騙されない投資家22~原油価格の歴史
2024/04/10 07:56
投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。過去の相場を知ることは投資判断に役立つはずです。今回は原油価格の歴史を取り上げます。過去レポートは#騙されない投資家で表示されるので、ぜひご活用ください。
【ポイント】
・第4次中東戦争とイラン革命が2度の石油ショックを引き起こした
・90年湾岸危機では原油価格急騰も短期間で反落
・11年アラブの春ではリビアなどの生産減で原油価格高止まり
・中東の戦火が拡大して産油国に波及しないか要注意
WTI原油先物価格は5日、一時1バレル=87.63ドルと、イスラエル・パレスチナの紛争が始まった昨年10月以来の水準に達しました。1日に在シリアのイラン大使館が攻撃を受け、イランとイスラエルの間で緊張が高まっています。今後の情勢次第では、原油価格が一段と上昇する可能性もあります。そうなれば、各国の物価に上昇圧力が加わって、金融政策の運営が難しくなるかもしれません。
昨年10月10日配信の「中東の紛争と原油価格の歴史」をアップデートして、再掲します。
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73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。
86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、原油価格はすぐに反落。多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。

01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後は同年9月のリーマン・ショックを受けて急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました。同年4月20日にはマイナス40.32ドルを記録。原油の貯蔵場所に困った保有者がおカネを払ってでも引き取ってもらいたいという異例の事態が起こりました。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが(22年3月に130.50ドル)、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは80ドル台で推移しています。
【ポイント】
・第4次中東戦争とイラン革命が2度の石油ショックを引き起こした
・90年湾岸危機では原油価格急騰も短期間で反落
・11年アラブの春ではリビアなどの生産減で原油価格高止まり
・中東の戦火が拡大して産油国に波及しないか要注意
WTI原油先物価格は5日、一時1バレル=87.63ドルと、イスラエル・パレスチナの紛争が始まった昨年10月以来の水準に達しました。1日に在シリアのイラン大使館が攻撃を受け、イランとイスラエルの間で緊張が高まっています。今後の情勢次第では、原油価格が一段と上昇する可能性もあります。そうなれば、各国の物価に上昇圧力が加わって、金融政策の運営が難しくなるかもしれません。
昨年10月10日配信の「中東の紛争と原油価格の歴史」をアップデートして、再掲します。
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73年10月に勃発した第4次中東戦争ではOPEC(石油輸出国機構)がイスラエル支援国に対して禁輸措置を採り、原油価格はそれまでの1バレル=2-3ドルから同10-12ドルまで上昇、第1次石油ショックを引き起こしました。79年にはイラン革命が起こり、80年にイラン・イラク戦争もあったため、原油価格は30-40ドルまで上昇、第2次石油ショックを招きました。
86年にはサウジアラビアが市場シェア拡大を狙って原油を増産したため(いわゆるオイル・グラット)、原油価格は急落しました。
90年8月にはイラクがクウェートに侵攻して湾岸危機が発生。原油価格は約2倍(20ドル⇒40ドル)に急騰しました。ただ、米国がリセッション(景気後退)入りしたこともあって、原油価格はすぐに反落。多国籍軍によるイラク攻撃(湾岸戦争)が開始された91年1月には危機前の水準である20ドル前後まで下落しました。

01年のIT株バブル崩壊を受けて、米FRBが積極的な金融緩和を進めたため、住宅バブルが発生。過剰な流動性は原油市場にも流入、産油国の生産設備の老朽化による供給能力の低下もあって、原油価格は08年7月に一時147ドル台をつけました。その後は同年9月のリーマン・ショックを受けて急落。
09年後半に世界経済が回復すると原油価格も上昇に転じました。そして、11年には「アラブの春」が起き、リビアの原油生産が減少。リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の継続もあって2010年代前半の原油価格は100ドル前後で推移しました。
14年後半以降、世界経済が減速する一方で、非OPECが原油を増産したことで、原油価格は大幅に下落。20年春にはコロナ・ショックで一時急落しました。同年4月20日にはマイナス40.32ドルを記録。原油の貯蔵場所に困った保有者がおカネを払ってでも引き取ってもらいたいという異例の事態が起こりました。その後は世界的な金融緩和のもとで原油価格が100ドルを超える場面もありましたが(22年3月に130.50ドル)、22年春ごろからの主要中銀のアグレッシブな利上げにより60ドル台まで下落。足もとでは80ドル台で推移しています。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
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