トラリピ・複数通貨ペア運用のすすめ

2021/04/28 09:00

トラリピ運用のコツ


平均通貨ペア数

突然ですが、上の「平均2.5」とは何の数字でしょうか?
今回の記事タイトルからなんとなくお分かりの方も多いとは思いますが、「1口座あたりのトラリピ運用通貨ペア数平均※」です。
※2021年4月16日NYクローズ時点で有効なトラリピ注文を出している口座でカウント。

トラリピ運用をいくつの通貨ペアで行うかについては、

「○通貨ペアで計画を立てて運用している」
ひとつの通貨ペアにこだわって運用している」
「なんとなく興味のある通貨ペアに手をつけていったら増えていた」

……などなど、さまざまな考え方があると思います。資金状況などによって、運用スタイルは十人十色。ただし、複数の通貨ペアで運用することでトラリピ戦略の幅が広がることは事実です。
というわけで、今回はトラリピでの「複数通貨ペア運用」について解説します。



■複数通貨ペアでトラリピ運用することのメリット

複数通貨ペアでトラリピ運用することの最大のメリットは、「為替の変動リスクを分散させる」ことができる点です。

リスクを分散させることについては、有名な相場の格言があります。

卵をひとつのカゴに盛るな

というものです。
あなたがいくつかの卵を持っているとします。すべての卵をひとつのカゴに入れておくと、ひとたびそのカゴを落としてしまったら……きっと、すべての卵が割れてしまいます。一方、複数のカゴにそれぞれ卵を入れてみたらどうなるでしょうか。ひとつのカゴを落としてしまっても、他のカゴをしっかり持っていれば、一度にすべての卵が割れてしまう可能性は低くなります。

つまり、「すべての運用資金を同じところに投資してしまうと、損益はひとつの運用結果のみに縛られてしまう。しかし、運用資金を分けて投資することで、どれかで損を出してしまっても他のところで補うことができる」というわけです。

特にトラリピは短期的な取引ではなく、中長期視点で取り組む方がほとんどです。そうなると、取引している最中に「○○ショック」といった予想外の大きな値動きが起こる可能性を考慮して対策を準備しておく必要があります。適切なリスク分散をしておくと、ショック相場のような場面での「即退場」を免れる可能性が高まるのです。

ただし、手当たり次第に複数の通貨ペアを同時に運用しようとすると、かえって投資効率を下げてしまうおそれもあります。たとえば、似たような動きをする通貨ペアを採用し同じ売買で仕掛けてしまうと、結局同じタイミングで損を出してしまうかもしれません。
また、運用する通貨ペアを増やせば増やすほどリスク管理は複雑になっていきます。

次の項では、通貨ペア選びの際に注目すべきポイントをお伝えしていきます。



■どう組み合わせる?

ここでは「結局どんな組み合わせがいいの?」という点について解説します。

基本的には、

・通貨の使用国同士の政治的、経済的な結びつきの強弱
・主要国通貨、資源・新興国通貨といった通貨の性質

などの要素を材料としてみるとよいでしょう。

では、具体例を挙げながら通貨ペアの組み合わせ方について考えてみましょう。
サンプルとして、FX初心者も取り組みやすい「米ドル/円」、そしてトラリピとの相性がよいということで注目を集めている「豪ドル/NZドル」の2通貨ペアを取り上げます。


●「米ドル/円」と組み合わせるなら?

対円通貨ペアの代表格ともいえる「米ドル/円」。米ドル/円に限らず、対円通貨ペアは「ショック時に大きく下がりやすい」傾向があります。
これは「円」という通貨の特徴に起因します。「円」は「リスクオフ※時に買われる」傾向のある通貨。そのため、「○○ショック」と言われるような急変動のときに対円通貨ペアが下がりやすい(=円高になりやすい)のです。
※投資家がリスクを避けようとする状態。金などをはじめとする「安全資産」に資金が集まる。

そんな「米ドル/円」と組み合わせる通貨ペアの一例として挙げられるのは「ユーロ/円」です。「対円通貨ペア同士だけどいいの?」という声が聞こえてきそうですね。もちろん、売買を同じにしてしまったら複数通貨ペア運用の旨味がありません。つまり、この組み合わせの場合は「売買を同じにしない」ことがポイントになります。
しかもユーロ/円は、売りでスワップが0円※となる通貨ペア。米ドル/円は買いでスワップを受け取ることができる※ため、スワップの支払いが気になる方は「米ドル/円の買い」と「ユーロ/円の売り」を検討してみてもよいかもしれません。
※2021年4月22日時点。金利情勢等によって変動する場合があります。

また、「米ドル/円」と組み合わせる通貨ペアの候補として「ユーロ/米ドル」も挙げられます。例えばショック相場で「米ドル売り・円買い」方向に傾く場合、理論上「ユーロ/米ドル」は上昇する(米ドルが弱くなるので、逆にユーロが強くなる)ことになります。したがって「米ドル/円の買い」と「ユーロ/米ドルの買い」を同時に取引しておくと、リスクをおさえることができるかもしれません。ただしユーロ/米ドルの買いはスワップが支払いになってしまう※ので、注意が必要です。
※2021年4月22日時点。金利情勢等によって変動する場合があります。


●「豪ドル/NZドル」と組み合わせるなら?

マネースクエアで2020年9月末から取り扱いを開始した通貨ペア「豪ドル/NZドル」。新しい通貨ペアにもかかわらず、全14通貨ペアの中でトラリピを運用している口座数がもっとも多くなっています※。「狭いレンジでの値動きが多い」「ショック相場に強く、ロスカットになりにくい」というトラリピ向きの特徴を持つため、トラリピ初心者の方からある程度運用に慣れている方まで、幅広い層に親しまれているようです。
※2021年4月16日NYクローズ時点で有効なトラリピ注文を出している口座でカウント。

そんな「豪ドル/NZドル」と組み合わせる通貨ペアとして挙げられるのが「ユーロ/英ポンド」。2021年5月8日リリース予定のこの通貨ペアは「豪ドル/NZドル」に次ぐ「トラリピ史上最強通貨ペアシリーズ※」の第2弾です。
「豪ドル/NZドル」はオセアニア地域の通貨ペア、そして「ユーロ/英ポンド」はヨーロッパ地域の通貨ペア。政治的・経済的な繋がりはそれほど強くないため、あまりお互いを気にせずに売りと買いを選択することができます。ある程度トラリピ運用に慣れている方は、双方の通貨ペアで「売り」と「買い」の両方を仕掛ける、という戦略も採用できるかもしれません。
※最強通貨ペアシリーズ:2016年7月~2020年12月の100pipsあたり総推移が、当社取り扱い全15通貨ペア中No1、No2



■データで見てみよう:相関係数

ここまでの項で、通貨ペア選びの基本的な考え方を紹介しました。ただし、理屈はわかっても、実際に何かの数字・データで確認したいという方もいることでしょう。実は数字で確認する方法があります。「相関係数」です。

「相関係数」は、「ある2つのデータが、似たような動きをするかどうか」を示す数値です。
相関係数は「1」から「-1」の間で変化します。「1」に近ければ近いほど「正の相関(=一方が増えるともう一方も増える関係)」が強くなり、「-1」に近ければ近いほど「負の相関(=一方が減るともう一方は増える関係)」が強くなります。真ん中の「0」に近くなると、「相関性がない」つまり「2つのデータは互いに関係なく変化する」ということになります。

相関係数

普段はあまり耳にしない「相関係数」に対して、なんとなく「数学かな?」「難しそう…」といった印象を持つ方が多いかもしれません。確かに少々複雑な計算が必要なのですが、表計算ソフトを使えば簡単に算出することができます。興味のある方は調べてみてください。

さて、話を戻しましょう。相関係数をもとにリスクの分散を考えるなら、

・「-1」に近い通貨ペア同士:買い+買い、売り+売り
・「+1」に近い通貨ペア同士:買い+売り
・「0」に近い通貨ペア同士:売買をあまり気にせず一緒に運用

簡単に言ってしまうと上のようになります。

では、実際の相関係数はどのようになるのか確認してみましょう。次の表はマネースクエアが取り扱っている14通貨ペア、そして今後リリース予定のユーロ/英ポンドを追加した計15通貨ペアについて、各通貨ペア間の相関係数を一覧にしたものです。

相関係数一覧

※出所:マネースクエア ヒストリカルデータ、リフィニティブ
※それぞれ2008年4月~2021年3月までの週足終値をもとに算出。ただしメキシコペソ/円との相関係数については2011年8月~2021年3月のデータ。

表中で「-0.7」以下を青、「+0.7」以上を赤、「±0.2」の範囲内を緑で表示しています。それぞれ、「負の相関が強い」「正の相関が強い」「相関性がほとんどない」ことを表す目安と考えてください。
※一般的に±0.7を超えると強い相関があるとされています。

上の表を見ると、例えば「カナダドル/円」と「英ポンド/円」は正の相関が強いことが分かります。対円通貨ペア同士であることや、原油価格の変化に影響を受けやすい通貨ペア同士であることなどから、似たような動きをしやすいのかもしれません。
他には、新興国通貨が絡む通貨ペア同士は正の相関が強いなどの傾向も確認できます。

前の項でも紹介した「豪ドル/NZドル」と「ユーロ/英ポンド」の間には相関性があまり見られません。政治的・経済的な結びつきがそれほど強くないため、ほとんど互いの値動きに関係なく変動しているようです。
また、「NZドル/円」と「英ポンド/米ドル」のような、「対円通貨ペアと対米ドル通貨ペア」の組み合わせにも相関性が見られません。

ここではすべての組み合わせについては説明しませんが、このように通貨ペア同士の相関性を見ながら考えてみてはいかがでしょうか?

最後に「複数通貨ペア運用」における注意点を確認しておきます。
ファンダメンタルズ的、相関係数的に相性の良い通貨ペア同士であっても、それはあくまでその時点までの状況をもとにした判断だということを忘れないようにしてください。将来についても「確実にその関係が続く」というわけではありません。
政治や経済、そして為替相場は常に変化するもの。上表の相関係数は2008年4月からの13年間の値をもとに算出していますが、期間を狭めて移動平均的に算出すると、相関性は時期によって変化していることが分かるはずです。ある期間では相関性がみられないと思われた通貨ペア同士でも、別の期間でみると正あるいは負の相関関係が強いと判断される場合もあるのです。
状況が変わってきたかもしれないと思ったら、一度落ち着いて見直すことも大切です。

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最初にお伝えしたとおり、「複数通貨ペアでの運用」によってトラリピの可能性が広がることを期待できます。有効な組み合わせを探すうちに、何か新たな気付きを得ることもあるかもしれません。ぜひ挑戦してみてください!

トラリピくん


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