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米長期金利の研究:ピークアウトしたか

2023/11/29 07:28

【ポイント】
・10年物国債利回りは今年5月以降のトレンドラインを割り込む
・FRBが今年7月で利上げ打ち止めなら長期金利はピークアウトか
・今年10月にピークアウトしたなら24年6月の利下げ開始は妥当!?
・今年4-9月の回帰分析に基づけば、長期金利4.00%で米ドル/円は142.910円

米国の長期金利(10年物国債利回り)は、足もとで5月上旬から機能してきたサポートラインを下回ってきました。10月23日には一時5.0%を超えましたが、そこから低下基調になっています。長期金利はすでにピークアウトしたのでしょうか。

米長期金利

過去の米長期金利と金融政策の関係から考察してみましょう。

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2000年以降、利上げ打ち止めから利下げ開始に至る局面は3回ありました(図中のI、II、III)。足もとでもそうなる可能性があるので暫定的にIVの局面とします。

米長期金利と政策金利

4つの局面それぞれについて、長期金利のピークアウト、利上げの打ち止め、利下げ開始のタイミングを表にまとめました。

長期金利ピーク

長期金利は利上げ打ち止め前にピークアウト?
過去3回のうち2回の局面(IとIII)では、長期金利は利上げ打ち止め前にピークアウトしました。(II)の局面でも、長期金利はダブルトップに近い形状をしており、仮に07年6月12日より06年6月28日の方が少しでも高ければ、利上げ打ち止め直前に長期金利がピークアウトしていたことになります(あくまで仮定ですが)。今回(IV)の局面で今年7月26日の利上げがサイクルの最終であったならば、それに3カ月遅れて長期金利がピークアウトしてもおかしくはない、むしろ遅すぎるくらいかもしれません。

長期金利とインフレ率との関係
過去3回は長期金利のピークが政策金利のピークとほぼ同じか、それを上回りました。今回は長期金利のピークが政策金利の水準を下回っているのはやや気がかりです(長期金利に上昇余地あり?)。ただ、コロナ発生以降、インフレ率(PCEコア前年比など)を下回っていた長期金利がインフレ率の鈍化により今年8月以降は上回っているので(=実質金利がプラス)、長期金利は妥当な水準に達したと判断できるかもしれません。なお、足もとで実質長期金利は0.64%(インフレ率は9月のPCEコア前年比)、コロナ前5年間(15-19年)の平均0.65%とほぼ同じです。

米インフレ率と長期金利

利下げ開始は24年5-6月か
また、過去3回は、長期金利のピークが利下げの開始に3カ月-11カ月先行しました(平均7.3カ月先行)。平均値を当てはめると、長期金利が今年10月にピークアウトしたなら、利下げ開始のタイミングは24年6月ごろになります。これは現在の市場が織り込む金融政策のシナリオとほぼ同じです。同様に過去3回は利上げ打ち止めから利下げ開始まで7カ月-15カ月、平均10カ月です。平均値を当てはめると今年7月の利上げ打ち止め(暫定)から10カ月後の24年5月が利下げ開始のタイミングになります。

インフレが順調に鈍化するか
過去3回の局面と今回が大きく異なっているのはインフレ動向。過去3回はインフレが相対的に落ち着いていたので、景況が悪化すれば利下げの判断は比較的容易だったかもしれません。今回は当局の期待するようにインフレが順調に鈍化するのか。その辺りが早い利下げが可能になるかどうかのカギを握りそうです。

なお、今年4-9月の期間において、米ドル/円と長期金利を用いた回帰分析に基づけば、現在の長期金利(4.33%)が示す推計値は147.51円と実勢値と同水準です。仮に、長期金利が4.00%まで低下すれば、推計値は142.91円3.80%を下回れば、推計値は139.99円です。

■回帰分析の詳細は以下をご覧ください。
11月23日付け「米ドル/円、再び150円の壁?」
11月10日付け「米ドル/円は長期金利による推計値に回帰!」

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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