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米シャットダウンで何が起きるか(起きないか)

2023/09/28 08:01

【ポイント】
・米下院共和党は上院の継続予算案に否定的
・シャットダウンが長期化すれば影響は広範囲に及びそう
・統計発表の遅延は判断を難しくしそう

米政府の24年度が始まる10月1日に何らかの予算が成立していなければ、シャットダウン(政府機能の一部停止)になります。

UAW(全米自動車労組)が29日からのストライキ拡大を示唆、また10月から学生ローンの返済が再開されるなど、景気の下押し要因があります。そうしたなかで、シャットダウンが長期化すれば、影響は広範囲に及び、リセッション(景気後退)や金融市場の動揺につながる可能性もあるでしょう。

■本日のテクニカル・ポイント「米ドル/円、150円超えとなるか&昨秋の為替介入のテクニカル検証」では、昨秋の為替介入の有効性についてもテクニカル的に検証しているので、ご参照ください(マイページへのログインが必要です)。

短期のシャットダウンは不可避?
米上院では、共和党と民主党が11月17日までの継続予算に関して合意に達しました。上院では9月30日までに継続予算案が可決されそうです。ただし、下院では大幅な歳出削減を求める共和党の保守強硬派が強く反対しているため、採決の見通しが立っていません。下院も同一の法案を可決しなければ、継続予算は成立せず、シャットダウンは不可避となります。

シャットダウンでどうなるか
デットシーリング問題と異なり、シャットダウンとなっても政府はデフォルト(債務不履行)しません。毎年の予算(12本の歳出法)がカバーしているのは、政府の歳出全体の3割弱に過ぎません。社会保障(年金)の給付や国債の利払いは自動的に発生するため、予算が成立していなくても支出されます。

シャットダウンとなっても、政府の必要不可欠な業務は継続されます。必要不可欠な業務は以下の通り(一部のみ)。

・航空管制、郵便、鉄道(アムトラック)、パスポートやビザの発給など
・FRBの金融政策
・EIA(エネルギー情報庁)の原油レポートなど
・国防活動(ただし、国防省の多くの文官は自宅待機)
・コロナへの対応や研究など(保健福祉省)

一方で、以下の業務は停止ないし延期・縮小の対象となります(一部のみ)。

・経済指標の発表(商務省や労働省※など政府機関のもの)
・SEC(証券取引委員会)の登録承認など一部業務
・国立公園や国立博物館などの公共施設

※13年9月の雇用統計は、発表が予算成立後まで18日間遅延しました。

シャットダウンが短期間で終了すれば、一般市民への影響も小さく、マクロ経済的影響もほとんどないでしょう。連邦職員らの給与は予算の成立後に遡って支給されます。しかし、長期化すれば、政府機能停止の拡大(余剰資金を用いた業務の停止)、連邦職員の支出抑制(貯蓄の払底)、政府と契約する民間企業の業績悪化(社員の解雇)などを通じて、経済への影響も大きくなりそうです。また、雇用統計や物価指標、その他の経済統計が発表されなければ、金融政策や投資の判断にも支障が出そうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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