米FRBで今、何が起きているか。様々に圧力を加えるトランプ政権
2025/08/14 08:20
【ポイント】
・トランプ政権は利下げ要求だけでなく、様々にFRBに圧力
・パウエル議長の後任人事が本格化
・FRB本部改修工事に絡んでパウエル議長に対して訴訟⁉
・クグラー理事の後任はミランCEA委員長
米国の7月雇用統計が非常に弱かったため、トランプ政権からの利下げ要求に抵抗してきたFRB(連邦準備制度理事会)も、いよいよ9月16-17日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利下げに踏み切りそうな雲行きです。市場は0.25%の利下げを完全に織り込んだうえに、わずかながら0.50%利下げの可能性もみているようです。
もっとも、FOMCが利下げを決定しても、トランプ政権からの圧力は弱まりそうもありません。さらに大幅かつ積極的な利下げが要求されそうです。13日にはベッセント財務長官が1.50%の利下げを要求しました(トランプ大統領は3-4%の利下げを要求⁉)。
今後の金融政策にも影響を与えるとみられる、FRBを取り巻く状況を概観しておきましょう。
*******
パウエル議長の後任人事
トランプ大統領がパウエル議長を解任する可能性は低下していそうです。現在、26年5月のパウエル議長の任期切れに向けて後任の人選が本格化しているようです。
これまで10名程度の名前が挙がっています【後掲:補足①】。トランプ大統領は13日、3-4人に絞り込んでおり、「少し早めに」指名する可能性があると述べました。後任候補が議会の承認を得て議長に就任するのは、現状では26年5月です。ただし、正式に指名されれば、その人物の言動は直ちに市場の金融政策見通しに大きな影響を与える可能性があります。
FOMCの決定は12人の投票メンバーによる合議制です。したがって、議長が全て自分の思い通りに金融政策を決定できるわけではありません。ただし、議長が議論を主導して政策提案を行うため、議長の意向は相応に金融政策に反映されるでしょう。
誰が新しいFRB議長になっても、金融緩和方向に大きく舵を切る可能性が高そうです。
パウエル議長に対する訴訟⁉
トランプ大統領は12日、SNSでパウエル議長に対する訴訟を示唆しました。FRB本部の改修工事費が当初予算を大きく上回っていることに関して、FRBのトップであるパウエル議長の監督責任を問題視し、あるいは本件に関する議会公聴会での議長の発言を偽証罪に問う意向のようです【補足②】。かなり無理筋にみえますが、仮に議長が有罪判決を受ければ(司法も大統領の思い通り?)、議長解任の「正当な理由」となる可能性があります。
クグラー理事の後任はミラン氏
8月8日に任期途中で辞任したクグラー理事の後任に、トランプ大統領はミランCEA(大統領経済諮問委員会)委員長を指名しました。当然、トランプ大統領の経済政策の支持者です。ミラン氏は上院の承認を得て(ほぼ確実)、FRB理事に就任する予定です。残る任期は26年1月までなので、暫定的な意味合いが強いかもしれませんが、理事に再任される可能性もあるでしょう(新たな任期は14年)。
【補足①】これまでに名前の挙がった主な後任候補は以下の通り(順不同)。
ジェファーソン:FRB副議長
ボウマン:FRB副議長(銀行監督担当)
ウォラー:FRB理事
ローガン:ダラス連銀総裁
ウォーシュ:元FRB理事
ブラード:元セントルイス連銀総裁
ハセット:NEC(国家経済会議)委員長
サマリン:経済学者(ブッシュ・ジュニア政権の経済顧問)
ベッセント:財務長官(辞退?)
【補足②】FRB本部改修工事
FRB本部の改修工事費用は約25億ドル(約3700億円)に上り、当初の予定を約7億ドル超過していると報じられています。この高額な費用や屋上庭園などの「豪華」な設備が批判の対象になっています。
トランプ政権は、改修費の超過をパウエル議長の運営ミスや透明性不足の証拠として問題視しており、議長解任の理由になり得ると考えているようです。また、パウエル議長が議会の公聴会で改修は「豪華でない」と証言したことも批判の対象となっているようです。
・トランプ政権は利下げ要求だけでなく、様々にFRBに圧力
・パウエル議長の後任人事が本格化
・FRB本部改修工事に絡んでパウエル議長に対して訴訟⁉
・クグラー理事の後任はミランCEA委員長
米国の7月雇用統計が非常に弱かったため、トランプ政権からの利下げ要求に抵抗してきたFRB(連邦準備制度理事会)も、いよいよ9月16-17日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利下げに踏み切りそうな雲行きです。市場は0.25%の利下げを完全に織り込んだうえに、わずかながら0.50%利下げの可能性もみているようです。
もっとも、FOMCが利下げを決定しても、トランプ政権からの圧力は弱まりそうもありません。さらに大幅かつ積極的な利下げが要求されそうです。13日にはベッセント財務長官が1.50%の利下げを要求しました(トランプ大統領は3-4%の利下げを要求⁉)。
今後の金融政策にも影響を与えるとみられる、FRBを取り巻く状況を概観しておきましょう。
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パウエル議長の後任人事
トランプ大統領がパウエル議長を解任する可能性は低下していそうです。現在、26年5月のパウエル議長の任期切れに向けて後任の人選が本格化しているようです。
これまで10名程度の名前が挙がっています【後掲:補足①】。トランプ大統領は13日、3-4人に絞り込んでおり、「少し早めに」指名する可能性があると述べました。後任候補が議会の承認を得て議長に就任するのは、現状では26年5月です。ただし、正式に指名されれば、その人物の言動は直ちに市場の金融政策見通しに大きな影響を与える可能性があります。
FOMCの決定は12人の投票メンバーによる合議制です。したがって、議長が全て自分の思い通りに金融政策を決定できるわけではありません。ただし、議長が議論を主導して政策提案を行うため、議長の意向は相応に金融政策に反映されるでしょう。
誰が新しいFRB議長になっても、金融緩和方向に大きく舵を切る可能性が高そうです。
パウエル議長に対する訴訟⁉
トランプ大統領は12日、SNSでパウエル議長に対する訴訟を示唆しました。FRB本部の改修工事費が当初予算を大きく上回っていることに関して、FRBのトップであるパウエル議長の監督責任を問題視し、あるいは本件に関する議会公聴会での議長の発言を偽証罪に問う意向のようです【補足②】。かなり無理筋にみえますが、仮に議長が有罪判決を受ければ(司法も大統領の思い通り?)、議長解任の「正当な理由」となる可能性があります。
クグラー理事の後任はミラン氏
8月8日に任期途中で辞任したクグラー理事の後任に、トランプ大統領はミランCEA(大統領経済諮問委員会)委員長を指名しました。当然、トランプ大統領の経済政策の支持者です。ミラン氏は上院の承認を得て(ほぼ確実)、FRB理事に就任する予定です。残る任期は26年1月までなので、暫定的な意味合いが強いかもしれませんが、理事に再任される可能性もあるでしょう(新たな任期は14年)。
【補足①】これまでに名前の挙がった主な後任候補は以下の通り(順不同)。
ジェファーソン:FRB副議長
ボウマン:FRB副議長(銀行監督担当)
ウォラー:FRB理事
ローガン:ダラス連銀総裁
ウォーシュ:元FRB理事
ブラード:元セントルイス連銀総裁
ハセット:NEC(国家経済会議)委員長
サマリン:経済学者(ブッシュ・ジュニア政権の経済顧問)
ベッセント:財務長官(辞退?)
【補足②】FRB本部改修工事
FRB本部の改修工事費用は約25億ドル(約3700億円)に上り、当初の予定を約7億ドル超過していると報じられています。この高額な費用や屋上庭園などの「豪華」な設備が批判の対象になっています。
トランプ政権は、改修費の超過をパウエル議長の運営ミスや透明性不足の証拠として問題視しており、議長解任の理由になり得ると考えているようです。また、パウエル議長が議会の公聴会で改修は「豪華でない」と証言したことも批判の対象となっているようです。
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