焦りは禁物!トラリピは一日にして成らず

2021/08/30 09:30

トラリピ運用のコツ


トラリピ発注後のお悩み

せっかくトラリピ運用を始めても、上記のように考えてしまう人は決して少なくありません。
利益を期待しているのに、評価損が増えている……不安になるのも無理はないでしょう。しかし、だからといってトラリピをすぐに取り消してしまっては「もったいない」と言わざるを得ません。

なぜなら、評価損はトラリピ運用をするうえで付き合っていかなければならないものだからです。
本レポートは、この点をみなさんに理解いただくことを目指しています。


もくじ
■トラリピは一日にして成らず
トラリピ運用における損益の動きをイメージ図とバックテストの実例をもとに解説。

■そもそも「評価損」ってなんだろう
トラリピに限らず、FXの基礎知識として「評価損」について解説。



■トラリピは一日にして成らず

ここでは、トラリピ運用における損益の動きを解説します。まずイメージ図で仕組みを理解し、バックテスト結果で実際の様子を確認していきましょう。


●イメージでつかむ
以下、買いトラリピを例として解説していきます。

図①


新規成立をして、ポジションを持ちました。このポジションをAとします。ここから決済価格まで上がれば決済成立となり、利益が確定します。しかし、次のように価格が下落すると……

図②


さらに2つの買いポジションを持ちました。これらをB、Cとします。
この時、3つのポジションではそれぞれ灰色の矢印の幅の分の「評価損」が発生しています。この時点では確定利益はなく、評価損があるのみ。損だけが増えているように見え、この時点で不安に思ってしまう人は少なくありません。

しかし、次のように価格が上昇すると……

図③


BとCのポジションがそれぞれb、cの水準で決済されました。これが「確定利益」です。また、Aのポジションを持った水準より価格が高いので、黄色い矢印の幅の分は「評価益」となります。この時は「評価損」を抱えているポジションはありません。
ここから価格が下落し、次のようになりました。

図④


新たにD、Eのポジションを持ちました。この時点での評価損は灰色の矢印の幅の分。D、EのポジションだけでなくAのポジションもまだ決済していないので、3つのポジションの評価損があります。「評価損に耐える」タイミングです。
ただし、価格が上昇すればこれらのポジションは決済され、「確定利益」となります。そしてまたポジションを持ち(評価損を抱え)、決済する……

トラリピは、この繰り返しです。

いったんは評価損を抱えても、価格が上昇/下落すれば決済されて確定利益が積みあがる。多くの場合、トラリピで確定利益が出る前には評価損を抱えるタイミングがあります※。だから、評価損はトラリピ運用をするうえで付き合っていかなければならないものなのです。
※トラリピを仕掛けてからずっと一方的に上昇(買い)/下落(売り)が続く場合、評価損を抱える段階を経ずに決済が成立します。



●実例でつかむ

次に、実際のトラリピのバックテストで損益の移り変わりを確認してみましょう。

図⑤


これは当社が「豪ドル/NZドル」の取り扱いを開始した当時に公開した「トラリピBuy & Sell」戦略(運用想定資金:100万円)です。
取り扱い開始は2020年9月26日でしたから、もしも公開当初から運用していたら、2021年7月末の時点で約10カ月が経過したことになります。

下の図は、そのバックテスト結果をグラフ化したものです。100万円の運用資金でスタートしたと仮定し、最初の地点は100万円としました。

図⑥

※バックテスト期間:2020年9月28日~2021年7月30日
※スワップは考慮していません

赤い線で示しているのが、「確定した利益」と「その時点の評価損益」を加味した有効証拠金(その時点でトラリピを取り消してすべてのポジションを決済した場合に残る資金)です。いかがでしょうか、最初のうちはほぼずっとマイナス圏(運用資金100万円以下)にあることが分かると思います。トラリピを仕掛けてから最初のうちは「確定した利益よりも、抱えている評価損のほうが大きい」という状態になっていたということです。

しかし約160営業日経過時点、つまり2021年5月のあたり(グラフ内青丸囲み部分)を見てみると、そこから先はプラス圏で推移していることがわかるでしょう。

これは「トラリピによる利益が積み重なった結果」なのです。
あくまでトラリピを仕掛けているレンジの範囲内で動くことが前提ではありますが、トラリピは長く続ければ続けるほど利益が積み重なり、やがてプラス圏で動くようになります。
ただし、たとえ安定してプラス圏で動き始めても(ある程度確定利益を得ていても)、「○○ショック」と言われるような相場の急変動が起きれば、評価損が一気に拡大してマイナス圏に落ち込むこともあり得ます。くれぐれもご注意ください。

今回の例では、プラス圏で推移し始めるまで約8カ月かかっています。トラリピ運用においてはある程度の期間にわたって評価損に耐える必要があるということです。とはいえ、相場状況やトラリピの仕掛け方によっては1カ月前後でプラス圏に入ることもありますし、逆にもっと待たなければならない場合もあります。

基本的に「トラリピ運用においては、評価損に耐える段階がある」ということを念頭に置いておきましょう。

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■そもそも「評価損」ってなんだろう

ここでは、まだFXの仕組みについてちょっと自信がない・基礎からもう一度自分の知識を見直しておきたいという方向けに「評価損」についてくわしく解説します。

取引における「損」には2種類あります。
一つは「ポジションを決済したことで“確定”した損」。損した金額は預託証拠金から差し引かれ、資金は戻ってきません。トレード画面のトラリピ管理表では「確定損益」として表示されています。

そしてもう一つが、これから説明する「評価損(「含み損」ともいいます)」です。評価損は、トレード画面においては「評価損益」という名称で表示されています。プラスの場合(評価益)もあるため「損益」となっています。

まず知っておいてほしいのは、「評価損(益)」は確定した損失(利益)ではないという点。

例えば、トレード画面で「評価損益」の欄に「-100,000」と表示されているとしましょう。これは「すでに10万円損した」という意味ではありません。あくまで、確認した時点での価格水準で見た時の損失の金額です。
つまり「評価損(益)」は相場が動くと変化するということ。マイナスだったものがプラスになることもあれば、さらにマイナスが大きくなる場合もあります。

次の図で、評価損益が変化するイメージをつかんでみましょう。
以下は「買い」のポジションを例に挙げて説明しているので、「売り」の場合は上がる、下がるが逆になります(売りの場合はレートが上昇すればマイナス、下落すればプラス)。

図⑦


ある価格水準で買いポジションを持ちました。
ポジションを持った水準から、レートが少し上がると……

図⑧


これが決済の水準まで上がっていたならば決済して利益が確定されますが、上の図の時点ではまだ決済の水準には達していません。ポジションを持ったままの状態です。
このときの評価損益はプラス。評価「益」が出ている状態です。

では、図⑧の状態から次のようにレートが下がったとします。

図⑨


評価益が一転、今度は評価「損」になりました。ポジションを持った(買った)レートを下回ったためです。繰り返しになりますが、「評価損益」はまだ確定していないものであるという点を忘れないようにしましょう。
図⑧でプラスになっているときも、図⑨でマイナスになっているときも、利益あるいは損はまだ確定していません。図⑨の状況からさらにレートが下がれば評価損はさらに大きくなり、上がれば(最初にポジションを持った水準を上回れば)再びプラスになります。
決済の水準まで上がるとポジションが決済され、そこではじめて利益が「確定」するのです。

もちろん、利益ではなく損が「確定」する場合もあります。
考えられるケースとしては

・レートがストップロスの水準に達した※1
・ロスカットが執行された※2
・手動で決済を行った(ポジションを解消した)
などが挙げられます。
※1:ストップロスとは「レートがある水準に達したら決済(=損切り)する」という設定のこと。損が拡大しないようにするためのもので、トラリピ注文時に任意で設定(注文後の設定変更も可)できます。
※2:ロスカットとは「口座の維持率(必要証拠金に対する有効証拠金の割合)が100%未満になったら自動ですべての注文が取り消され、全ポジションを対象に反対売買が実行される」仕組みのこと。

さて、「評価損(益)」がどのようなものなのかお分かりいただけたでしょうか?
この数字は維持率の変化に直結するため、リスク管理の観点で重要な数字です。ただし、この数字だけに惑わされて「もったいない」ことをしないように正しく理解してくださいね。

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今回の記事のタイトルは「トラリピは一日にして成らず」でした。

お気づきの方も多いでしょうが、これは「ローマは一日にして成らず」というフレーズをもじっています。
はるか昔に栄華を極めたローマ帝国。その繁栄は一夜にして得られたものではなく、長い歳月を費やしてようやく出来上がったものである――ということに由来する「重要なことや目標の達成のためには長い時間がかかる」ことを示唆することわざです。

そして、トラリピ運用にも同様のことが言えます。
トラリピはデイトレードやスイングトレードとは違い、「評価損を増やしたり減らしたりしながら、利益をコツコツ積み重ねてくれるもの」。

ある程度の時間をかけて実を結ぶ。それがトラリピ運用です。

ぜひこのことを忘れずに、地道に取り組んでいただければと思います。
トラリピくん


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