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米ISM製造業景況指数やJOLTS、予算調整法案採決、ECBフォーラムに注目

2025/07/01 09:05

【ポイント】
・米ISM製造業景況指数などで米景気をめぐる懸念が強まるか
・米上院は予算調整法案(OBBBA)修正案を可決するか
・ECBフォーラムで各中銀の金融政策について新たなヒントが提供されるか

(欧米市場レビュー)

6月30日、欧米時間の外為市場では米ドルが軟調に推移。ユーロ/米ドルは一時1.17837ドルへと上昇し、21年9月以来の高値を記録。米ドル/円は143.744円、米ドル/カナダドルは1.35956カナダドルへと下落し、英ポンド/米ドルは1.37390ドルへと上昇する場面がありました。米国の6月シカゴ購買部協会景気指数が40.4と市場予想(42.7)に反して前月の40.5から低下し、また同国の長期金利(10年物国債利回り)が低下したことが、米ドルに対する下押し圧力となりました。

(本日の相場見通し)

本日は、米国の6月ISM製造業景況指数5月JOLTS(労働動態調査)が発表されます(いずれも日本時間23:00)。

市場予想はISM製造業景況指数が48.8、JOLTS求人件数が730.0万件。前者は5月の48.5から改善するものの、業況判断の分かれ目である50を引き続き下回ると予想されており、後者は4月の739.1万件から減少するとみられています。

ISM製造業景況指数やJOLTS求人件数が市場予想を下回る結果になれば、米景気の先行きをめぐる懸念が強まるとともに、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期の利下げ観測が高まると考えられます。その場合には米ドルに対して一段と下押し圧力が加わって、米ドル/円や米ドル/カナダドルは軟調に推移し、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは堅調に推移しそう。米ドル/カナダドルは、200週移動平均線(7/1時点で1.34307カナダドル)が下値メドです。

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米議会上院は、トランプ減税を実現するための予算調整法案(OBBBA)の修正案について近く採決を行うとの報道があります。与党・共和党内には法案に反対する議員がいて、法案の行方は不透明な状況です。上院が修正案を可決すれば、次は下院に差し戻されます。

市場では、トランプ減税が実現すれば米国の財政赤字が拡大するとの懸念があります。上院採決の結果に市場が反応するかもしれません。

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ECB(欧州中銀)フォーラムで、パウエルFRB議長ラガルドECB総裁植田日銀総裁ベイリーBOE(英中銀)総裁らによるパネル討論会が行われます。

パネル討論会の注目点は、各中銀の金融政策の先行きについて新たなヒントが提供されるかどうか。

パウエルFRB議長は6月24日と25日の議会証言で、「政策調整を行う前に、経済の今後の動向についてより詳しく知るために当面待つのに良好な位置にある」などと述べ、追加利下げに慎重な姿勢を改めて示しました。

ラガルドECB総裁は0.25%利下げすることを決定した6月5日の理事会後の会見で「新型コロナ、ウクライナ戦争、エネルギー危機などに対応してきた金融政策のサイクルは終わりに差し掛かっている」、「現在の政策金利は今後の不確実な状況を乗り切るうえで適切な水準にある」と述べ、利下げサイクルを停止する可能性を示しました。

植田総裁は6月20日、「(日銀の)経済・物価の見通しが実現していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」としつつも、内外の経済・物価情勢や市場動向を丁寧に確認して「予断を持たずに判断していくことが重要だ」と述べました。

ベイリーBOE総裁は6月26日、「インフレの持続性について依然として不確実性が残る」とする一方で、「ここ数カ月間で特に労働市場でスラック(需給の緩み)が発生しつつあるとの証左が強まっている」と述べました。ベイリー総裁はまた、事前に設定された道筋はないとしつつ「政策金利は徐々に下がる可能性が高い」と語りました。

市場では、FRBは次々回9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、BOE(英中銀)は次回8月の政策会合で、ECBは10月の理事会(7月と9月の理事会については政策金利の据え置きを予想)でそれぞれ利下げを実施し、日銀は今年終盤に利上げするとの観測があります。

本日のパネル討論会で市場の各中銀の金融政策見通しが変化すれば、その国・地域の通貨が反応しそう。仮にBOEの8月利下げ観測が一段と高まる場合、英ポンドが軟調に推移すると考えられます。

※ユーロ/英ポンドのテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[ユーロ/英ポンド、上昇トレンド継続を示唆するチャート形状!]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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