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ECB理事会はタカ派的据え置き、追加利下げは関税交渉次第??

2025/07/25 06:30

【ポイント】
・ECBは8会合ぶりに据え置き、2.00%の政策金利を維持
・ラガルド総裁は「様子見モード」を強調、追加利下げに言及なし
・「異例の不確実性」があり、米国との通商交渉の結果にも影響されそう

ECBは24日の理事会で政策金利の据え置きを決定。ECB理事会の決定直後にユーロ/米ドルは下落で反応した後、ラガルド総裁の会見などを機に反発しましたが、再び軟化しています(日本時間25日午前6時30分現在)。声明や会見で追加利下げへの言及がなかったことからドイツなどの長期金利(10年物国債利回り)は上昇しました。

米国とEU(欧州連合)の通商交渉が関税率15%に向けて進展中との報道もあり、その結果が今後のECBの金融政策にも影響を与えそうです。

24日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、理事会後の市場予想は「9月と10月の理事会での利下げの可能性は低く(確率は3割程度)、12月までみれば利下げの可能性は高いものの(同7割弱)、26年6月までをみても利下げの確率はせいぜい9割弱」というもの。理事会前日の市場予想は「25年末までの利下げ確率は約9割で、その後は利下げを確実視したうえで、もう一回の利下げの可能性がわずかにある(約1割)」でした。市場予想の通りなら、政策金利1.7%近辺で利下げ打ち止めです。

ECB金融政策見通し

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ECBは昨年6月以降8回、前回6月の理事会まで7会合連続で利下げを行っており、政策金利は4.00%からほぼ中立水準とみられる2.00%まで低下していました。

理事会の声明文で指摘されたのは以下。
・インフレは現在、中期目標の2%近辺になっている。
賃金の伸びは鈍化しており、インフレ圧力は低下している。
・これまでの利下げの効果もあって景気は総じて底堅く推移している。
・一方で、通商問題もあってユーロ圏経済を取り巻く環境には異例の不確実性がある。
・今後のデータ次第で会合ごとに判断する。

ラガルド総裁は理事会後の会見で、「今は政策金利を据え置き、リスクが今後数カ月の間にどう展開するかを見守るのが適切な状況にある」とし、「様子見モードに入ったと言えるかもしれない」と述べました。

また、匿名の関係者によれば、9月会合での基本シナリオは「据え置き」であり、利下げ支持者の側に説明責任があるとのことです。

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ECBの判断材料となるデータをみておきましょう。CPIは2%近辺まで低下しており、賃金は一時の高い伸びから鈍化しています。PMI景況指数でみれば、景気はやや持ち直しています。ただ、それは米関税発動前の駆け込み需要による一時的な上振れか、それとも景気が実際に底堅いのかは判断に難しいところでしょう。

ユーロ圏CPI

ユーロ圏交渉賃金

ユーロ圏PMI
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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