「ひとつの大きな美しい法案」が米下院を通過、今後どうなる??
2025/05/23 08:05
【ポイント】
・米下院はトランプ減税を実現するための予算調整法案を可決
・共和党は上院での審議を経て8月ごろの成立を目指す
・財政赤字の拡大が懸念されて長期金利の上昇要因に?
米議会の下院は22日、トランプ減税を実現するための予算調整法案(※)を可決しました。
※公式名称は、トランプ大統領の言葉からつけた「ひとつの美しい法案」法(One Big Beautiful Bill Act, OBBBA)。タイトルにそのまま「法案(Bill)」が入っています(入力ミスではありません!)
採決は、215対214の僅差。共和党218議席のうち、2名が反対票を投じ、1名が「出席」票を投じました(事実上の棄権)。民主党は全員が反対。トランプ大統領がホワイトハウスに反対派議員を呼んで圧力をかけたことが結果的に奏功したようです。
「ひとつの大きな法案」の中身
同法案には、17年トランプ減税(TCJA)の延長/拡張、州・地方税(SALT)の税額控除の増額、チップ・残業代の非課税化、国防・国境警備費の増額など様々な項目が盛り込まれています。一方、それらを賄うのは、メディケイド(低所得者・身障者向け医療保険)の削減、温暖化対策の支出やこれに関連する優遇税制の廃止などです。また、デットシーリング(債務上限)4兆ドル引き上げの条項も含まれています。
民間のCRFB(責任ある連邦財政委員会)の分析によれば、5月21日時点の同法案(最終版の前)は財政赤字を10年間で3.1兆ドル増大させるとのこと。超党派のCBO(議会予算局)などによれば、減税分は10年間で約5兆ドルとの分析もあり、歳出削減や増収策では十分に賄えないようです。
上院審議へ
同法案は上院に送付されて、そこで審議されます。予算調整法案は上院でのフィリバスター(採決妨害)が使えないため、単純過半数で可決できます(同数の場合は上院議長でもある副大統領の票がカウントされます)。上院での議席数は、共和党53、民主党45、民主党寄り無所属2。したがって、共和党議員が3名反対しても計算上は法案を可決することができます。
もっとも、上院では下院を通過した法案に修正が加えられる可能性が高そうです。その場合は再び下院へ送付されてそこでの可決が必要になります。上院と下院が同一の法案を可決して初めて大統領へ送付され、大統領の署名を得て立法化されます。
上院共和党内にも、時限措置の減税の恒久化を求めるグループ、大幅な歳出削減を求めるグループ、さらには福祉関連支出の削減に反対するグループなどがあり、審議に時間がかかる可能性があります。
財務省によれば、早ければ8月にもデットシーリングの特別措置に限界が来るとされ、デフォルト(債務不履行)を回避するためにはそれまでの法案成立が不可欠となります。
長期金利は「悪い」上昇!?
10年物国債利回りは22日に一時2月上旬以来となる4.60%超を示現しました(その後は4.53%まで低下)。また、30年物国債利回りは23年10月以来となる5.00%超を示現しました。23年10月の短期間を除けば、30年物国債利回りが5.00%を超えていたのはリーマンショック前の07年8月まで遡ります。

期間の長い金利ほど上昇幅が大きくなっている状況(=イールドカーブのベアスティープ化)は、米国の財政(債務)に対する長期的な信認の低下が主因でしょう。いわゆる「悪い金利上昇」です。その場合、長期金利が一段上昇しても、それは米ドルのサポート要因ではなく、むしろ下落要因となりうるでしょう。
議会における予算調整法案の審議、それに対する長期金利の反応に引き続き要注意でしょう。
・米下院はトランプ減税を実現するための予算調整法案を可決
・共和党は上院での審議を経て8月ごろの成立を目指す
・財政赤字の拡大が懸念されて長期金利の上昇要因に?
米議会の下院は22日、トランプ減税を実現するための予算調整法案(※)を可決しました。
※公式名称は、トランプ大統領の言葉からつけた「ひとつの美しい法案」法(One Big Beautiful Bill Act, OBBBA)。タイトルにそのまま「法案(Bill)」が入っています(入力ミスではありません!)
採決は、215対214の僅差。共和党218議席のうち、2名が反対票を投じ、1名が「出席」票を投じました(事実上の棄権)。民主党は全員が反対。トランプ大統領がホワイトハウスに反対派議員を呼んで圧力をかけたことが結果的に奏功したようです。
「ひとつの大きな法案」の中身
同法案には、17年トランプ減税(TCJA)の延長/拡張、州・地方税(SALT)の税額控除の増額、チップ・残業代の非課税化、国防・国境警備費の増額など様々な項目が盛り込まれています。一方、それらを賄うのは、メディケイド(低所得者・身障者向け医療保険)の削減、温暖化対策の支出やこれに関連する優遇税制の廃止などです。また、デットシーリング(債務上限)4兆ドル引き上げの条項も含まれています。
民間のCRFB(責任ある連邦財政委員会)の分析によれば、5月21日時点の同法案(最終版の前)は財政赤字を10年間で3.1兆ドル増大させるとのこと。超党派のCBO(議会予算局)などによれば、減税分は10年間で約5兆ドルとの分析もあり、歳出削減や増収策では十分に賄えないようです。
上院審議へ
同法案は上院に送付されて、そこで審議されます。予算調整法案は上院でのフィリバスター(採決妨害)が使えないため、単純過半数で可決できます(同数の場合は上院議長でもある副大統領の票がカウントされます)。上院での議席数は、共和党53、民主党45、民主党寄り無所属2。したがって、共和党議員が3名反対しても計算上は法案を可決することができます。
もっとも、上院では下院を通過した法案に修正が加えられる可能性が高そうです。その場合は再び下院へ送付されてそこでの可決が必要になります。上院と下院が同一の法案を可決して初めて大統領へ送付され、大統領の署名を得て立法化されます。
上院共和党内にも、時限措置の減税の恒久化を求めるグループ、大幅な歳出削減を求めるグループ、さらには福祉関連支出の削減に反対するグループなどがあり、審議に時間がかかる可能性があります。
財務省によれば、早ければ8月にもデットシーリングの特別措置に限界が来るとされ、デフォルト(債務不履行)を回避するためにはそれまでの法案成立が不可欠となります。
長期金利は「悪い」上昇!?
10年物国債利回りは22日に一時2月上旬以来となる4.60%超を示現しました(その後は4.53%まで低下)。また、30年物国債利回りは23年10月以来となる5.00%超を示現しました。23年10月の短期間を除けば、30年物国債利回りが5.00%を超えていたのはリーマンショック前の07年8月まで遡ります。

期間の長い金利ほど上昇幅が大きくなっている状況(=イールドカーブのベアスティープ化)は、米国の財政(債務)に対する長期的な信認の低下が主因でしょう。いわゆる「悪い金利上昇」です。その場合、長期金利が一段上昇しても、それは米ドルのサポート要因ではなく、むしろ下落要因となりうるでしょう。
議会における予算調整法案の審議、それに対する長期金利の反応に引き続き要注意でしょう。
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