マネースクエア マーケット情報

ゴールドが一段高、原油はレンジ突破 「インドの結婚式と総選挙」

2024/03/29 12:34

<金は終値で高値更新、米利下げ期待後退には警戒>
今週(3/25─)の米ドル建て金先物は強含みの展開となっています。過去最高値を更新した21日は取引時間中に一瞬急騰しただけでしたが、週終盤に一段高となり、終値で2,200ドル台前半に乗せてきました。ただ、短期的な過熱感が強く、米利下げ期待後退への警戒も根強いことから、重要経済指標の発表を控え、いったん様子見になる可能性もありそうです。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,170─2,300ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:10,600─11,200円

*FRBからタカ派的発言も
米利下げ期待は利息の付かない金にとってポジティブ要因です。19─20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言がハト派的と受け止められ金価格も過去最高値を更新しました。

しかし、米物価指標が高止まりしていることもあり、市場のFRBのタカ派化警戒は根強く残っています。米ボルティモアでの橋崩落事故も輸送コスト増につながるとの懸念が出ています。

前週のFOMCで示されたFF金利見通しでは、今年3回の利下げ予想は変わらずでした。しかし、これは中央値(端から数えて真ん中の数字)であって、加重平均でみると4.70%から4.80%に上昇しています。3回利下げの予想は6人から9人に増えたものの、4回以上の利下げ予想が5人から1人に減ったためです。

FRB幹部のタカ派的な発言も増えています。直近では、ウォラー理事やクック理事、米アトランタ連銀のボスティック総裁などが、早期の利下げ開始や、年内の利下げ回数に対して慎重な見方を示しました。

ハト派姿勢を示したパウエル議長もあくまで今後のデータ次第としており、米物価指標などの動向から目が離せません。29日はFRBも注目する2月米個人消費支出(PCE)価格指数が発表されるほか、来週は1日の3月米ISM製造業景気指数、5日の3月米雇用統計など重要指標が目白押しです。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/8/9~2024/3/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は強含み、減産順守期待>
今週のWTI原油先物価格は強含みの展開となっています。19日に付けた約4カ月ぶりの高値を28日に突破。産油国の減産順守への期待などが材料視されました。ただ、予想外の米在庫増加など気になるデータもあり、来週にかけての米重要指標が注目されます。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル80─85ドル

*OPECプラスは減産順守か、米在庫増加は予想外の増加
ロシア政府は、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」との合意に沿って、第2・四半期に減産を行うよう政府企業に指示したと報じられています。産油国の順守意識が高まれば、守っていない国もあるとされる減産が進む期待が高まります。

一方、米エネルギー情報局(EIA)が27日に発表した週間石油在庫統計では、原油在庫が3週ぶりに増加しました。留出油は3週ぶりに減少しましたが、ガソリン在庫も8週ぶりに増加しています。堅調な米景気を背景に原油やガソリン在庫は減少するとの見方が多かったことから、一時的な在庫増加なのか見極めが必要になりそうです。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/8/29~2024/3/28)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<今週のトピック:インド、世界で最も「金」がかかる結婚式と総選挙>

インドの結婚式は世界で最も金(カネ、ゴールド両方の意)がかかると言われます。金に魔除けの効果があると信じられており、花嫁が婚礼衣装として金などの宝飾品をたくさん付けるほか、嫁ぎ先に「ダウリー(持参金)」として金製品などを贈る習慣が違法ながら残っているためです。

しかし、今年は春の婚礼シーズンを迎えているにもかかわらず、金需要が都市部、地方ともに減少していると伝えられています。

理由の1つは金価格の高騰です。インドルピー高のおかげで国内価格は米ドル建て価格よりやや上昇率が低いのですが、それでも過去最高値を更新しています。投資目的であれば、さらなる値上がりを期待して買うこともできますが、実需はそうはいきません。

標準的な花嫁が付けるのは、イヤリングや鼻ピン、指輪、ネックレス、腕輪など20─200グラム程度とされ、日本円であれば、おおよそ20万円から200万円。そこに「ダウリー」も加わるのですから、一般的な家庭にとってはかなりの負担です。

さらに総選挙が金需要を圧迫していると考えられています。インドの総選挙は、世界で最も金(こちらもカネ、ゴールド両方)がかかる選挙と言われます。広大な選挙区を回るのに費用がかかるのはもちろんですが、候補者が有権者に金(ゴールド)や現金などを配る(当然違法)ためとされ、総選挙期間中、金と現金の動きに対する監視が強化されます。

このため選挙期間中は金需要が減る傾向があり、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のレポートによると、過去4回の総選挙中3回で金の需要が減少したそうです。

今年の総選挙は4月19日から6月1日にかけて地域ごとに7回に分けて投票が実施され、6月4日に一斉開票されます。1年で最高の吉日の1つとされるアクシャヤ・トリティヤの5月10日頃は、金を購入するのに縁起が良い時期であると考えられていますが、果たして今年はどうなるでしょうか。


◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。



伊賀大記

執筆者プロフィール

伊賀大記(イガダイキ)

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ