政府・日銀が24年ぶり円買い介入実施、これからどうなる?
2022/09/22 17:46
【ポイント】
・政府・日銀は黒田総裁会見後に円買い介入を実施
・日本の為替介入は約11年ぶり、円買い介入は約24年ぶり
・米ドル/円は145円台後半から一時141円割れ(午後5時45分現在)
・あくまで「円安」のスピードを調整するスムージングオペか
・ファンダメンタルズは引き続き米ドル/円の上昇を示唆
日本時間22日未明、米FOMCが0.75%の利上げを決定し、先行きの大幅利上げを示唆。同日正午過ぎに日銀が大規模金融緩和の維持を決定。それらを受けて米ドル/円はじり高となっていました。そして、午後3時30分に開始された黒田日銀総裁の会見途中から米ドル/円の上昇に拍車がかかっていました。
黒田総裁は会見で、当面利上げや長期金利目標を修正するつもりが全くないことを再確認。また、金融政策は為替レートを目標にしないことや、為替相場が内外(とくに日米)の金利差だけで決まるわけではないとも語っていました。さらに、為替介入については、あくまで財務大臣の管掌であることを強調していました。
黒田総裁の会見の前には、神田財務官が「(介入は)ステルスでやる場合もある」、「スタンバイの状況だ」と述べ、為替市場をけん制していました。にもかかわらず、米ドル/円が上げ足を速めたので、当局は介入に踏み切ったものとみられます。
今のところ、本日の円買い介入はスピードを調整するためのスムージングオペとみられます。日米の金利差や金融政策の方向性の差、経済成長力の格差といったファンダメンタルズは引き続き米ドル/円の上昇を示唆していると判断できます。
本日の欧米市場でも円のショート(売り持ち)ポジションの解消などを巻き込んで、米ドル/円が一段と下落する可能性はあるでしょう。ただ、為替相場が落ち着いた時には改めてポジションを構築する機会が訪れるかもしれません。
以下は、9月14日付け「【特別版】為替介入はあるのか その効果は?」から一部抜粋しました。
************
<前略>
なお、為替介入を行うかどうかの判断は財務省の専管事項です。ただし、介入の水準やタイミングは日銀にゆだねられています。なお、14日には日本の長期金利(10年物国債利回り)が日銀の目標上限である0.25%を超えたので、日銀は国債購入オペを増額して長期金利を抑えようとしました。日銀が本気で円安を阻止しようとすれば、長期金利の上昇を容認したかもしれません。
為替介入があるとすればスムージングオペ
日本の当局者が問題視しているのは、あくまで「円安」のスピードであって、水準や方向性ではありません。日米(あるいは日本と他の主要国との)政策金利差や金融政策の方向性、あるいは日本の長期的な経済の停滞というファンダメンタルズに基づけば、「円安」は妥当だと判断できるでしょう。したがって、「円安」を転換させようとする大規模な介入や国際協調介入の可能性は低いでしょう。あるとしても、せいぜい「円安」のスピードを調整するスムージングオペの範囲ではないでしょうか。
為替介入の効果は?:98年の経験
米ドル/円の140円台は98年以来24年ぶり。過去20年間で米ドル売り円買いの介入が行われたのは、実は97-98年の1局面だけです。当時、円キャリー取引によって巨額の円売りポジションが作られて「円安」が急速に進行していました。
そして、財務省/日銀は97年12月17-19日、98年4月9-10日、同6月17日と米ドル売り円買いの介入を実施しました。いずれの場合も、約6-8円の「円高」になりましたが、効果は短命ですぐに「円安」基調に回帰しました。そして、米ドル/円は同8月11日にピークをつけ、8月17日のロシアのデフォルト(債務不履行)や9月23日のLTCM破たんを受けて急落しました。これは急激なリスクオフの動きの中で巨額の円売りポジションが一気に巻き戻ったためでした。つまり、為替介入だけではトレンドを転換できなかった(当局にもその意図はなかった?)と言えそうです。

なお、日銀が98年6月17日に介入を実施した直前の米ドル/円は146.780円。足もとの米ドル/円が145円を超えれば、次はその水準が視野に入るでしょう。その次はいよいよ過去30年の最高値である98年8月11日の147.710円です。
・政府・日銀は黒田総裁会見後に円買い介入を実施
・日本の為替介入は約11年ぶり、円買い介入は約24年ぶり
・米ドル/円は145円台後半から一時141円割れ(午後5時45分現在)
・あくまで「円安」のスピードを調整するスムージングオペか
・ファンダメンタルズは引き続き米ドル/円の上昇を示唆
日本時間22日未明、米FOMCが0.75%の利上げを決定し、先行きの大幅利上げを示唆。同日正午過ぎに日銀が大規模金融緩和の維持を決定。それらを受けて米ドル/円はじり高となっていました。そして、午後3時30分に開始された黒田日銀総裁の会見途中から米ドル/円の上昇に拍車がかかっていました。
黒田総裁は会見で、当面利上げや長期金利目標を修正するつもりが全くないことを再確認。また、金融政策は為替レートを目標にしないことや、為替相場が内外(とくに日米)の金利差だけで決まるわけではないとも語っていました。さらに、為替介入については、あくまで財務大臣の管掌であることを強調していました。
黒田総裁の会見の前には、神田財務官が「(介入は)ステルスでやる場合もある」、「スタンバイの状況だ」と述べ、為替市場をけん制していました。にもかかわらず、米ドル/円が上げ足を速めたので、当局は介入に踏み切ったものとみられます。
今のところ、本日の円買い介入はスピードを調整するためのスムージングオペとみられます。日米の金利差や金融政策の方向性の差、経済成長力の格差といったファンダメンタルズは引き続き米ドル/円の上昇を示唆していると判断できます。
本日の欧米市場でも円のショート(売り持ち)ポジションの解消などを巻き込んで、米ドル/円が一段と下落する可能性はあるでしょう。ただ、為替相場が落ち着いた時には改めてポジションを構築する機会が訪れるかもしれません。
以下は、9月14日付け「【特別版】為替介入はあるのか その効果は?」から一部抜粋しました。
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<前略>
なお、為替介入を行うかどうかの判断は財務省の専管事項です。ただし、介入の水準やタイミングは日銀にゆだねられています。なお、14日には日本の長期金利(10年物国債利回り)が日銀の目標上限である0.25%を超えたので、日銀は国債購入オペを増額して長期金利を抑えようとしました。日銀が本気で円安を阻止しようとすれば、長期金利の上昇を容認したかもしれません。
為替介入があるとすればスムージングオペ
日本の当局者が問題視しているのは、あくまで「円安」のスピードであって、水準や方向性ではありません。日米(あるいは日本と他の主要国との)政策金利差や金融政策の方向性、あるいは日本の長期的な経済の停滞というファンダメンタルズに基づけば、「円安」は妥当だと判断できるでしょう。したがって、「円安」を転換させようとする大規模な介入や国際協調介入の可能性は低いでしょう。あるとしても、せいぜい「円安」のスピードを調整するスムージングオペの範囲ではないでしょうか。
為替介入の効果は?:98年の経験
米ドル/円の140円台は98年以来24年ぶり。過去20年間で米ドル売り円買いの介入が行われたのは、実は97-98年の1局面だけです。当時、円キャリー取引によって巨額の円売りポジションが作られて「円安」が急速に進行していました。
そして、財務省/日銀は97年12月17-19日、98年4月9-10日、同6月17日と米ドル売り円買いの介入を実施しました。いずれの場合も、約6-8円の「円高」になりましたが、効果は短命ですぐに「円安」基調に回帰しました。そして、米ドル/円は同8月11日にピークをつけ、8月17日のロシアのデフォルト(債務不履行)や9月23日のLTCM破たんを受けて急落しました。これは急激なリスクオフの動きの中で巨額の円売りポジションが一気に巻き戻ったためでした。つまり、為替介入だけではトレンドを転換できなかった(当局にもその意図はなかった?)と言えそうです。

なお、日銀が98年6月17日に介入を実施した直前の米ドル/円は146.780円。足もとの米ドル/円が145円を超えれば、次はその水準が視野に入るでしょう。その次はいよいよ過去30年の最高値である98年8月11日の147.710円です。
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