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米CPIは関税の影響がジリジリと・・

2025/07/16 08:27

【ポイント】
・6月CPIは前月から伸びが加速
・関税の影響からか玩具や家電製品の価格上昇が目立った
・自動車価格は2カ月連続で下落も、関税の影響はこれからか
・日本の「悪い金利上昇」は米国以上⁉

米国の6月CPI(消費者物価指数)は一部で市場予想を下回ったものの、前月から伸びが高まりました。長期金利(10年物国債利回り)はCPIを受けて一時低下し、4.39%をつけました。しかし、CPIに関税の影響がみられたことでFRBの利下げ観測が後退し、長期金利はその後に反発して4.48%と、CPI発表前(4.42%近辺)を上回りました。

米長期金利

CPI発表後のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む次々回9月FOMCでの利下げ確率は57%と、前日の65%から低下しました。

米長期金利上昇の根底には、利下げ観測の後退だけでなく、トランプ大統領による利下げ圧力(中銀の独立性への懸念)、トランプ減税成立による財政赤字拡大懸念などもありそうです。したがって、足もとの長期金利上昇には「悪い金利上昇」の側面もあり、持続的な米ドル高要因にはなりにくそうです。

もっとも、日本の長期金利(10年物国債利回り)も上昇が目立っています。参院選での連立与党の苦戦を受けて財政悪化懸念が強まっているためです。日本の長期金利は15日に一時1.598%と今年3月のピーク(1.596%)を超えてリーマン・ショック直後の08年10月以来の水準をつけました。こちらも「悪い金利上昇」と言えそうです。

15日付け「米ドル/円の見通し~グローバルViewへのご質問」では、現在は構造的円安が続く一方で、循環的には(金融政策の方向性の差から)円高方向ではないかと指摘しました。しかし、足もとでは財政問題という日本の構造的な円安要因が強く意識されているのかもしれません。

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米国の6月CPI(消費者物価指数)は、総合が前年比2.7%、食料とエネルギーを除くコアが同2.9%といずれも前月(2.4%と2.8%)から伸びが高まりました。コアの前月比は0.2%で、市場予想(0.3%)を下回ったことが一時好感されたようですが、中身をみると関税の影響がジリジリと出てきたようです。

米CPI

コアのうち商品価格は前年比0.7%と、24年7-8月(マイナス1.9%)を底に伸びが高まっています。
Bloombergによれば、関税の影響を受けやすい玩具家庭用インテリア用品スポーツ用品家電製品などの価格上昇が目立ったようです。一方で、自動車価格は2カ月連続で前年比マイナス0.3%と下落しましたが、関税の影響はこれから出てくるのかもしれません(当面は関税前の在庫で対応?)。

CPIコア分解
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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