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米議会の予算交渉、シャットダウンより重大な影響も?

2024/01/10 07:34

【ポイント】
・米議会で24年度予算の審議がスタート
・議会指導部が大枠合意も、交渉の先行きは不透明
・シャットダウンが回避されても政治不安は米ドル安材料!?

8日に米下院、9日に同上院が召集され、議会審議が始まりました。喫緊の課題は1月19日と2月2日に期限切れとなる24年度継続(つなぎ)予算への対処です。今年9月30日までをカバーする本予算(12本の歳出法あるいは1本にまとめた包括予算)か、少なくとも短期の継続予算が成立しなければ、シャットダウン(政府機能の一部停止)が発生することになります。

民主党のシューマー上院院内総務と共和党のジョンソン下院議長が7日、予算(≒歳出)の大枠について合意しました。これを受けて、上下各院の歳出委員会は詳細な歳出法案の審議を開始します。歳出法案が作成されてそれが各院の本会議で可決、下院案と上院案が同一であれば議会を通過し、大統領の署名を得て成立します。下院案と上院案が異なれば、同一になるまで議会でのすり合わせが行われます(その後は同じ)。

さて、今回の大枠での合意には、バイデン大統領が要求する対ウクライナ支援、共和党(とくに保守派)が主張する歳出の大幅削減や移民規制の強化はいずれも含まれていません。それらを交渉の中でどのように予算に組み入れるのか(入れないのか)が今後の焦点になりそうです。

シャットダウンは、長期化すれば経済や金融市場に悪影響を与えるでしょう。米国債の格付けにも影響しかねません。ただ、過去に何度もみられたように、シャットダウンが短期間であれば、一般市民が少々の不都合を感じる程度で済むでしょう。

もっとも、予算交渉のなかで両党が党派色を鮮明にして激しくバトルする可能性があります。1月15日には大統領予備選がスタートすることもあって、米政治の二極化に拍車がかかるかもしれません。議会の動向は相場材料にしにくいところですが、政治の不透明性が高まるならば、長い目でみれば米ドルの重石になるかもしれません。

議会指導部が大枠での予算に合意したことは明るい材料ではあります。ただ、このまま議会での交渉がスムーズに進展するかどうかは、依然として不透明です。交渉期間が短すぎるとして3月までの継続予算を成立させようとの提案も浮上しているようです。今後、予断を持たずに議会動向を注視すべきでしょう。

※ユーラシアグループが9日に発表した「2024年10大リスク」のリスクNo.1は「米国の敵は米国」。米国政治の分断・分裂が一段と深刻化して、世界情勢に多大なる影響を与えうるという趣旨です。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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