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“ウォーシュ議長”は何をしようとするか

2026/05/22 08:00

【ポイント】
・早期の利下げは難しそう。「次の一手」は利上げかも
・“ウォーシュ議長”はFRBの独立性を維持できるか
・コミュニケーションの制限や金融政策への専念は?

22日、ホワイトハウスでの宣誓式を無事に済ませれば、ウォーシュFRB議長が正式に誕生します。ウォーシュ議長※は何をしようとするでしょうか。以下に考察しました。

※本稿執筆時点は宣誓式(日本時間23日0:00)前ですが、「ウォーシュ議長」とします。

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早期の利下げ?
さすがにこれは難しいでしょう。足もとの米景気はそこそこ堅調で、一方でインフレは上振れしています。ウォーシュ議長が利下げを求めても、投票メンバー残り11人のうち6人の賛同を取り付けるのは今後しばらく難しそうです。

4月雇用統計で、NFP(非農業部門雇用者数)は前月比11.5万人増と、前月(18.5万人増)からペースは鈍ったものの、2カ月連続で増加。これは25年4-5月以来約1年ぶり(当時は4カ月連続増)。2カ月連続で10万人超増えたのは24年11-12月以来でした。

4月鉱工業生産や小売売上高も底堅く、21日時点のGDPNow(短期予測モデル)によれば、4-6月期GDPは前期比年率4.3%と、25年7-9月期(同4.4%)以来の高い伸びが予測されています。

一方で、CPIやPCEデフレーターでみるインフレ率はFRBの目標2.0%からジリジリと上振れしています。

■5月8日付け「“ウォーシュ議長”に逆風となりそうな米経済情勢」

21日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は利下げを全く織り込んでいません。「次の一手(市場が織り込む確率が5割超)」は「今年10月の利上げ」です。

独立性の維持
ウォーシュ氏は上院の承認公聴会で、FRBの独立性は最も重要な要素だとして、「トランプ大統領の操り人形ではない」と否定しました(当然ですが)。また、トランプ大統領は19日のメディア・インタビューで「彼(ウォーシュ議長)がやりたいようにやらせる」と述べました。もっとも、この発言を「ウォーシュ議長の行動を決めるのは大統領である自分だ」と受け止めるのは穿(うが)ち過ぎでしょうか。

AI効果とバランスシート縮小
ウォーシュ氏は、AIによる生産性の向上はインフレを抑制して低金利を可能にすると述べています。また、FRBのバランスシート(≒保有国債)を(今以上のペースで)縮小させれば、利下げの余地が生じるとも考えているようです。それらは、目先の金融政策というよりは長い目でみた金融政策の方向性の問題でしょう。もっとも、FRB内部ではそうした考えを疑問視する声も多くあるようです。

市場とのコミュニケーションの制限
ウォーシュ氏は、フォワードガイダンスドットプロットを使って金融政策の先行きにヒントを与え過ぎだと考えています。当たるとは限らない予測を示すことで、自らの裁量余地を狭めてしまうからです。ウォーシュ氏は、地区連銀総裁などFRB関係者が自由に発言することもあまり快く思っていないようです。FRBと市場とのコミュニケ―ションは現在より少なくなるかもしれません。

金融政策への専念
ウォーシュ氏は、FRBは金融政策に専念すべきだとしています。金融機関の財務や経営の健全性をチェックしたり、ルール作りをしたりするのは最小限にすべきだと考えているのでしょう。もっとも、そうした事象については理事会に権限があります。7人の理事のうち、トランプ政権寄りと考えられるのは、ウォーシュ議長、ボウマン副議長、ウォラー理事3人。過半数に1人足りない状況です。そのため、ウォーシュ議長ができることもある程度限られるかもしれません。少なくとも、パウエル理事が退任しない限りは。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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