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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