マネースクエア マーケット情報

ウォーシュ議長とトランプ大統領

2026/07/28 08:05

【ポイント】
・トランプ大統領は利下げを要求する一方で、ウォーシュ議長を称賛
・大統領は、議長以外のメンバーが利下げを妨害していると主張
・ウォーシュ議長は政権に忖度せず政策運営ができるか
・トランプ政権はFRBへの影響力拡大を画策

米FOMCが開催される前日27日、トランプ大統領が久々にFRBに言及しました。FRBは利下げすべきだ、そしてウォーシュ議長を信用している、と。つまり、ウォーシュ議長は正しいこと(利下げ)をしようとしているが、他の理事(+地区連銀総裁?)が政治的思惑から邪魔していると言いたいようです。

トランプ大統領はまた、利下げすれば8~12%の高いGDP成長率が可能だと述べ、30年前は米国の金利が世界で一番低かったと指摘しました(※)。

※これはデタラメ。96年ごろの政策金利は米国が5%台、日本は1%未満、スイスは1%台、ドイツは3%台でした。

一方、ウォーシュ議長はどう考えているのでしょうか。
ウォーシュ議長は14-15日の議会証言で、「FOMCはインフレ高止まりを容認するつもりは一切ない」、「(弱めの6月CPIについて)ひと月だけのデータで安心することはない」、「労働市場が良い状態にある一方で、物価についてはやることが残っている」などと述べて、物価安定へのコミットメントを強調しました。ウォーシュ議長は、「政治から独立してデータに基づいて判断する」と繰り返し述べてもいます。

ウォーシュ議長は、トランプ政権に忖度することなく、中央銀行家として議会から与えられた、最大雇用と物価安定というデュアル・マンデート(二重使命)を追求することができるでしょうか。

ウォーシュ議長は、“マーチン議長”か、“バーンズ議長”か
FRB議長と大統領の関係を歴史的にみると、2つの対照的な事例が浮上します。51年に就任したマーチン議長は財務省出身でトルーマン政権に近いとみられていました。しかし、就任直後に「アコード(FRB・財務省協定)」を実現してFRBの独立性を確立しました。他方、70年に就任したバーンズ議長は、72年に再選を目指す二クソン大統領の利下げ圧力に抗しきれずに高インフレを招く一因になったと批判されています。

ウォーシュ議長の発言からすれば“マーチン議長”タイプとみえなくもないし、市場(とくに債券市場)はそれを望んでいるでしょう。もっとも、発言だけでなく、行動も含めてウォーシュ議長がどちらのタイプになるか明らかになるには相応の時間がかかりそうです。

FRBへの影響力拡大を画策するトランプ政権
トランプ大統領はパウエル前議長に利下げを要求し続け、クック理事を解任し(現在無効中)、パウエル議長を再任せずに自身に近いウォーシュ氏を後任に指名しました。そして、トランプ政権は現在、バー理事の辞任/解任を模索しているようです。

バー理事が銀行監督担当の副議長だった23年3月にSVB(シリコンバレーバンク)が破たんしました。FRBは最近、SVB破たんに関する新たな検証を外部に委託しました。トランプ政権は検証結果がバー理事解任の法的根拠となりうるか探っているようです。バー理事は25年2月に自ら副議長からの降格を申し出ました。トランプ政権から攻撃されるのを予期していたのかもしれません。

FRB本部の理事はウォーシュ議長を含めて7人。このうち、トランプ大統領から指名されたのが、ウォーシュ議長、ボウマン副議長(バー副議長の後任、トランプ1期目に理事に指名され、2期目に副議長に昇格)、ウォラー理事(1期目に指名)の3人。残り4人、パウエル理事、クック理事、バー理事、ジェファーソン理事の1人でも辞任すれば、理事の過半数がトランプ大統領に指名されることになります。理事の過半数を握れば、金融制度の変更地区連銀総裁の承認などに影響力を行使することができます。なお、金融政策を決めるFOMCには7人の理事と12人の地区連銀総裁が参加、理事全員とNY連銀総裁を含む5人の総裁、計12人(投票メンバー)の投票で決定されます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ